いけ、パラモア!

パラモア『ブラン・ニュー・アイズ』
2009年10月21日発売
ALBUM
パラモア ブラン・ニュー・アイズ
魂を売り渡さずにパンクをやる。今、それがどんなに難しいことかは言うまでもない。ポップ・パンクが主流を占めるようになって以降は、「ファンのために」「ファンの目線で」といったエクスキューズが横行し、業界ではなくファンに魂を売り渡すバンドも数多く出現している。リスナーの顔色を窺った末に共感という名のベタな公約数に落ち着くドン臭さ。往々にして今のパンクはそんな落とし穴に落ちていく。そういう意味でもパラモアの新作は稀有な一枚だ。彼女達は疾走する。わき目もふらず駆け上っていく。彼女達がファンの目線に降りることはない。ファンが必死で彼女達を追いかけたくなる、そういうカリスマを持ったパンクを鳴らす稀有なバンドなのだ。可愛い女の子をフロントに置きながらも、渾然一体となったバンド・サウンドがヘイリーの存在よりも前にくるヘルシーさも特筆に価する。

1秒も無駄のないあまりにも完璧なキラー・チューンM2、3、4あたりを聴くと年甲斐もなくきゃーきゃー言ってしまう。ほんとこの前半の流れは凄すぎる。いけいけパラモア! ガンガン売りまくってトップを獲ってまえ!と思わずいきり立ってしまう。しかしこのバンドの真の凄さは完璧に思えるそれが未だ道の途上でもあることだ。M8、10のようなバラッド、M11のような超エピック・ナンバーには彼女達の未完成、更なる疾走への渇望がぎこちなくも切実に刻まれている。パラモアの未来は遥か彼方にある。恐ろしいポテンシャル。いけ、パラモア。私達は君らを追いかけていく。(粉川しの)
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