涼やかなストリングスに彩られながら、軽快なステップを踏みたくなるサウンドが広がってゆく“Starting Over”。甘酸っぱいメロディが香りながらも、根底に脈打っているのは雄々しい躍動感。このサウンドと抜群に溶け合っている歌詞が、もの凄く良い。描かれているのは、迷いの真っ只中にいながらも、ひたむきに明日を夢見ようとする心意気。困難を乗り越えるために100%有効な方法なんてこの世にあるはずもないが、ありのままの自分を見つめ、目の前にあることに向き合うことから、何かは少しずつ動き始める。当たり前過ぎることなので、改まってじっくり考える機会が意外と少ないそんな事柄が、とことんシンプルな言葉と表現によって描かれている歌詞だ。しかし、シンプルでありながらも、やたらと深く胸に沁みる。考えてみればサウンドも言葉も極端にインパクトの強さを打ち出すわけではないのに、サウンドと言葉の相互作用の抜群なバランス、味付けの匙加減のキレによって、異彩を放ちまくる世界を現出するのがレミロオロメンだ。そのさり気ないもの凄さが、まさに発揮されている曲だと思う。(田中大)