あいみょん 、大躍進の夏に思っていたこと、そのすべて──新曲“今夜このまま”スペシャルインタビュー

あいみょん 、大躍進の夏に思っていたこと、そのすべて──新曲“今夜このまま”スペシャルインタビュー

(転調を)やってみたら意外とかっこよくて。というわけで、私、人生初めての転調を経験しました(笑)


──『けもなれ(獣になれない私たち)』の第1話が今週(取材時)放送でしたけど、観ましたか?

「もちろん観ました。その日は夕方くらいに作業が終わって、絶対にリアルタイムで観ようと、ビールを買って帰って家で観ました。自分の曲がかかるってわかってるし、どのタイミングで鳴り出すかっていうのも、なんとなくは知っていたけど、それでも『そろそろ来る』って思った瞬間、めっちゃ心臓ドキドキしました(笑)。何話目になったら慣れるんやろ、この感覚」

──(笑)。ドラマのために曲を書き下ろしたのは今回が初めてですよね? 制作はどんなふうに進んでいったんですか?

「まず主題歌のお話をいただいた時に、『男女がクラフトビール屋さんで出会う』っていう設定は聞いていたんです。その後、第1話と第2話の台本を読ませていただいて、そこで新垣結衣さん演じる晶と、松田龍平さん演じる恒星の関係性だったり、それぞれの人間性を把握した上で書き下ろしました」

──歌詞は晶のキャラクターに寄り添って書かれていますよね?

「そうですね。W主演という感じだったので両方ともにつながりがある曲にしたかったんですけど、やっぱりちょっと晶のほうに寄り添ったものになりましたね。全体的には『夜と泡』っていうのがテーマになった曲かなと」

──「泡」っていうのは歌詞にも出てきますけど、もちろんドラマとも関係性の深いビールにかかっていて。

「そうですね。第1話の放送が終わった後に、ファンの子とかまわりの人の反応を見ていると、この曲がビールにかかっているっていうことにすぐ気づいてくれる人もいて、ああよかったなと思いました」

──曲はスムーズにできあがったんですか?

「リハーサルでスタジオに入っている時に、今回の主題歌のオファーが入って、まだ台本ももらっていない状況でしたけど、私の勝手なイメージで『こういう感じがいいな』っていうのが浮かんできて。三茶のリハスタでしたけど、バンドメンバーに一緒に弾いてもらいながらできたコード進行から生まれたのが、今回の“今夜このまま”なんです。曲の構成はその時からあんまり変わってないんですよ。今回、主題歌のために何曲も曲を作ったんですけど、結局その一発目の曲が採用になりました」

──この曲、テレビで流れる部分だけじゃなくて、フル尺で聴くとさらに曲の良さが理解できて、後半の展開の変化とか、すごく面白く練られているなあと思いました。

「そうなんです。かなり変わっていくので、ぜひフルで聴いてほしい曲ですね」

──後半の転調は意外でしたけど、楽曲にスケール感が加わりましたね。

「そうなんです。私、初めてなんですよ、転調するの(笑)」

──え、そうでしたっけ? そうか、初めての転調。

「そうなんです。そんな難しいことできない質なんで(笑)。でもアレンジャーの田中ユウスケさんと話してて、『ここ、こうしてみいひん?』って提案していただいて。最初は『いやいやいや、それはないでしょ』とか言ってたんですけど、でもやってみたら意外とかっこよくて。というわけで、私、人生初めての転調を経験しました(笑)」

──(笑)。そういう意味でも記念すべき一曲ですね。

「田中さんとはいつも一緒にアレンジを作っているんですけど、今回は特にたくさん話しました。田中さんも主題歌ということで、いつもより悩んではって、ピアノのフレーズとか考える時も、私はたまに後ろで歌ってたりするんですけど、今回は『もっとちょうだい』みたいな感じで、私が歌ってるほうがアイデアが浮かぶからって。それでいいフレーズがポンポン出てきて、ほんま、あの時間はすごく大切やったなあって思いますね」

──転調はどうして今まで取り入れてこなかったんですか?

「いやもう、シンプルにめんどくさがり屋なので(笑)。頭で考えるのがすごく嫌で、だから転調とか難しいことはできひんタイプなんですよ」

いつもは『できます、やります』みたいな感じで強気なんですけど、この時だけは、一瞬弱気になりかけた


──でも今回は、楽曲の展開としてすごく効いていますよね。ちなみに今回の主題歌は、オファーを受けて制作を開始したのはいつ頃だったんですか?

「ふふふふ。7月の末か、もしかしたら8月の頭だったかな。けっこう近々なタイミングで」

──そんなに短期間での制作だったんですか。

「そうなんですよ。私、ドラマ主題歌ってこんな近々で作るもんなんやって思って、めっちゃ大変やんって思ってたんですけど、でもいろいろ話を聞いたら、実際は一年前とか半年前とかに話がくることが多いらしいんですよね。今回のようなケースはなかなか珍しいのかなと。で、私たちは2ヶ月前に話をいただいて、考えられへんくらいのスケジュールで進めていきました。だから最初にお話をいただいた時は、『ぜひぜひやらせてください!』って言ったものの、もちろん『やりたいです』って言うのは簡単なんやけど、『間に合うのか?』っていう不安は正直ありました。私は曲を作るの早いほうなんですけど、主題歌となると、また違う作業じゃないですか。だから、けっこうスタジオがっつり入ったりして」

──曲作りのためにスタジオに?

「はい。普段は家で曲作りするんですけど、よりによってこのタイミングで、ご近所の方からクレームが入りまして……」

──なんと。騒音クレーム?

「そうなんです。『うるさいです』と。だから引っ越そうっていうことにもなり、もういろんなことが重なってしまって、家で曲作られへんけど、でも締め切りはあるし、引越しって言っても内見も行かなあかんし(笑)。だから8月はめちゃめちゃ大変でした」

──そっか。8月はフェス出演なんかもあって、そういう意味でも忙しい時期だと思ってましたけど、想定外に多忙な月だったんですね。

「そうなんですよ。だから、ROCK IN JAPANとかに出させてもらった時は、ちょうどそんな感じの時でした。だけど、どうしても8月中には曲を作り上げなきゃいけなかったし、普段は絶対に家でしか曲作りはしないんですけど、スタジオに入るようにして」

──どうでした? スタジオでの曲作りは。逆に集中できたんじゃないですか?

「いやもうダメでした。もう私、嫌なんですスタジオで曲作るの」

──そこまで?

「ほんまにほぼ毎日スタジオ入って、とりあえず時間見つけては5時間、6時間、ぶっ通しでひとりで曲作りして。あの時はもう、眠すぎてなのか、曲に悩んでてなのか忘れましたけど、たぶん1時間くらい、スタジオの隅でうずくまってたんですよね。でも、追い詰められていたとか、そんなネガティブなことじゃなかったんですよ。楽曲制作であんなに悩めることも、今思えば幸せなことやなあって思うし。まあ、あれほど時間がない中で曲作りをしたのはこれが初めてかなっていうくらい、しんどかったですけどね。だから正直作りながら、『私できひんかもしれへん』って珍しく思いました。いつもは『できます、やります』みたいな感じで強気なんですけど、この時だけは、一瞬弱気になりかけたかなあ」

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