なんだなんだ、これは!? 唐突に射抜かれたので、もう一回、頭から聴き直す。プレイヤーの前にじっとして、聴く。これが10代のときなら、デッキの前に正座して、大音量に痺れながら放心しているところだ。音量を下げなさいと家族にどやされ、ぶつくさ不貞腐れながらわりと従順にヘッドフォンに切り替えて、何度も何度も聴いただろう。その衝撃、羨望、ロックンロールに出会ったときのあの感じが、全身を駆け巡る。そろそろ中年という齢の心も青臭く揺さぶり、シングル“トートロジー”での「今バンドに何かが起こってる感じ」が、12の曲になり詰まっているのがアルバム『バンド・デシネ』だ。まず黙って、冒頭曲“ゴッホ”を聴いてほしい。菅大智(Dr)が刻む変拍子にのせ、志磨遼平(Vo)がポエトリーリーディングのように嘯き、叫び、エモーショナルに歌う。アンセムと言うにふさわしい高揚感。ここから堰を切ったように、なりふり構わず、愛や夢を語り、手中にせんと轟々と音が転がりはじめる。恍惚のエネルギーで貫かれたサウンドはとにかくヒロイック。この無敵感に、掴まれっぱなしなのだ。(吉羽さおり)