普遍という凄味
ジェイムス・モリソン『アウェイクニング』
2011年09月28日発売
2011年09月28日発売
ALBUM
デビューからまだ5年かそこらのはずなのだが、それこそ太古の昔から風となって荒野を吹き抜けていたように耳と身体と心に染み入るヴォーカリゼーション。フォークやブルースをカラッカラに天日干ししたような音楽性の奥底に潜んでいた極彩色ソウルの息吹を最大限に解放した、バーナード・バトラーのプロデュース・ワーク……ジェイムス・モリソンの3rdアルバムとなる今作は、これまで以上に彼の才気がカラフルに咲き乱れた作品――というよりは、それらすべてを歌のキャパシティの中に収めてしまった作品というほうが近い。カントリー風の楽曲をドラマチックに燃え上がらせる“イン・マイ・ドリームス”しかり、ジェシー・Jとのコラボ曲“アップ”しかり、ゴージャスなコーラスと一体になって歓喜の果てへ飛翔するソウル・ナンバー“ビューティフル・ライフ”しかり、ファンキーな切れ味を見せる“フォーエヴァー”しかり……それらの楽曲=枝葉が描き出すのは、他ならぬジェイムス・モリソンという「根」の図太さである。自分自身が音楽そのものであるかのような荘厳な凄味をもって響くタイトル曲の絶唱ぶりは必聴。(高橋智樹)