冒頭の“楽園”はストリングスの響きが美しいオーケストラルポップ。続く“SPACE TRIP”は爽やかなメロディが映えるポップロック。“エニグマ・ゲーム”は力強いファンクで、“風花”は緊迫感のある叙情的なバラード。“蝿の王”は鋭利なギターリフが切り裂くポストパンク、ラストの“mirrors”は、重層的な音像で聴き手を没入させる壮絶なロックソング――1曲1曲が音楽的に見事にバラバラで、それが全体の鮮やかな色彩に繋がっている。斉藤壮馬の、シンガーとしての、そしてコンポーザーとしての力量の高さを改めて感じるが、それが安易に「器用さ」と映らないのは、溢れる創造力や想像力と軽やかに戯れる彼の柔軟さが作品から伝わるからだろう。“蝿の王”は彼のルーツにあるART-SCHOOLなどに通じるエッセンスを感じさせるが、その無邪気なミュージックラバーっぷりもまた作品の愛嬌になっている。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2月号より)
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