傷だらけのハッピーエンド

BIGMAMA『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』
2012年01月25日発売
ALBUM
BIGMAMA 君がまたブラウスのボタンを留めるまで
金井政人は、自分でも認めているけれど天の邪鬼な青年だ。しかも筋金入りに厄介な天の邪鬼。何しろロマンティックなリアリストで、アクティヴな引き籠りで、純朴な恋愛中毒者で、せっかちな怠け者で、嘘つきな正直者なのだ。そしてBIGMAMAというバンドは、金井がそんな天の邪鬼な自分に存分に向き合うことのできる場所だ。5人で奏でる強烈なビートとフレッシュなサウンドとカラフルなメロディだけが、金井の面倒臭いパーソナリティーをすべて受け止めることができるからだ。

この新作は、そんな金井がこれまでの人生の中でもかつてない深く大きく激しい運命の渦に呑まれながら作り上げたアルバム。それによって「サンキューはファッキュー」とか「処刑台で自分を断罪する夢」とか「大切な人を亡くした帰り道に人身事故にイライラする自分」といった、心の中の立ち入り禁止の金網を乗り越えた表現が際立つ作品になっている。しかし今回もバンドはそのすべてを受け止め、その音の先に金井は「自分が音楽をやる意味」を見出し、最終的には「幸福」を描くことに成功した。(古河晋)
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