昨年、シングル『生きていたんだよな』でメジャーデビューを果たし、その後も『愛を伝えたいだとか』、『君はロックを聴かない』と、作品ごとにソングライターとしての様々な才能を見せてきたあいみょん。類い稀なるソングライティング力は常にリスナーを驚かせ、フルアルバムへの期待も大きく膨らんだ。そして、いよいよ待望のメジャー1stアルバム『青春のエキサイトメント』をリリース。青春の衝動と純粋さとシニカルさとが見事ひとつにパッケージされたこのアルバムは、あいみょんの様々な魅力がたっぷり詰まった掛け値なしの超名作だと思う。まだ22歳という若さで、青春のエキサイトメント(興奮)の、その中にいながら、それがノスタルジーへと変わっていく瞬間をすでに知っているような、この切なさは一体どこから湧き出てくるものなのだろう。この1stフルアルバムの制作背景から、彼女の歌の魅力を探る。
インタビュー=杉浦美恵
自分の曲は自分が一番好きじゃなきゃあかんと思っている
──『青春のエキサイトメント』、素晴らしい1stアルバムです。今作では、あいみょんの表現したいこと、例えば「生と死」とか「愛」とか「怒り」がそれぞれの楽曲に鮮明に表れていて、まさに「青春」という言葉の持つ熱が感じられる作品でした。制作当初は、アルバムを通してどういうメッセージを伝えたいと考えていましたか?
「基本的に楽曲を作る時には、例えば『誰かを助けたい』とか、そういう感情を言葉にするっていうことはほとんどないんです。自分が作りたい曲を作るだけなんですけど、後々ファンの方から『これはこういう曲だと思いました』とか言ってもらえたりして。私はその言葉を待ってる側なので、あんまりメッセージっていうのはいつも意識せず作ってます。今回のアルバムでもどういう声が返ってくるか楽しみです。それでこのアルバムのメッセージが決まってくるという感じですね」
──アルバムを客観的に聴いてみて、あいみょんさん自身はどんな感想を持ちましたか?
「フルアルバムを全部通して聴くっていうのもなかなか久々で、しかも全部自分の曲でしたし……でも、我ながらって感じです(笑)。常に自画自賛はするようにしてるんですよ。自分の曲は自分が一番好きじゃなきゃあかんと思っているので。だけど、本当に純粋にいいアルバムができたなって思いました」
──これまでのシングル曲はもちろん収録されてますが、新しくレコーディングした曲もたくさんあって。あいみょんさんは、オリジナル曲はこれまで何曲くらい作ってきたんですか?
「たぶん、200曲は超えてますね」
──200曲も? すごいですね。今回はもちろんアルバム用に新たに作った曲もあると思いますけど、その膨大なストックの中からどの曲をレコーディングしようか、すごく悩みませんでしたか?
「私はもちろん全部の曲を把握しているけど、とりあえずスタッフさんたちに全部聴いてもらって──っていうか、常に聴いてもらっているんですけど、『私はこの曲がいいと思う』とか、『私はこっちを入れたい』とか、意見の飛ばしあいをして、けっこう悩んだかも。すんなりは決まらなかったです。やっぱり『あれも入れたい、これも入れたい』ってなっちゃうし。あと、どうも私は出し惜しみをしちゃうタイプで、これはまだ取っておこうとか考えてしまうんですけど、それはやっぱりよくないなと。『今』しかないじゃないですか、出せるのって。だから、今しか出せへんものっていう子たちを選びました。あとは曲調とかも考えつつ」
バンドやってたらきっとこんなんなんかなって感じでした
──前にインタビューした時も言ってましたけど、プロデューサーやサポートミュージシャン、そしてレコーディングスタジオも、曲ごとに様々な人、様々な場所で制作されていて、今回もそういう制作の仕方なんですよね。
「はい。変わらずですね。でも今回のアルバムは、言ってみれば『いつものメンバー』ではあるんですよ。Sundayカミデさん(天才バンド、ワンダフルボーイズ)には初めて加わってもらいましたけど、それ以外はいつものメンバー感があったので、けっこうバタバタしながらもゆるゆると、レコーディングは進んでいきました」
──今作だと“ジェニファー”と“ふたりの世界”がSundayカミデさんのプロデュース曲ですね。この2曲には、洋楽のポップサウンドのテイストを感じたりもして、これまでのあいみょんさんの楽曲の雰囲気とは違うなと思いました。
「そうですね。Sundayさんのアレンジは、フルートとか、今までの私の楽曲にはない音が入ってたりして、面白かったです」
──Sundayさんにお願いした経緯は?
「3rdシングルの『君はロックを聴かない』とこのアルバムがほぼ同時進行だったので、その時にアレンジを誰にしていただくかっていう話をしてて、『面白い人、チャレンジできる人がいいね』っていう話になって。それでスタッフさんが『Sundayさんにお願いしてみない? 同じレーベルだし』って言ってくれたんです。私、天才バンドはすごく大好きだから、『ぜひぜひ!よろしくお願いします!』と。それでまず、シングルのカップリング曲をSundayさんにやってもらって。そんなきっかけでした」
── 一緒に制作してみていかがでしたか?
「面白かったです、関西人同士なので(笑)。Sundayさんも、ほかの人のサウンドプロデュースをするのは、私が初めてだったらしくて。なので、お互い探り探りな感じも面白かったです。バンドやってるみたいな感じでした。いろいろ話し合いながら『ここもっとこうしたらよくなるかもね』とか、ずっと話しながらやってたので、ああ、バンドやってたらきっとこんなんなんかなって錯覚を起こす感じでした」
──この曲はこの人にアレンジしてほしいとか、この曲はこの人のイメージだなとか、そういう感じで一緒にやる人を決めていく感じですか?
「うーん、Sundayさんの場合は楽曲のイメージがなんとなくSundayさんっぽかったから、今回はこの2曲をお願いしたんですけど、いつもは『こういう曲はやってもらったことがないからやってほしい』とか、むしろそういう感じです」
──何が出てくるのか、あいみょんさん自身もわからないくらいの?
「はい。そんな感じでいつもお願いしたいと思っています。だから今作も『ああ、こうくるか』みたいなのが多くて面白かったです。やっぱりみんなそれぞれに違うので、楽しいですね。アレンジが戻ってきた時とか、すごく楽しい」