WANIMAの3人のあの陽性ヴァイブの裏側にどれだけの真剣さとひたむきな努力が隠されているかは、彼らの曲を聴けばわかるよね。WANIMAの曲から溢れ出る感情の濃さと力強さは、ライブハウスシーンで人気のそのへんのバンドとは次元が違うし、メディアやチャートを賑わせているそのへんのバンドともまるでケタが違う。圧倒的に音楽としてのレベルが違うのだ。「歌」「曲」に高い理想を求めるがゆえに、その理想に届く「歌」「曲」に仕上がるまで一切妥協はしない。どこまでも努力し続ける。当たり前のことのように思うが、彼らほどひたむきに全霊で打ち込むバンドは今やそうはいない。
そして今回のシングル3曲もそうやって鍛え抜かれて生まれた名曲たちだ。去年の5月の配信曲“Drive”以来のリリースで、ドラマ『メゾン・ド・ポリス』の主題歌“アゲイン”、エロ曲シリーズの傑作“渚の泡沫”、「受験にinゼリー」のCM書き下ろしソング“ANSWER”の3曲。封じ込められた熱と感情がものすごい。
なお、このインタビューの完全版は、発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』4月号に掲載されているので、ぜひそちらも併せて読んでほしい。
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=大森克己
とにかく形にしたかった。もう一回、やっぱWANIMAだよなって言ってほしかった
――待望のシングルリリースということで。3曲入り。めっちゃいいです!
KENTA(Vo・B) あー、ほんとですか! 嬉しいなー。
――ほんとに力が入ってる。3曲ともまったく違うタイプで、1曲ずつホームラン打つぞっていう気合いでつくられたのがわかる。“アゲイン”も“ANSWER”も名曲ですね。素晴らしいと思います。まずそれぞれの手応えを訊きたいです。
FUJI(Dr・Cho) 自分たちのいちばん旬な音が出せたと思います。より今のWANIMAを出したいという気持ちがこれまでの作品のなかでもいちばん強かったかなっていう。
KO-SHIN(G・Cho) 早く聴いてほしいですね。 “アゲイン”とかは、言ったらWANIMAの象徴じゃないですか。そういう曲調のなかにも、新しい部分がありますし。で、“ANSWER”はすごい挑戦があった曲なのかなとも思うし。なんか、よりWANIMAとしての曲の幅が広がったんじゃないかなって。それを受け入れてほしいなと思いますね。
KENTA 乗り越えられてよかったです。しっかり今回も向き合ってつくったので。リズムとかテンポとか、僕はそういうのを一切考えてなくて。もうとにかく形にしたかったというのがあって。3曲のどっから入っても間違えのないように。1年ぶりでしたし、もう一回、やっぱWANIMAだよなって言うてほしかったなという。
――やっぱりそれだけ自分のハードルを高く設定したってことかな。
KENTA そうっすね。「まあ3曲目だから、2曲目だから、こういうくらいでいいや」とかは、もうなし。自分のことを信じようと思いました。ちゃんと向き合えて曲になったっていう。つくってる時は結構壮絶な時もあったんですけどね。
――どういうところが難しかったの?
KENTA 単純に自分のなかで難しくしてたっていう。でも、その答えが見えたのは、ライブで目の前にいるお客さんとか、些細なことがヒントになったんです。なんというか、『Everybody!! TOUR』が終わって、『1CHANCE NIGHT(TOUR 2018→2019)』をやって、僕らが初めて行く土地でも待ってるお客さんがいて、とか。そういう、当たり前のようで当たり前じゃないことを再確認できたのが、すごく今回の作品の力になってます。
KENTAが見ている展望を一緒に見るために必死に食らいついてった。3人が納得するまで模索してできた曲だなって
――まず、“アゲイン”。これはいわゆるWANIMAの王道に聴こえるけど、ただ、その到達点の高さと完成度がすごいですよね。“ともに”“シグナル”と並ぶ可能性があると思うし、そう信じてプレイされるべきなんじゃないかなって。これはどんなふうにしてできたんでしょう。
KENTA 3人でスタジオ入ってた時に、ふと、このままじゃ終われないだろうって、熱いものがこみ上げてきて。僕が適当に歌ったのに対して、ふたりが寄り添ってきて、ぼやっと形ができたんです。そこからちょっと期間が空いて、ドラマの話をいただいて。あ、そういえばスタジオでやった、あの熱い感じの曲があった、って形にしようということになりました。
――形にしていく過程では何か感じることはありました?
