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“色水”をはじめとして、“epilogue”や“マテリアル”など、いろんな形の「夏」を切り取った名曲がおいしくるにはたくさんあるが、夏を満喫する巷の青春賛歌とはまるで世界観が違う。ナカシマが描く「夏」は暑く眩しい溌剌とした季節のことではなく、ふいに涼しい風が通り抜けていくような切ない瞬間や感情の揺れ動きだったりする。今作で《君と僕の共通点》は《夏が嫌いなところ》と綴られる歌詞にも、人々が活動的になる季節とどこか距離を置くナカシマらしい感性が窺える。この《水色の感情》もビビッドな色だとは到底思えず、届かぬ想いと劣等感がないまぜになった淡く濁りのある色を想像した。そんな歌詞とは対称的に、『cubism』以降おいしくるが鳴らす音楽はますます開放的になり、キャッチーさに磨きがかかっている。青春の煌めきをそのままパッケージした清涼感ある音像で、歌メロの美しさと瑞々しいバンドサウンドが堪能できる。一聴すると爽やか、でもアンビバレントな心情を共存させるのが、おいしくるの色だ。(有本早季)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)
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