その禍々しさに用がある

ビッグエルフ『鍵盤狂想曲 第1幕:ビッグエルフ』
2010年04月14日発売
ALBUM
ビッグエルフ 鍵盤狂想曲 第1幕:ビッグエルフ
「キース・エマーソン再来!?」「ブラック・サバス・ミーツ・クイーン!?」と、2010年の新作についつい70年代の物差しをあててしまったり、このバンドの首謀者=デーモン・フォックスがステージ中央にセットした2台のオルガンを自由に操り云々という解説を読んだだけでよだれを流さんばかりに喜んだりするのはアラフォー・プログレ信者たる自分の悪い癖だ。が、アメリカはじめ各国ですでにプログレ・ファンの間に留まらない絶賛のビッグ・ウェイヴを巻き起こしつつあるこの新鋭=ビッグエルフの音には、まさにクイーンやピンク・フロイドやブラック・サバスといったバンドたちが描こうとした、音とメロディとビートと歌詞の「その先」にある神秘的で狂騒的な世界が宿っている。そして、明らかに過剰にドラマティックでカオティックに、聴き手の感情などお構いなしに暴れ回るメロディとフレーズの数々には、人智を超えたイマジネーションを目指す音楽殉死志願者の意志が脈打っている。M4“ロックンロールの悪魔”の禍々しいオーケストレーションも、最終曲“カウンティング・シープ”のスリリングな展開も、いちいち最高。(高橋智樹)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on