世界を逆転させる曲

髭『Electric』
2008年07月16日発売
髭 Electric - ElectricElectric
髭が40分以上で1曲という作品を出すと知った時、自由なアドリブによる長尺ジャム・セッションかと想像した。彼らはそういうことが似合うライブ・バンドだし。ところが、実際は違っていた。彼らの初期の曲“Acoustic”をリメイクした“Electric”は、ロック・バンドらしい元アレンジから様変わりしている。一定のテンポで繰り返しの多い内容はテクノ的。6つのパートに分かれていて、次第に曲調は変化していくが、反復主体の音楽だから単調は単調である。ところが、その単調さにつきあっていると、気分がハイになる瞬間がやって来る。僕は、コーラスとパーカッションのパートに移った頃、ハイになった。この高揚感もまた、ダンス・ミュージック的である。

右も左も正義も悪も選択肢も天変地異もない停滞感を歌う“Electric”は、00年代の気分を象徴している。なかなか変化しない曲調は、時代の停滞感をよく表現していると思う。それだけに、単調さが停滞感ではなく高揚感へと変わる逆転の瞬間が訪れると、世界がひっくり返ったような痛快さを覚える。ここではないどこかが見えるような感覚である。これは髭の裏ベスト作品だ。(遠藤利明)
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