Psycho le Cémuのボーカル・DAISHIを中心に、2012年に結成されたロックンロールバンド・SiXX。フィジカルリリースとしては初のアルバム『ROLLIN’ LIFE』は、まさにSiXXがライブという現場で活動してきた7年をギュッと詰め込んだ、超濃厚な1枚だ。演奏し続けて育ててきた楽曲に加え、アルバムの多彩さを引き出しているのが、JUON(FUZZY CONTROL)、ミヤ(MUCC)、PABLO(Pay money To my Pain/POLPO)、加藤ひさし(THE COLLECTORS)という個性派アーティストをプロデューサーに迎えて制作された楽曲たち。その個性を全力で迎え撃って新境地を開拓したぶんだけ、核であるサックス×古き良きロックンロールというスタイルの美学、そしてバンドで夢を見るというロマンが際立って響いてくる。この「ファーストアルバム」について、刺激的な制作秘話と、ブレない核を訊いた。
インタビュー=後藤寛子
シド・ヴィシャスみたいなサックス吹きがいたらメンバーに入れたいって半分冗談で言ってたら、おるよって(DAISHI)
――SiXXはDAISHIさんが始めたThe ROMEOというバンドを母体にして始まったということですが、正式メンバーにサックスがいるっていうのは大きい特徴ですよね。
DAISHI(Vo) (レイジは)The ROMEOから手伝ってもらってたんです。The ROMEOの時は、リーゼントに革ジャンみたいな結構コテコテの感じやったんで、俺の言い方としては、シド・ヴィシャスみたいなサックス吹きいるんやったらメンバーに入れたいけど、そんなおるかい!って半分冗談で言ってたら、おるよって紹介されて、ポンってこのカッコでレイジくんが来て。ええー! すぐ入って!っていう(笑)。
レイジ(Saxophone) で、そんなやつが音大出だったっていうね。
DAISHI そう(笑)。
――じゃあバンドに入る前からそういうスタイルだったんですね。
レイジ そうなんですよ。ずっとジャズとかやってたんですけど、大学入る前からこんなだったんで、音大の中ではわりと異端児だったんです(笑)。
DAISHI なかなかいないですよね。見た目も完全にジャズの人だったら一緒にやってないです。おもしろいのが、この見た目やったら、リハとかでも「いいからもっと暴れろよ」とか言いそうじゃないですか。でも音大出やから、めちゃめちゃ細かいんですよ(笑)。真逆の人ですね。
――はははは。レイジさんはもともとパンクも好きだったんですか?
レイジ 大学浪人中にいろいろ本を読んでて、たまたまセックス・ピストルズを知って、やっぱりクラシックの世界とは全然違うので、衝撃を受けて。そこから急にパンクにハマって、もちろんピストルズも聴きましたし、ザ・フーとかいろいろ聴きました。これしかない!と思って、服をビリビリに破き、安全ピン刺してみたりして。でも、そこまでのめり込まずに、あくまで自分の楽器のサックスが生きるジャズとか、親の影響でザ・ビートルズがすごく好きだったりしたので、ある意味ファッションパンクなんですけど(笑)。
――でも、この格好じゃなかったらSiXXに入ることはなかったわけで。
DAISHI 最終的にSiXXと出会って、自分のやってる楽器とそういう音楽が合う人生が来るっていうのがおもしろいよね。なんか、僕も同じルートにずっとおったらあかんなと思って、SiXXを作ったところがあるんですよ。The ROMEOは、リアル『クローズ』みたいなバンドマンとよくやってて、そのコテコテ感も好きなんですけど、でももうちょっと広い世間を見て、音楽で勝負してみたいなと思い始めたのも、SiXXの結成のいきさつかもしれないですね。
――その方針が、このアルバムに集大成として詰まってる感じがします。1曲目の“ROLLIN’ LIFE”から2曲目“鳴り止まない愛”の時点で曲の雰囲気がガラっと変わって驚きました。
DAISHI “鳴り止まない愛”が、たしかに一番違うというか、かなり後半に作りましたね。これはラブソングを書こうと思って作ったんですよ。ラブソングを書こうかってならないと書けなかったから。大助さんに怒られたんですよ、DAISHIの歌詞には、失恋とか片思いの歌詞がひとつもないって。だから心を中学生くらいの頃に戻して、この歌詞は結構メンバーと一緒に考えたんです。テーマは片思いで(笑)。“ROLLIN’ LIFE”は逆に初期からある曲で、初期はそれこそこっち系の曲ばっかり書いてたんですね。メロディ的には“鳴り止まない愛”とか“つないだその手”とか“I LIKE YOU”のほうが結構メロディアスですけど、まあ僕らっていったら“ROLLIN’ LIFE”かなって。代表曲として、新たにアレンジして、MVも撮りました。
――MVもドラマ仕立てでいいですよね。監督が品川ヒロシさんということで。
DAISHI もともと、僕が品川さんとお酒飲む機会が結構あったりしたんです。品川さんも、SiXXいいねえ、俺MV撮るよーみたいな感じで言ってくれて。だったらこの曲が品川さんと合うかなと思ったんですよね。『ドロップ』とか、『漫才ギャング』とか、やっぱりちょっと不良の匂いがするというか、泥臭い感じがあるから。それがマッチしましたね。品川さんもすごい気に入ってくれて。
