ジェイ・Zとの『ウォッチ・ザ・スローン』を除くと、3年ぶりのカニエ・ウェストのオリジナル・アルバム。内容が明らかになる直前からリック・ルービン参加情報が報道され、ミニマリスティックにアプローチしたという談話が伝えられたが、実際の音はどうなっているのかというと、まったくもって過剰なままである。ここでミニマリズムが使われたとしたら、それは構成要素を少なくして最大限の音圧を得るためで、相変わらずカニエの作り出す音像は強迫的なもので、今作ではその強迫性が極限まで増幅させられている。なぜかといえば、『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』の後の妄念や強迫観念を紐解いていくのがこの作品のテーマとなっているからだ。たとえば、〝パワー〞の行き着くところは〝アイ・アム・ア・ゴッド〞になるわけで、そんな自我を体現する数々のトラックにおけるライムと音の構築は壮絶なものになっている。その一方で、硬い殻の中にあるやわな心情をメロディアスな調べとともに歌い上げるタイプのトラックも中盤から絡みつくように展開していてこれもまた見事(ジャスティン・ヴァーノンの貢献度大?)。しかし、決してこれは自己耽溺ではなく、客観的に状況を突き放した視点も〝ニュー・スレイヴス〞などで提示されているところが重要だ。黒人への社会的な差別が80年代以降に撤廃されながらも経済格差へとその差別が落とし込まれていった事実はヒップホップにおける重要なモチーフだからだ。この金と差別の論理はカニエならではの独壇場だ。(高見展)