待ってました! 2年4ヶ月ぶりにして初のフルアルバムとなるペリドッツの新作。相変わらず、怖ろしいほど才気走っている。狂気と正論が背中合わせになったシュールな詞の世界、澄み切った透明さとエロスが同居する声のエモーション、豊饒すぎる音楽性、どれをとっても「唯一無比」の独創性とクオリティがある。知らない読者も多いだろうが、ペリドッツとは、高橋孝樹(タカハシコウキ)によるソロユニット。ルーファス・ウェインライトやアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ、ジェフ・バックリィのような人間の本質を暴くシンガーソングライターで、つまり本物のポップを歌う人だ。05年からじわじわと話題が沸騰し、06年デビュー。08年以降リリースがなかっただけに、強く望まれていた作品だ。オープニング兼タイトル曲でもある“My Mind Wanders”は、とても風通しのよい溌溂とした曲。と思ったら、「事務所もレコード会社も辞めた後、初めて作った曲」だそうだ。
こんな歌が日本のシーンの真ん中で鳴り響く日がくるべきだ、とひたすら祈らずにはいられない珠玉の11曲。ぜひとも聴いてほしい。(井上貴子)