ココロオークション、初のコンセプト盤『夏の夜の夢』を語る

どれだけ無謀なデモを作って録音しても、結局ココロオークションになる(大野)


――“景色の花束”と、“蝉時雨”“夏の幻”“雨音”“線香花火”の4連作は、すごく青春の香りがあるのも魅力ですよ。あのMVの連作に出てくる男の子と女の子みたいな青春を、みなさんも過ごしました?

井川 いいえ(笑)。

粟子 女の子の手を引いて走りだすとか、やってみたかったです。

テンメイ 僕もああいう女の子に出会いたかったっていうのは、ちょっとあります。

大野 監督さんもやったことないのかも……。

粟子 やったことがないがゆえの妄想と理想も、あのMVには詰まっているのかもしれないですね。

――青春感のある曲が並んでいる中、6曲目の“なみだ”はダンサブルなテイストで、新鮮な一面を発揮していますね。

大野 こういう曲もずっとやりたかったんです。今回の3曲は既存曲なので、“線香花火”と“景色の花束”以外の新曲でも幅を出したくて入れたのが“なみだ”です。

――ダンサブルなサウンドですけど、友だちに対する温かい気持ちが描かれていて、「ウェーイ!」っていう雰囲気ではないのが、ココロオークションらしいです。

粟子 僕たち、「ウェーイ!」っていう感じではないですからね(笑)。

大野 “なみだ”は、デモの段階ではもっと洗練された感じだったんです。でも、そこに都会的なものを突っ込むのを善しとしないのが、ココロオークションのひねくれ具合なのかなと思います。そこらへんは、自然とそうなっちゃうところがあるんですよ。

井川 例えばタオルを勢いよく回すようなのを自分たちがやるのは、想像できないんですよね。でも、僕らなりの踊らせ方はしたいので、そこは意識しながら作っています。

テンメイ ココロオークションは、あんまりシャキシャキし過ぎないところがいいのかもしれないですね。普段からみんなシャキっとしてないですから(笑)。

大野 この曲に関しては、テンポをちょっと落とした横ノリをやりたいというのもありました。今のシーンで、ライブでそれをやれないと、この先、生き残っていけないっていうのも思いますので。結果的に、こういうのをやってもココロオークションのサウンドになるんだっていうのも感じました。どれだけ無謀なデモを作って録音しても、結局ココロオークションになるんです。

粟子 大野からデモが送られてきて、驚くこともあるんですけどね(笑)。“なみだ”もびっくりしました。でも、ココロオークションらしいものになっていると思います。

大野 「自分たちらしくないことをやればやるほど、自分たちらしさしか残ってない」みたいなのを感じることがよくあります。最近になって、やっとそれが武器なんやなと気づきました。昔はどうしてもココロオークションっぽくなってしまうことが、要らない部分であるように感じていたんですけど。今回、振り切った曲も作った結果、「それでもココロオークションっぽいんやったら、それは武器なんやな」と思いました。

これは僕らの覚悟の表れででもあります(大野)


――7曲目の“僕らのナツ。”は、カバーなんですね。この曲を収録した理由は何だったんでしょう?

粟子 僕らはバンドを始めたての頃に、Menozっていうバンドが大好きだったんですけど、活動を休止してしまったんです。でも、いろんな人にMenozの曲を聴いてもらいたいので、アコースティックワンマンツアーを回った時に、“僕らのナツ。”をやったんです。その時に録った音を今回収録しました。

大野 僕らは大学のサークルのコピーバンドから始めましたし、もともとコピーをしたりカバーしたりするのが好きなんです。アコースティックワンマンツアーで演奏したものの中でも特に好きだったのが、Menozのこの曲でした。あと、ココロオークションは、アコースティックでもワンマンツアーをやっているっていうこともいろんな人に知ってほしいので、この曲も聴いてもらえると嬉しいです。

――今回の作品はみなさんのいろんな背景が反映されていますし、ココロオークションを改めて紹介したものにもなっているんじゃないでしょうか。

大野 そうですね。昔の曲も入っていますし。“蝉時雨”みたいな昔の曲を入れても違和感がないっていうのは、世界観が変わっていないっていうことなのかもしれないです。そこは誇れることですし、ココロオークションの深い部分にあるものを聴いた人にわかってもらえるものになったと思います。

――この作品を出した後は夏フェスもありますし、9月から10月にかけては全国ツアーもありますから、2017年も一気に駆け抜けることになりそうですね。

大野 はい。僕らはライブバンドだと思っているので、これからもライブをやりまくりますよ。でも……作ってから気づいたんですけど、今回ってバラードが中心なんですね。「夏フェス前になんちゅうものを作ったんや!」って思いましたけど(笑)。とはいえ、これは僕らの覚悟の表れででもあります。これを聴けば、僕らがどういう音を鳴らすかわかるはずです。

――こういう音を鳴らすバンドは、他になかなかいないですよ。

大野 ほんまにそう思います。フェスのいいステージに出させて頂くようになって感じたんですけど、「僕ら、メインストリームじゃなかったんやな」と。

粟子 たしかに。

テンメイ 浮いてるからな。

井川 そのつもりはなかったのに(笑)。

――バリバリに踊らせるのとはまた別の、じっくり聴き入るライブをやるバンドですよね。

粟子 はい。フェスとかで、フロアを「シーン」とさせたいんです。いや、「ジーン」かな。みんながこっちを向いている状態での、そういう雰囲気を作っていきたいです。

大野 僕らはど真ん中のバンドのつもりだったんですけどね(笑)。でも、それが求められていることでしょうし、僕らが表現したいことでもあるので、ここからさらにやっていきたいと思っています。

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