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作品を経るごとに「ポップであること」を受け入れ、その音楽の間口を広げながら、その実、安直な「わかりやすさ」からはしっかりと距離を置き続けているところが、おいしくるメロンパンの品格であり、バランス感覚であり、素晴らしさのひとつである。「ポップ」は「わかりやすさ」とイコールではない。この新曲“五つ目の季節”もまた獰猛にポップでありながら、同時に、永遠に解きほぐされることのない、人間の心の複雑さを描いている。浮遊感があるのに重たく、疾走感があるのに「どこにも行けない」という感覚もある――そんなアンビバレントな要素が混ざり合いながら確かなカタルシスを生み出す、狂おしくもダイナミックなサウンド。「季節」というモチーフはこのバンドにとって馴染み深いものだが、彼らはこの曲で春夏秋冬に収まらない《五つ目の季節》を幻視する。痛みと喪失に紐づく記憶。しかし、そんな記憶にも安寧を見出す人間の倒錯しているようで極めてリアルな感情が歌われる。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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