Absolute area、繊細な筆致で描かれる男女の過去と未来。ミニアルバム『無限遠点』の物語の真相をメンバーに訊いた

Absolute area、繊細な筆致で描かれる男女の過去と未来。ミニアルバム『無限遠点』の物語の真相をメンバーに訊いた

(『無限遠点』は)1曲目の“少年”と最後の“Girl”のあいだで巻き起こるストーリーを描いた作品になってるんです(山口)


――『無限遠点』は、1曲1曲がバラバラのように見えて、全体を通して聴くと1本の大きなストーリーを感じる作品ですよね。

山口諒也(Vo・Gt) そうなんですよね。1曲目の“少年”と最後の“Girl”のあいだで巻き起こるストーリーを描いた作品になってるんです。1曲1曲は短編小説みたいに聴けるんですけど、ひとつのミニアルバムとしてまとまるような作品になったと思います。

――前作の『あの夏の僕へ』もそうでしたけど、作品を作るときはストーリーから考えることが多いんですか?

山口 何かしらのストーリーが必要だなと思ってますね。1曲目の“少年”は、前作の『あの夏の僕へ』を出した直後に作ったんです。前作と同じように少年時代に置き忘れたもの、大事なものは過去にあるんじゃないかっていうようなことを歌ってて。「あのアルバムの続編がはじまるよ」っていう曲になってるというか。で、そのあとに“パラレルストーリー”とか“遠くまで行く君に”っていう曲ができたことで、そこから新しいストーリーのアルバムができるんじゃないかって考えるようになったんですよね。

――そこで見えてきたストーリーというのは?

山口 恋愛のなかで、男の人は名前をつけて保存するけど、女の人は上書きするっていうじゃないですか。女の人のほうが過去のことを振り返らないっていう。その対比を、この6曲のなかで書きたいなと思ったんですね。歌詞はけっこう自分の経験に忠実になってて。“遠くまで行く君に”は別れた女の子がオーストラリアに留学に行っちゃったときに書いた曲なんです。ただ、作り話と現実も入り混じってて、そこから新しい人と恋仲になったり、また昔の恋人と再会したりしながら、夢に向かっていく彼女を応援する物語になってます。

萩原知也(B) (山口の歌詞には)けっこう共感できるんですよ。特に“パラレルストーリー”とか。もしも別れてなかったら、みたいな未来の話ってすごく考えるんですよね。

高橋響(Dr) 歌詞だけ読んでてもおもしろいんですよね。

――萩原くん、高橋くんは、『無限遠点』はどんな作品になったと思いますか?

萩原 今回は曲の世界観を考えながら機材もイチから選んだりしたから、音源としてのクオリティは上がったと思います。“発車標”とか“遠くまで行く君に”っていうゆっくりな曲が増えたこともあって、ベースはシンプルになりましたね。

高橋 よりポップスの路線にいったと思うんですよ。それは前々から諒也が言っていたことでもあるんです。いままではギターロックな感じだったけど、最近はライブでも同期を使うようになって。J-POPっぽい要素を取り入れるようになったから、前作よりもAbsolute areaがこういうバンドみたいな名詞代わりの作品になったと思います。

――よりポップスを目指したいと思うようになったきっかけはあったんですか?

山口 いちばん大きな要因は、前回の“My home town”でポップス寄りの曲ができたことなんです。あの曲はアレンジを依頼してオーケストラっぽくしてもらったんですけど、できたときに「やっぱり自分がやりたいのはJ-POPなんだな」って気づいたんです。で、ああいうアレンジを自分でもやってみたくて、いろいろ雑誌で調べてたら、Mr.Childrenの“Starting Over”のアレンジを打ち込もうみたいな特集があって。そこから勉強をしていくうちに、今回は“少年”以外はオーケストラのアレンジになってますね。

