音楽ファンのみならず、日本列島に激震が走った「桑田佳祐、食道癌で入院」の一報。「この先、日本のポップミュージックは一体どうなる?」というレベルで本当にショッキングなニュースだった。だからこそ年末の紅白で、徹底的して「桑田節」を貫いたあの復活劇は、とにかく感動的だったし、そしてどこかしら安堵の気持ちも与えてくれた。ただ、このニューアルバム『MUSICMAN』を、この「復活」という文脈のみで捉えてしまうと、本質を見失うことになりかねない。これは日本の音楽史に刻まれる金字塔的作品である。ひとつとして類似した要素が存在しない全17曲という物量は、「音楽人」桑田の歴史と天才性を完璧に要約している。“現代人諸君!!”における洋楽と邦楽の境界線、“SO WHAT?”におけるシニカルかつ文学的なメッセージ性、そして“狂った女”におけるエロスと狂気の究極の昇華など、巨星・桑田のひとつの到達点はおろか、日本のポップ全体の進化を余すことなく表現してしまっている。我々が「復活」の余韻にひたる間に、ポップの王者は、既に一歩も二歩も前へと進んでいる。(徳山弘基)