あいみょん、「今しか出せない11曲」=1stフルアルバム『青春のエキサイトメント』を語る

今のうちに天才って言われて死にたい


──1曲目に収録されている“憧れてきたんだ”は、ライブでも1曲目にやっているということで。まさに、あいみょんさんが様々な先人から受けた影響をストレートに歌にしています。これは以前からあった曲ですか?

「これは東京に来てから作った曲です。だから、ここ1年くらいですね。今回のアルバムは東京で作った曲が多いんですよ」

──“君はロックを聴かない”の歌詞からもそんなことを思ったんですけど、あいみょんさんは、好きになったものや憧れたものを積極的に誰かに伝えたいって思うタイプの人ですよね。その影響を隠さず表していくところが、しっかり自分の表現のひとつなっているというか。

「真似とかオマージュとか、いろいろ言われることはあるんですよ。でももちろん真似をしているつもりはまったくないし、リスペクトしているからこそで、『そりゃあ真似したくなるでしょ』っていう精神が根っこにあるんですよね。『そりゃ素晴らしい音楽を作ってる方たちの曲を聴いたら真似したくなるでしょ』って。だから、“憧れてきたんだ”は、そのまま、『こういう人たちに憧れてきました』っていう歌です」

──それをアルバムの1曲目にもってきたのは、それだけ強い思いがあるからなんですね。

「言ってみれば、昔話でいうところの『昔、昔、あるところに』っていう導入部分が、この“憧れてきたんだ”やと思います。『こうして、いろんな人に憧れてきた女の子がいました』っていうところから始まって、『その憧れから今、こういう音楽をやっています』と言える曲を、その後に入れていったという感じですね」

──今作は東京で作った曲が多いと言ってましたけど、“いつまでも”もそうですか? 《死んだ後に天才だったなんて/死んでも言われたくないもんな》っていう歌詞は、あいみょんとしてのストレートな気持ち?

「そうですね。上京したての頃に作った歌で、西宮に帰りたいっていう気持ちもあったし、音楽に対していろいろ考えてて……歌詞のとおりなんですよ、うん(笑)。『死んだ友達が』とか、歌の前置きでそういうこと言ったら売れるのかなとか、同情されれば注目されるのかなって思うと、もうそんなんやったら普通に音楽やってても意味ないやとか、いろいろ考えてしまって。でもそういう曲っていっぱいあるじゃないですか。たとえば『亡くなった誰かのために書きました』とか。もうそんなん言わんといてくれって思ったんですよ。結局同情かいって。たぶんすごくひねくれてた時期ですね。今はもうそんなこと思わないです(笑)」

──メジャーデビューも決まって、環境も変わって、これまで以上に音楽のことを考えた時期ですよね。

「はい。あと、『死んだ後に天才って言われたくない』っていう思いは、それは今でもそうなんですよ。例えばゴッホの『ひまわり』はゴッホが亡くなってから評価されたじゃないですか。でもそれって『ゴッホ何もうれしくないやん』って。それも結局同情じゃないの?って。いっぱい描き残して、亡くなってしまって、『かわいそう、彼は天才やったのに』って言うのは、ただの同情やと思うので。それやったら、今のうちに天才って言われて死にたい──っていう、そういう曲です(笑)。だから、今どんだけ性格悪いとかクソとか思われてもいいから、天才って言われるまで這い上がりたいです」

──その感じでいくと、“風のささやき”なんかも、同じ時期にできた曲ですよね? 《頑張れなんて言うなよクソが》とか、苛立ちがストレートに書かれてる曲。

「あ、もうほんとその通りです(笑)。同じく上京したての時期に作った曲ですね。『頑張れ』って言われるのがめっちゃ嫌だった時期だったんですよ。『もう頑張れって言うなよ、めっちゃ頑張ってんねん、こっちは』って(笑)。『頑張れ』って言われるのが嫌すぎて、自分でも誰かに『頑張れ』って言うのが嫌だと思ってて。だから、基本的に『楽しんで』っていう言い方に変えてましたね」

