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Jリーグの開幕30周年を記念し、ラッパーのZORNを客演に迎えて作られた一曲。今年8年ぶりのライブハウスツアーの東京公演のMCで、野田洋次郎は「そもそも自分は勝負に興味がなく、勝ちを譲ってしまう性格だ」と前置きしたうえで、「それでも、ここだけは譲っちゃいけないという時は、勝ちにいかなきゃいけない」というふうに、この曲を作る中での自らの意識の変化を語っていた。この曲を作る際、野田は国立競技場で試合を観戦し、日本代表選手の吉田麻也にメールインタビューを通じて話を聞いたという。生きることが「勝ち負け」だけの問題ではないことを知る繊細な感性ゆえに捉え得た、「勝利」へのしなやかで鋭利な飢餓感がある。「その人生は誰のものだ?」――力強さと柔らかさが混じり合う演奏、そしてZORNの苦みすら噛みしめるようなラップの奥から、そんな問いが聞こえてくる。《今だから言えることなら あるけど言葉で埋めても何にもならないことなどわかってる》という歌い出しから、食らう。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)
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