PABLOくんのプロデュースした曲をSiXXっぽくできたら、もう誰とでもできると思った(笑)(DAISHI)
――さらにアルバムの幅を広げているのが、プロデューサーが入った楽曲だと思うんですけど。キャラクターの濃い方ばっかりで。
DAISHI そうですね(笑)。
――それぞれプロデューサーが入ってる曲は、結構委ねちゃってますよね。
菅大助(G) 100%委ねましたね、基本的には。レコーディングも一緒にやって。
DAISHI じゃないと頼む意味がないし。そのなかで、音色とか歌で、SiXXっぽいところとのちょうど間くらいを落としどころにできたらいいなって話はしましたね。
――“つないだその手”は、オリジナルバージョンのMVが発表されている曲だけに、JUONさんが入ってここまで広げられるのかっていう変化が象徴的でした。
DAISHI いやあ、ここまで変えてくるかあって(笑)。でもめっちゃかっこええなあって思いましたよ。JUONくんは、FUZZY CONTROLとThe ROMEOで一緒にライブとかやってたんです。彼が天才なのはすごく知ってたんで、ぜひお願いしたいなあって。
菅 最初にもらったデモのほうが、もっとヘビーロックというか、ラウドな感じだったんです。ギターの立場でいうと、これを全然違うものとしてというよりも、アルバムのほかの曲たちのカラーとどれだけ馴染ませて、ひとつのバリエーションとして成り立たせるか、すごく悩みましたね。わりと僕、ギターにしろ、アンプにしろビンテージ楽器ばっかり使ってるんですよ。なので、このアレンジをビンテージでやってみたらどうだろう、みたいな。
――たしかに、アレンジだけ聴くとかなりゴリっとしてますし、冒頭のコーラスも今っぽい感じなんですけど、ギターの音とかでロックンロールになってますよね。
DAISHI ドラムの音色もそうですよね。あんまりそんなヘビーじゃない音作りにして。
菅 そういう楽曲にサックスが入るのも少ないと思うんで、それでさらにSiXXの音にできたなあと思います。
――MUCCのミヤさんプロデュースの“スザンナの純潔”は、思いっきり歌謡曲に振っていて、まったく違う印象の曲ですね。
DAISHI ミヤくんが唯一、曲を選ばせてほしいって言ってて。全部聴かせて、ミヤくんがこの曲でやりたいって選んでくれました。
――この歌謡曲っぽさっていうのは、やってみていかがでした?
DAISHI むしろミヤくんが僕らに寄せてくれたと思います。ちょっと昔のビンテージ楽器ばっかり使ってるような古いロックンロールの、ざらざらした感じの音源を聴かせてくれて。艶っぽいけどざらついてるような音にしたいですって、そこから入ったんで、すごいわかりやすかった。
――自分たちだけでやってると、ここまで寄せたアレンジにはしないですよね。
菅 そうですね、しないですねえ、はい。
雄飛(B) でも、結果的にすごいSiXXっぽい感じになったから良かったなあって思いましたね。
DAISHI そうね。俺は次の“LIAR GAME”のPABLOくんを制せれたら――この曲をSiXXっぽくできたら、もう誰とでもできると思ったんですよ(笑)。
――(笑)。今度はラウドに思いっきり振り切った曲で。
DAISHI まあ、そうくるのは期待して頼んでますから。P.T.P.(Pay money To my Pain)大好きでしたし、あれをSiXXの音でやるとどうなるのかっていう化学変化をぜひ見てみたいと思ったんで。がっつりいっちゃっていいの?って聞かれて、むしろそれで頼んでますって答えて。
菅 がっつりいった結果、ちょっと戻してくれってうちのほうから(笑)。で、これもまさにJUONと同じで、音作りを変えようと。PABLOくんの使ってるヴィンテージ機材と、僕が使ってたのが結構似てたので、この音いいねってギタリスト同士の感じで盛り上がったりして。音をどんどん作っていって、結果僕もPABLOくんも納得する、ビンテージの音が録音できたんですよね。
DAISHI PABLOくんが、ずっと大助さんの音がいいって言ってて。どうやって出すんですかってずっと見てましたよね、機材を。
菅 そうなんですよ、お互いに。これは何年のあれを使ってて、みたいなマニアックな話を。
DAISHI 女子が聞いたら吐くやつですよ(笑)。
菅 あと、デモはもっとギターを重ねてたんで、それをサックスに置き換えたりしたんですよね。
雄飛 サックス、レコーディング現場で考えましたもんね。
――メロディの裏で鳴ってるサックスがいいですよね。まさにギターみたいな入り方で。
DAISHI そうですね。ギターとサックスのソロバトルもすごい好きです。
レイジ でも、レコーディングは夢中で、何やってたか全然覚えてないんですよ。
DAISHI だってそういう感じでやらされてたもん。レコーディングが結構長かった。何回もテイクやらされてたから。
レイジ もっとぐちゃぐちゃな、ラフな感じで、みたいな。
菅 オーダーがそういう感じなんですよ、もっと崩すとか。そういうチャレンジもあって、結果SiXXっぽくできたのかなと思いますね。
――投げられた球を受け止めて返すことで、SiXXっぽさとは何かっていうが見えてくるっていうか。
菅 そうですね。逆に見えてきました。