KENTA スタジオでわりと大きい音で出して、いいか悪いか判断するんですけど。まず歌詞も何もできてない状態でボーンと出した時、あ、この感じっていうのがあったんですよ。なんかわからんけど、ふたりが寄り添って、3人でジャーンと出す感じがグッときたっていう。難しいんですけどね。これはちゃんと歌詞入れて形にできたらみんなにも届くんじゃないかなという、ぼやっとした自信はあったんです。
――なるほど。FUJIくんはどうでした?
FUJI いちばん最初にKENTAが見ていた展望を一緒に見るために、必死に食らいついてくっていうか。何回も同じフレーズをやったり、3人が納得するまで模索してできた一曲だなって感じがします。ちょっとこれは違うってなったら、もう一回まっさらにして、つくり直して。
――テンポも特別速いってわけでも遅いってわけでもないし、曲構成もシンプルで。そうすると、信じてやってても、これでいいのかみたいな状態に陥りかねなかったとも思うんだけど。
FUJI そうですね、まさに。
KENTA キックのタイミングひとつとっても全然変わるんですよ。
FUJI だからこそ何回も同じフレーズをチェックして、これならイケるとか、それを3人で共有して。もうほんとに、一歩ずつ積み上げてったと思います。
――KO-SHINはどう?
KO-SHIN ちょっと言葉で伝えれないかもしれないですけど、あのメロとコード進行があった時から、これはリード曲になると思ったんです。なので、つくる過程は変わらないんですけど、よりメロディを活かす方法とかがうまくマッチしてできあがった曲だなと。
――でも、メロとマッチしてる曲だけど、最初はゼロなわけですよね。で、KENTAくんから出てくるものを、完全にマッチした形の楽曲にしていく自分たちにも相当な困難があったと思うんだけど。
KO-SHIN そうですね。試行錯誤はします。けど、結局3人のできあがりのイメージが近いと思うんで。そこに段階を踏んで持っていけたんです。
――なるほど。その共通のイメージを持てるっていうのがやっぱりバンドなんですね。当たり前かもしれないけど。
FUJI そうですね。
KENTA やっぱすげえ財産ですよね。できてからインタビューされるとホッとするんですよ。“アゲイン”ができた時はやっぱすごい嬉しかったですね。
――でしょうねえ。これは“ともに”“シグナル”に匹敵する曲になると思うし、していかなきゃいけない曲だと思う。ただ、歌詞はあの頃の曲とは違っていて。“ともに”のサビの歌詞は聴いて一瞬で理解できるんだけど、これは自分のなかで噛んで飲み込むみたいなことを必要とする歌詞だなって。その違いが、最近のWANIMAには多少なりともある気がしていて。
KENTA そうですね。“ともに”とかはわかりやすかったんですけど。“アゲイン”は、言葉ひとつにしても、いろんな人の見える景色だったり持ってる面影とかに触れやすいんじゃないかなって。♪懐か~しくて~、ってぼやっと歌ってる時に、僕も過去の懐かしさを感じて。そうやってみんなそれぞれの思いに触れられたらいいなって思い始めてから、この言葉たちにたどり着いたんです。まあ、僕のなかではすごいシンプルな言葉ですけどね。難しかったかな。なんか、そこがグッときたんですよ、今回は。僕より上の世代とか、何かに挑戦しようとしてる人たちとか、挑戦しなくてもなんとか生きてる人たちには、引っかかってほしいなって。