名トラック満載の深い感動作

ザ・ルーツ『ハウ・アイ・ガット・オーヴァー』
2010年07月07日発売
ALBUM
ザ・ルーツ ハウ・アイ・ガット・オーヴァー
もはやシーンの動向と無関係に自身の表現を貫きつつメジャー・レベルで勝負できる数少ないヒップホップ・ユニットとなってしまったザ・ルーツ。そんな自分たちのポジションを意識してのことなのか、ここ2作は刺々しいサウンドと政治や社会へ向けたハードな歌詞的なアプローチが特徴的だったが、今作は一転してサウンドはどこか甘さを取り戻した力強くオーガニックなものとなって、リリックも前作のひりひりするような煽情的なものから、さまざまなテーマを地道に掘り下げていくアプローチに戻っている。ただ、それは安直にオプティミスティックなのではなく、孤独や貧困、格差などで閉塞した社会状況を徹底的につぶさに描くことで風穴を開けようとする果敢なアプローチになっていて深い感動を呼ぶ。トラックごとのモチーフに対応するサウンドとコーラスのアレンジも見事でM2の“ウォーク・アローン”の歩く人影が浮かんでくるような豊かなイメージでもっていきなり引き込まれてしまい、その力は作品の終わりまで続く。M5の“ナウ・オア・ネヴァー”のスウィートさはその調べだけで涙を誘う。それでなくても名曲満載。(高見展)
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