いよいよリリースされるGOOD ON THE REEL、7枚目のミニアルバム『七曜になれなかった王様』。全6曲、どのトラックにも彼ららしいメッセージとロックバンドとしての進化が注ぎ込まれている。というわけで、全収録曲をレヴュー。ぜひ作品を聴きながら読んでほしい。(文=小川智宏)

2015/6/3
UPCH-2037
- 01. 夜にだけ
- 02. 限りなく透明な
- 03. ドア
- 04. 迷子センター
- 05. エターナル・サンシャイン
- 06. ヒツジと花の戦い
1. 夜にだけ
本作のオープニングを飾るリードトラック。"存在証明書"や"水中都市"がそうだったように、彼らのミニアルバムにはそのメインテーマとなるような楽曲が必ずあるが、この『七曜になれなかった王様』においてはこの"夜にだけ"がまさにそうだ。緊張感のあるギターリフとシンプルなリズムに乗せて歌われるのは、笑顔の裏側で孤独と息苦しさとやるせなさを抱え、「夜にだけ」隠れて泣いている主人公の姿。その涙を、千野は弱さではなく戦っていることの証拠だと歌う。笑顔も涙もひっくるめて肯定する、その大きさこそがGOOD ON THE REELだが、その器が、少し大きくなったような感じがする。2コーラス目のサビの終わりで迸る千野の叫びにハッとさせられる。
2. 限りなく透明な
重ねられたギターと淡々としたメロディがどこか幻想的な雰囲気を醸し出す。まるで映画のように描かれていくシーンの中で、主人公の心情がひとりごとのように綴られていく。サビの《君は僕の爪を桜貝みたいだと言った》という一節のもつ文学性にはものすごいものがあって、この一文があるだけで「君」の姿がありありと実体をもって浮かび上がってきて、それと同時に主人公の拭えない孤独をも浮き彫りにしてしまう。どちらかといえば明るいニュアンスだし、派手か地味かといえば派手な曲ではないが、ものすごくシリアスで、ものすごくドラマティック。千野という作詞家の才能がよく出ている楽曲だと思う。
3. ドア
1枚のドアを開けて始まる1日、そのドアを閉じて終わる1日。本当にさりげないところから語り起こして、それが「生きる」とか「愛する」とか「世界」とか、大きくて根源的なテーマにぐいっと接近していく──というダイナミックさはGOOD ON THE REELの特徴のひとつだが、この曲はまさにそう。歌詞で語られるのは本当に素朴な日常の1ページで、そこに特別なことは何もない。でもその「特別なことは何もない」毎日を、千野の声とGOOD ON THE REELのサウンドは魔法のようにドラマに変えてしまう。曲の終盤、主人公がドアを開けて空を見上げる瞬間、ドアを隔てた「僕」の小さな世界が、大きな世界へと開けていく。その解放感とダイナミズムのために、この曲はあるといっていい。弾むようなリズムとギターリフ、さりげなく鳴っているアコースティックギターのアルペジオに、控えめながらも確かなポジティヴィティが宿っている。
4. 迷子センター
個人的に、このミニアルバムでいちばん好きな曲かもしれない。こういう歌詞を聴くと、本当に千野隆尋という人は巧いなあ、と思う。「自分探し」とか「自分の生きている意味は?」とか、今日日そのまま言ってしまうとどうしても薄っぺらく、うそ臭くなってしまいそうなことでも、ちゃんとシーンを描き、主人公を描き、世界観を作っていくことでメッセージとして機能させる。迷子になってしまった《僕の意味》、迷子センターのアナウンス、すべてが一人称の世界であるはずなのに、まるで演劇のようにその情景を立ち上がらせてしまう、千野の歌詞と歌にはそういう力がある。それを支えるバンドのアレンジも素晴らしい。決して必要以上に盛り上げることなく、でも少しずつ重なっていく音が、分厚い雲が切れて光が差し込むように「希望」を映し出していく。
5. エターナル・サンシャイン
この曲名はミシェル・ゴンドリーの映画から採ったんだろうな。ディレイのかかったギターと折り重なるハーモニーでどっしりと描き出される「君」と「僕」を中心とした世界。その歌詞の内容としても曲の構成としてもまさにGOOD ON THE REELらしさが詰まった曲だが、重要なのはこの曲はまさに今リアルタイムで進行するふたりの関係ではなく、その関係に終わりが訪れたあとの世界を描いているということだ。"限りなく透明な"もそうだったが、「君」がいなくなったあとの世界に立つ「僕」の孤独こそが、この美しい情景の真ん中にある。そしてその「孤独」を描きながらも、それを乗り越えていくと「希望」までも感じさせる──そこにこれまでとは違う、千野のメッセージのある種の強さがあるという気がする。
6. ヒツジと花の戦い
どちらかといえば落ち着いた曲調の楽曲が並ぶ『七曜になれなかった王様』だが、このラストトラックだけは明らかに毛色が違う。ポップな裏打ちのリズムと開放的なメロディ、コーラスにハンドクラップ、そして千野の歌詞にも力強い「希望」が宿る。これまでの曲でいえば、それこそライヴでも重要な役割を担っている"シャワー"のような……音楽と歌のパワーですべてをポジティヴの方向へぶん投げてしまう、それもまたGOOD ON THE REELの武器である。
《どこにでもある花でも 毎日水をあげたなら/それだけでほら ここにしかないって言えるでしょ?》というフレーズにはGOOD ON THE REELというバンドがもつ肯定性の本質がある。それはつまり「生きていること」「ここにいること」、それ自体がすでに特別で大事なことなんだという確信。すべてがそこから始まっていく。