温故知新の理想型

ゴールド・パンダ『ハーフ・オブ・ホェア・ユー・リヴ』
2013年06月05日発売
ALBUM
ゴールド・パンダ ハーフ・オブ・ホェア・ユー・リヴ
素晴らしい。過去作『ラッキー・シャイナー』 も大好きで永らく愛聴してきたが、想像を遥かに超える進化・深化を果たした、英エセックス出身のプロデューサー、ゴールド・パンダの新作である。もともとハウス/ヒップホップのサンプリング・マナーを大切にするアーティストで、そこから立ち上ってくるハンドメイド感と人間味が心地よい作風なのだが、オーガニックな音響を緻密に編み上げ、エキゾチックな旋律が無限に交差してゆく本作の手捌きは、エレクトロニカ系のアーティストで言えばオヴァル並の「達人」の技巧に到達してしまっている。

自己強迫的なまでに徹底した作り込みを行いながら、彼本来の耳馴染みの良い作風が活かされて、表題どおりに聴く者の生活にするりと浸透してゆく。ポップ性能の面においても、イージーな EDMバブルに対するアンチテーゼとしても、ゴールド・パンダの記名性豊かな作品は今、求められて然るべきサウンドとして鳴り響いている。時折、オリエンタルな情緒やテーマを忍ばせるのは在日経験があるからなのか、日本人リスナーの耳と親和性が高いのもナイスなダンス・アルバムだ。(小池宏和)
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