スコセッシ以外では不可能な伝記

ジョージ・ハリスン『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』
2011年12月21日発売
DVD
ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド
12月まで映画としての公開が続くマーティン・スコセッシ監督のジョージ・ハリスンの伝記映画のDVD/ブルーレイが本作となるが、かなり長丁場となり、中身も濃い作品であるだけに、ソフト化はかなり嬉しいところだ。もともとはアメリカのテレビ向けに1時間半枠の2回放送として企画されたものであるだけに、ソフトで自由にじっくり観る方がきっと負担も少ないのだろうが、非常に惹き入れられてしまう内容の作品でもあるから、結局、ぶっ続けで観てしまうということは充分予想されることだろう。作品的には、まさにスコセッシでしか実現できなかったジョージの伝記というものになっているところが画期的。おそらくほかの作り手であったなら、どうしてもビートルズをメインに据え、ポスト・ビートルズと音楽以外でのプロジェクトをなぞっていくという構成にならざるをえなかったはずだが、このスコセッシ版のジョージの伝記映画があまりにも傑出しているところは、そのすべてをひっくるめた物語をジョージのスピリチュアリティという視点からすべて語り直しているところにある。こういった方面にあまり関心がなかったら、ジョージの「インド趣味」と片付けてしまうものがジョージの根本的な人生哲学だったことを解き明かすのがこの作品なのだ。それは『クンドゥン』や『最後の誘惑』など型破りな宗教映画を作ってきつつ、数々のロック映画も作ってきたスコセッシだからこそ可能だった切り口なのだ。映像特典では〝ヒア・カムズ・ザ・サン〟の使われなかったリード・ギターをジョージ・マーティンらと発掘する映像が驚きの発見となる。(高見展)
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