なにしろ音が全てのアルバムである。オリジナルがリリースされたのが91年だからもうとっくにCD時代だったにもかかわらず、なぜかマスタリングのレベルが低く、ミックスそのものは素晴らしいのだが(それこそがこのアルバムのラディカリズムなのだから)オーディオ的な音質は何故かないがしろで、長い間フラストレーションを感じてきた。それがケヴィン・シールズ自身のリマスタリングによって全て解消されたのである。いわば20年かかって初めて『ラヴレス』はCDとして完成したのだ。ファースト『イズント・エニシング』もEP集のアルバムも同様にリマスタリングされて発売になる。全て聴いたが、やはり素晴らしい。だが究極は『ラヴレス』だ。
シューゲイザーの全てがここにある。「自己と世界の間に生まれるノイズ」ではなく、「自己もノイズ、世界もノイズ」というレベルで溶け合う快楽とコミュニケーション、その早すぎた完成形がここにある。(山崎洋一郎)