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マルシィの2年ぶりのアルバムを聴いたとき、自分の中の負の感情をそっと包み込み、溶かしてくれた気がした。今作は、邦ロックシーンを駆け上がってきた彼らの歩みの確かさを証明する、彩り豊かな13曲。根底にあるのは、温かな愛だけでなく、相手を想うからこそ生まれる様々な「哀」だ。“恋人”では《どこの誰と戦っても負けないくらいには/君が欲しい》と、手に入らないもどかしさを、“フリージア”では《傷ついて泣いて泣き疲れて/沼から抜け出せない》と好きになってしまったがゆえの痛みを描く。そして“Romance”で《痛いほど身の程も分かってる/けどただ君といたい》と報われない苦しさを吐き出す──どれも切なさや痛みを描いているけれど、一緒に泣いてくれたり、そっと手を差し伸べてくれたり、それぞれ異なる方法で心に寄り添う。日常に隠れた幸せを歌う“holiday”も、日々の中に漂う晴れない負の感情を包み込み、光を差してくれるようだ。そんなマルシィの温かさは、きっとこれからも私たちを救い続けてくれるだろう。(江口祐里)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年12月号より)
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