("I Simple Say"は)すごくシンプルなメロディと歌詞なんですけど、繰り返し聴きたくなる、日本人の琴線に触れるマジックを持ってるのかなって思いましたね(山本)

──そういう名曲ど真ん中の一方で、“MONKEY CRAZY”みたいなワイルドなロックもあり。

古市 “MONKEY CRAZY”カッコいいよね! いい具合にカオスでね。

山本 いやあ、カオスです(笑)。

武藤 あれはリズム隊を録る時に、ウエノ(コウジ)くんが「これさ、今までの普通の感じで録っても普通じゃん?」「思いっきりガレージ調で録んない?」って言って、最初からグシャッとした音で録って。で、後から被せる人にも、「すみませんが、リズムはもうこの音色なので」って言って(笑)。

山本 “MONKEY CRAZY”でしたっけ? もともと、原曲がすごくテンポが遅かったのは。

武藤 あ、そう。原曲聴かしてもらったんだ。

山本 原曲は50年ぐらい前ですよね。わりかしゆっくりだったのが――何バージョンかあるんですけど、今回のが一番エグいですね(笑)。

古市 あの頃はダンスホールで踊る時代だったからね。今回みたいに速かったら誰も踊れない(笑)。

武藤 メンバー多いけど、加山さんのもともとの原曲を聴いた時に、「あ、これなら俺はこれをやる」って――それはみんな同じように思ってて。たとえば、タイジさんがワウを使うってなったら、「だったら僕は違う方向に行こうかな」って名越(由貴夫)さんが歪み系に行ってみたり、コータローさんがストロークに回るとか……ひとりひとり、曲に対してサッと思いつく自分のアイデアがいっぱいあって。でも、「他の人がそうやるんだったら、俺はこっちに回ろうかな」とかいうふうにもできる。さすがだなあって。

──そう。メンバーがトータル13人いて、音も多いはずなのに、すごくストレートに身体に入ってくるんですよね。

古市 そこはたぶん、年齢というか、キャリアだよね。「引く」っていうところが。若い時には――。

武藤 「俺が俺が!」って(笑)。

古市 「どけどけ!」みたいな。今は、何なら「タイジくん、僕のギターソロ8小節あげます」とか言うからね(笑)。

──あと、最後のタイトル曲“I Simple Say”の存在感が際立ってますよね。

武藤 “I Simple Say”なんて、加山さんが今回用に書き下ろしてるんですよ。「また新曲作ってくれたんだ!」みたいな。それが意外に、すげえシンプルなコードワークの中に、シンプルな言葉がポンと乗っかっただけで、妙な説得力があるなあって。大ヒット曲たちを生み出してきた、弾 厚作さん(加山雄三の作詞・作曲時のペンネーム)のリアルを見た!っていう(笑)。

山本 すごくシンプルなメロディと歌詞なんですけど、繰り返し聴きたくなる、日本人の琴線に触れるマジックを持ってるのかなって思いましたね。最初は、アコギ弾き語りと1コーラスだけだったんですけど――。

古市 代々木でライヴやったじゃん?(「Golden Circle Vol.19」/2015年2月6日)。あの楽屋で初披露だったんだよ。で、加山さんが「聴かせる」って言ったんだけど、ギターないから俺、隣の楽屋からギター借りてきてさ(笑)。

武藤・山本 ははははは!

古市 (奥田)民生か誰かのギターを借りてきたんだよ。

──(笑)。でも、これだけシンプルな王道ロックソングを、78歳にして現在進行形で鳴らせるっていうのはすごいですよね。

武藤 うん。「THE King ALL STARS」の「King」も、加山さんのイニシャルの「K」と「ing」っていう意味もあるよ、って言ってたから。ほんと、あの人は「ing」だなあって感じですよね。

(ここで加山が合流)

おざなりなんていうのは、何処にもないからさ。自分が何をやれば一番いいのか、その全体を見ながらやるところが「King」だと俺は思うんだよね(加山)

──加山さんも含め、日に日にバンドの結束が強くなってきてる流れが、今回の作品にも――。

加山雄三(Vo・G) 出てきた?

──出てきましたね。

加山 じゃあ、よかったですね。時間のない中でよくやったなあと思うよね。ほんと、みんなそれぞれ忙しいじゃない? もう、どうやったら接点ができるか?って、そればっかり考えてたもんね。でもみんな、それだからこその集中力っていうのはあるよな。

──そういう中で、加山さんがロックに、バンドに傾ける情熱が、よりくっきりと形になっていて。

加山 それはね、情熱が蘇ってくるっていうか、戻ってくるんだよね。要するに、本当はずっとロックをやりたいって思ってたんだよね。それがこう、昔はスロウな方向の音楽に行っちゃったもんだから……違う方向へ自分が行ってるっていうのが長いこと続いたもんで、相当運動不足になってたっていう感じがあるね。それが、走ってみたらば、「ああ、やっぱり最初に走ってたのと同じだなあ」って。それはお客さんのおかげもあると思うんだ。すごく反応がいいんだよね。で、それぞれみんなすごい経験を持ってる、トップクラスのプレイヤーだから、俺も刺激されるわけだよね。そうすると、だんだん「ああ、前こうだったな」っていうのが蘇ってきて。だからもう、やる気出てきちゃったから、大変だよ!(笑)。

古市・武藤・山本 (笑)。

加山 もう、みんな必死でやってるからね。ひとりひとりのサウンドを聴くじゃない? 一生懸命にやってるっていうのがすごくよくわかるしさ。おざなりなんていうのは、何処にもないからさ。自分が何をやれば一番いいのか、その全体を見ながらやるところが「King」だと俺は思うんだよね。「ここはこのコードだからこうやればいい」っていう単純なもんじゃないからさ。全体を見てるっていうのがわかるから。そうなるとやっぱり、やる気が蘇ってくるのは当然だと思うね。

──何より、この強者揃いのメンバーに声をかけたっていうのも、加山さんの情熱の為せる業ですからね。

加山 最高のメンバーだからね。びっくりしたもんね、集まってくれて。でも、最初の「ARABAKI」はもう最悪だったなあって。俺、もう二度とあんな音は出したくない!って反省の日々を……「なんでこんなことになったんだ?」「どうすればいいんだ?」って言ったら、「ああ、イヤモニを使えばいいんだ」と。俺、補聴器と間違えられるから嫌だって言ったんだけど(笑)。それでイヤモニを使ってやったらさ、ちゃんと聞こえるじゃない! みんなつけてるわけがわかったよ。桑田(佳祐)くんのフェス(「THE 夢人島 Fes.」/2006年8月)の時も、200mも幅あるステージで、イヤモニ使わないで全部できたんだよ。だから、絶対平気だと思ったんだけど……やっぱり、反省は必要ですね(笑)。

──(笑)。そのイヤモニの話もそうですけど、やっぱり「ing」=現在進行形の加山さんのモードが、精鋭メンバーの音と一緒になって「今」の音として鳴ってるのがいいですよね。

加山 それはびっくりしたんだよ、俺も。自分が50年も前に作ったメロディが、今のみんなの耳に届くというか、拒否されなかったというのが、すごく嬉しかったのと――みんなが弾いてて、ソロのところになると、みんなの音の鳴りとノリのレベルが違うから。「へえ~、こういうふうになるんだな」っていう感じもするしね。もっと新しい音を作りたいなと思うんだよね。

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