アーティスト
    GOOD ON THE REEL

    GOOD ON THE REELは太陽のようなロックバンドだ。世界中に等しく降り注ぎ、生命を育んでいく太陽の光のように、その音楽に触れた人ひとりひとりの心を照らし出し、そこに希望の種を蒔いていく――そんなバンドだ。
    一度でも彼らのCDを聴き、あるいはライヴに足を運んだ人ならばわかるだろう。このバンドはその光で文字通り世界を塗り替える。その光に触れる前と触れたあとでは、自分の目を通して見る世界が、少しだけ、でも確実に、変わって見える。「希望」なんて言葉、陳腐だと思うかもしれないが、少なくともGOOD ON THE REELと向き合っているあの時間は「希望」そのものだ。
    では、なぜその歌は、そのメロディは、その言葉は、そんなにも強い光を放ち、「希望」であり続けるのか。それがこの原稿のテーマである。

    6月3日、GOOD ON THE REELは7作目のミニアルバム『七曜になれなかった王様』をリリースする。そのミニアルバムについてはおいおい書くとするが、彼らが伝えようとしているメッセージは、デビュー作『世界分の一節』から『七曜になれなかった王様』にいたるまで、突き詰めればたったひとつだと思っている。
    それは、あえて言葉にするならば、人の生に対する絶対的な肯定性とでもいうようなものである。どんなに世界が汚れていようとも、どんなに複雑に入り組んでいようとも、どんなに残酷であろうとも、どんなに悲しみが多くとも、人が生きていること、生きようとしていること、それ自体はいつだって絶対的に「正しい」。GOOD ON THE REELは常にそう歌っているように思える。
    人が生きることを肯定するということは、その人が生きる世界も肯定するということだ。世の中に唾を吐くのでも、世の中に迎合していくのでもなく、その人が生きているこの世界を、それがどんな世界であれ丸ごと抱きしめる。そんな大きな意思が、彼らの楽曲には貫かれている。

    GOOD ON THE REELの"ハッピーエンド"という曲。僕は彼らの1stフルアルバム『透明な傘の内側より』に収録されたこの曲が好きだ。

    《私達はいつでも ハッピーエンドを待ってるの/
    愛する人を失くしても 夢は幻と気づいても/
    終わるコトなんて出来ないの だっていつだって/
    ハッピーエンドを・・・》

    どんな時間であれ、どんな境遇であれ、人生を最後まで歩き切った先で迎える結末こそが「ハッピーエンド」なのだ、という確信。それこそが、GOOD ON THE REELの真ん中にある信念だと思う。そのハッピーエンドを手にするための道のりで、決して途中で道を見失わないように、つまづいたりしないように、転んでも立ち上がれるように、GOOD ON THE REELは音楽であなたを照らすのだ。

    ステージの真ん中で両手をいっぱいに広げながら、穏やかな笑みを浮かべて歌う千野隆尋(Vo)を見ていると、そのカリスマに圧倒される。しかし同時に、それを見るあなたはその千野がとてつもなく「近い」場所にいることも感じるだろう。そう。そのとてつもないパワーと相反して、GOOD ON THE REELは僕たちにとても「近い」。そして「近い」からこそ、GOOD ON THE REELは太陽のように輝くことができるのだと、僕は思っている。
    彼らは決して大上段に構えてメッセージを振りかざすことも、大言壮語を吐いて観客を煙に巻くこともせず、あくまで真摯にひとりひとりに手を差し伸べ、ひとりひとりに向かって音楽を奏でる。なぜなら彼らもまた、傷つき、苦しみながら、それでも「ハッピーエンド」を目指して歩いているひとりだからだ。彼らは、この世界が理想郷でも楽園でもなく、そこで生きることが楽しみや歓びだけに満ち溢れているわけではないことを、よく知っている。そしてだからこそ、音楽の力を借りて、その世界を何とか肯定しようともがくのだ。そしてだからこそ、彼らの音楽には「希望」がある。彼らは僕たちと同じような人間で、だから信じられる。

    千野隆尋、伊丸岡亮太(G)、岡崎広平(G)、宇佐美友啓(B)、高橋誠(Dr)。GOOD ON THE REELの5人が鳴らす音楽は、あなたの命を明るく照らす。死ぬまで一生懸命、生きろと伝えてくる。そのメロディは、ビートは、歌声は、ときに心を鼓舞するように、ときに手を取り引っ張り上げるように、僕たちのすぐ側で鳴っている。

    文=小川智宏

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