アップル社のCMに楽曲が起用され、日本でもアルバムがリリースされた男女デュオ、ザ・サブマリンズの3年ぶりのアルバムが完成した。自宅のガレージを改造したスタジオにて、レコーディングをした今作。花が咲き乱れ、訪れる鳥たちの天国、と呼べる庭のある自宅で制作したという絵に描いたような、ビューティフルな制作エピソードには、納得するやら羨ましいやらだが、初夏の瑞々しさや、躍動が感じられるようなアルバムになっている。エレクトロニックなビートや音色を駆使しながらも、手仕事感をたっぷり味わえるサウンドは、ほっこりとした温もりと、ヘンテコな遊び心が増している。ブレイクの、わずかに憂いを帯びた、品のあるスモーキーな歌声は、いびつでかわいらしいポップ・サウンドをするりと包んで、リボンをかけてしまう。アルバム・タイトルは、ウェス・アンダーソン映画にあるような、少々オフビートなカップルの様をイメージしてつけたそうだが、その感覚もぴったり。インテリジェントなのに、愛嬌たっぷり。なのに、近づけば近づくほど、変化球が飛び出てきて困惑もさせられる。そんな2人の濃密な世界が素敵だ。(吉羽さおり)