ピアノ弾きの真髄

エルトン・ジョン『ザ・ダイヴィング・ボード』
2013年09月18日発売
ALBUM
エルトン・ジョン ザ・ダイヴィング・ボード
前作『ザ・ユニオン』は尊敬するレオン・ラッセルと共に制作され、前々作『キャプテン・アンド・ザ・キッド』も75年の名盤『キャプテン・ファンタスティック』の続編として作られる等、近年のエルトン・ジョンのアルバムは制作の発端に複数の目的やコンセプトを持つ作品が続いていた。翻って3年ぶりの新作となる本アルバムは「歌とピアノ」という彼の表現の核となる要素に的を絞り切った、シンプルかつ明確な一枚となった。流れの中盤には軽快なアメリカン・ロックやカントリー、エルトンが思いっきりコブシを効かせるソウル・ナンバーもあるが、本作の全体的なムードを決定しているのはジャズの音階もふんだんにちりばめたエルトンのピアノ、そして控え目に(この控え目、というのがポイント)要所要所で華を添えるストリングスだ。ピアノもストリングスもいわゆる「行間を読む」的な間と引き算を感じさせるプレイで、アルバム全体にぴんと張り詰めた緊張感と品を与えている。殆どライヴ・レコーディングだったというのも、本作の潔さに繋がっている。「ダイアナ追悼の人」のイメージもそろそろ払拭できそうなリセットの一枚。(粉川しの)
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