手練のメンバーによるアコースティック色の強い演奏も心地よいが、なんと言っても素晴らしいのは、おおはた雄一自身の歌声だ。淡々としているようで一定の熱を帯びており、穏やかでありながらも、独特の緊張感を保ち続ける歌声。サウンド自体はカントリーサイドふうの雰囲気を持っているのだが、その歌声はまぎれもなく都市のもの。街頭で枝葉をのばす、常緑樹のような強さがある。
最近、東京で暮らす私の周囲にも「静かなところで暮らしたい」と話す人が増えてきた。その気持ちは分かるのだが、おおはたの音楽を聴いていると、満員電車も大して苦にならなくなるから不思議だ。雑踏のノイズにまみれながら、オーガニックな空気に触れること。彼の音楽には、そんな体験もいいものだと思わせる「都市の自然美」がある。(神谷弘一)