10周年を締めくくる5曲。数字だけでいえば確かに5曲なのだが、聴き終わったあとに残るものは、アルバム1枚聴いたくらいに濃くて大きい。シンプルなクリープハイプ節を炸裂させながら尾崎世界観のメロディがとても軽やかに飛翔する“凛と”、どこかトロピカルなリズムと《ベイビー》なんて言葉がかえって歌詞の切なさを増長する“本当なんてぶっ飛ばしてよ”、ちょっと懐かしい歌謡曲風味が最高の長谷川カオナシ曲“朝にキス”(個人的にはリリースされてきたカオナシの曲の中でも1、2を争う名曲なんじゃないかと思う)、バンドサウンドをうまく引き算しながら新しいグルーヴを生み出した“愛のネタバレ”……《いかにも 普通の 普通ってなんだろうな》(“凛と”)と言葉や表情やその裏側にある気持ちのそのまた裏側をめくりながら、クリープハイプは1曲1曲を心にめり込ませていく。そして最後の尾崎弾き語り“真実”へ。《いつかもしもこれが見えなくなれば あんな風に幸せになれるかも》という1行に戦慄した。そこには10年前となんら変わらない尾崎世界観がいる気がしたのだ。(小川智宏)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年5月号より抜粋)
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最後に鋭く抉られる
クリープハイプ『だからそれは真実』
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