P!NKのデビュー10年目にして初のベスト盤である。さすがにどれも一度は耳にしたことのあるスーパー・ヒット・チューン揃いなのだが、こうやって年を追って彼女のキャリアを追想しながら聴いていくと、P!NKという人の特異なキャリアが改めて浮き彫りになるんじゃないだろうか。アリスタのCEOに見出され、ベイビーフェイスら錚々たるブレーンを従えてデビューを飾った彼女の出発点はソウル&ヒップホップで武装した、言わばUSディーバの勝利の方程式に則ったアイコンだった。しかし、“レディ・マーマレイド”のPVでアギレラ等ゴージャスなディーヴァと共にフィーチャーされながらもどこか独りぎこちなく浮いていた彼女がコスチュームを脱ぎ捨てて向かった先は、ロックだった。デビュー当初は「等身大」だったSSWがプロデューサー主導の売れ線へと移行する例は多々あれど、P!NKのように逆行のプロセスを辿った人はなかなかいないし、しかも彼女の場合はその逆行こそが正しかったことが理解できるのがこのベストなのだ。総レディー・ガガ時代の現在、彼女のキャリアが示した「もうひとつの道」は貴重。(粉川しの)