――オーケストラっていうのは、誤解のないように言うと、ストリングスとかピアノみたいな、メンバー以外の楽器を入れてアレンジをしているっていうことですね。

山口 そうですね。あとはパーカッションも入ってます。

高橋 最初は「どうするんだろう?」って思ったんですよ。同期もやったことがなかったし。でも、諒也が持ってきた曲で納得できたから、これなら大丈夫だって思いましたね。

山口 うれしいです(笑)。結局、楽器っていうのは手法のひとつだから、あくまで歌を伝えたいっていうのは、ギターロックをやってたときと変わらないんですよ。だから、単純に僕ができることが増えてきて、表現の幅が広がったのがいまの状態なんだと思います。

(山口が)作曲の途中でその曲をなしにするのは慣れたんですけど。いままでライブでやってた曲も、急にやらなくなるんですよ(高橋)


――さっき少し話が出たけど、山口くんはMr.Childrenの影響を強く受けてるそうですね。

山口 そうなんです。歌詞の世界観に惹かれてるんですよ。中学校のときに恋愛とか進路で悩むときにミスチルの音楽を聴いたんです。人間臭い部分をストレートに歌ってるところに共感したんですよね。

――ミスチルのどの作品が入り口だったんですか?

山口 アルバムで言うと、『SUPERMARKET FANTASY』ですね。あとは『コード・ブルー』の主題歌になった“HANABI”とか。そこから聴き漁っていったら、止まらなくなって。全部アルバムを揃えちゃいましたね。

――たしかに『SUPERMARKET FANTASY』の頃のミスチルって、彼らのディスコグラフィーのなかでも音色が華やかな時期だから、その影響は今作のアレンジに出てますよね。

山口 ああ、それはあると思いますね。

――高橋くん、萩原くんはどんな音楽の影響を受けているんですか?

高橋 僕がドラムをはじめた原点はJ-POPではなくて、70~80年代のロックでしたね。ジャーニー、ボン・ジョヴィ、あとはクイーンとか。自分がいちばん最初に初めてドラムを叩いたのはディープ・パープルだったんです。完全に父親の影響で。たぶん母親のお腹のなかにいた時からずっと聴いてたんだと思います(笑)。

――ある意味、胎教ですね(笑)。

高橋 でも中学生ぐらいになると、友だちと話が合わないので、流行ってるものも聴くようになったりして。洋楽ばっかりが好きっていうわけじゃなくなったんですよ。あと、ミスチルは母親も好きだし、それがいまやってる音楽にもつながってますね。

――萩原くんは?

萩原 聴くぶんにはback numberとかflumpoolが好きなんですけど。ベースを弾くきっかけになったのはRIZEのKenKenさんなんですよね。高校生のときにミクスチャーにハマったのがきっかけで、バンドをやりたいと思うようになったんです。

――なるほど。今回J-POPサウンドを目指していくなかで、いままでと曲の作り方が変わったりはしたんですか?

山口 明らかに違いました。前作は歌詞も曲もできてないコードだけの状態からバンドで曲を作ったんですけど、この作品からは、自分でデモを完成させちゃって、そこから3人でアレンジしていくっていう進行になったんです。

高橋 この方法になってから曲作りのスピードが上がったんですよね。

萩原 そうだね。

山口 いままでの作り方だと、2番ぐらいまで出来上がっても、結局僕が気に入らなくてボツにすることも多かったんですよ。自分が気に入らないと、演奏したくなくて。

高橋 だから大変なんですよ(笑)。

山口 それで自分が納得できるものを完成させるためにデモを作って、僕がイメージを固めたあとに、メンバーと再考することにしたんですよね。

――山口くんって、けっこう頑固なのかな?

山口 頑固ですね。めちゃめちゃ頑固です(笑)。

萩原 うんうん。

高橋 本当に頑固だよね。もはや作曲の途中でその曲をなしにするのは慣れたんですけど。いままでライブでやってきた曲も、急にやらなくなるんですよ。

山口 いや、それはだいぶ抑えながらやってるよ。メンバーも作った曲を好きになるじゃないですか。だから、それを汲み取ってやってたんですけど……。

萩原 無理してたのか(笑)!?

高橋 俺らのためにやってくれてたのか(笑)。

山口 いやいや! それがある日を境にやらなくなるっていう。

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