──「頑張れ」ってたくさん言われる時は、自分が一番しんどい時期ですもんね。

「音楽を頑張れって言われることに関して、やっぱり違和感があったんですよね。当時は『音楽は頑張るもんじゃない』って思ったし、今でもそれは若干思ってますね。やっぱり音楽=職業って思うのが嫌なんですよ。自分では楽しくて『やらせてもらってる側』だと思っているので。それを仕事って捉えてしまうと『やらされてる感』に囚われてしまいそうで。『頑張る』って言うより『楽しんでみんなのためにやってます』って言うほうがいいなあって思ってて。もちろん職業なんですけどね、ミュージシャンとかアーティストとかって。でもそれを100%仕事、職業というふうには捉えたくないんです」

──そのへんは難しいところですよね。

「そうなんですよ。病院とか行った時、職業欄に何て書くかっていうのは悩みますね(笑)。苦し紛れに『自営業』って書いたりしてます」

何かを作りたいって思う状態は、すごい青春だなと思ったんですよ


──『青春のエキサイトメント』というアルバムタイトルはどの段階で出てきたんですか?

「3rdシングルの『君はロックを聴かない』のレコーディングの時に考えてたんですよ。まあ『青春』っていう言葉が純粋に好きなんですよね──その3rdシングルの曲は全部『青春』みたいな感じなんですけど。『エキサイトメント』って興奮という意味で、たぶん私が曲を書いたり、ものを作る時って、見た目にはわからへんけど一種の興奮状態にあって、だからこそ何かを作りたいって思うんだろうし、その状態はすごい青春だなと思ったんですよ。だからこれは『青春の興奮からできあがった曲たちです』っていう意味で、『青春のエキサイトメント』っていうタイトルに決めました」

──様々な青春を映し出している作品だなと思いつつ、あいみょんさんの曲は、青春のその先まで見てるような歌詞がすごくいっぱいある気がします。ラストの“漂白”にしても、この青春の日々はいつか過ぎ去るということを、その渦中にありながら思っているような。だからすごく切ないんですよ、このアルバムは。

「あんまり、そういう意識はなかったですけどね。でもまあ、よく言うじゃないですか。出会いがあれば別れがあるって。それはほんまにそうやなって思うから、そういう意味では、終わりをどこかで思ってるっていうのはあると思いますけどね。そういうふうに物語を作ったほうが、自分の感情も出てきやすいというか、終わりを見据えて書いたほうが、妄想はしやすいのかもしれないです。あと、終わりっていう意味で言えば『いつ死ぬかわからへん』っていうのはあると思いますね、ずっと。でも恋愛に関しては、ふだんはそんなに考えてないです」

──なるほど。たぶん私がすでに青春時代をとうに過ぎているから、この作品にエキサイトメントと同時にセンチメントを感じてしまうのかもしれない。でもそれって、かなりすごいことだと思うんですよ。つまり、世代を超えて共感できる普遍的な楽曲になっているという意味で。22歳という若さで、その普遍性を楽曲に滲ませることができるのは、改めてすごいなあと。

「たぶん私が思うに、ほかの人の場合は、青春は外でのエキサイトメントが多かったんだと思うんですよ。大学生活やったり、みんなでバーベキューしたり、でも私は憧れてきたものが、家で聴く音楽やったり、美術館やったり、本とかやったから、そういう青春時代を過ごしてきて、その差もあるのかもしれないですね」

──同い年の人と比べても、青春の感じ方がちょっと違うのかもしれないですよね。

「ずっとそこは一緒やって思ってたんですけどね(笑)。やっぱりちょいちょい感じることはありますね、どっかで。私は大学生活を経験してないから、お酒の飲み方が違うとか(笑)。大学生になった友だちは、みんなけっこう、いろんなお酒を次々飲んで盛り上がって、ベロベロになってゲロ吐いたりして、そういうのを私もやってみたかったっていうのはあります。飲みすぎて吐くとかも、言ってみれば『エキサイトメント』じゃないですか。爆発してるじゃないですか。私にはそういう経験はなくて。そういう青春の違いを感じる時はありますね」

──作品を作り終えて、改めて今、あいみょんさんにとって「青春」ってどんなイメージですか?

「青春って、その渦中では感じ取れへんものなんかなって思いますね。10代の頃も、その当時は『今が青春だ』なんて言わないじゃないですか。自分でも音楽やってる今がすごく青春やとは思いながらも、例えば30年後に振り返ってみた時にどう思うかはまだわからへん。けど、時が経って『あの時青春やったんやな』って思えたら、いいことやなって思います。だから、リアルタイムでは感じ取られへんものが『青春』と呼ばれるのかもしれないですね」

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