ユアネスの3rd EP『BE ALL LIE』は、メッセージ性の強いタイトルが表している通り、2nd EP『ES』のテーマであった「嘘」に引き続き焦点をあてている。これまでの作品と同様、1曲目にはポエトリーリーディング曲“心の在り処”が置かれ、ラストのエモーショナルなミドルバラード“ヘリオトロープ”へバトンが渡され、孤独や人と人とのコミュニケーションを描いた物語が紡がれる。テレビアニメ『イエスタデイをうたって』の主題歌“籠の中に鳥”や、坂本真綾への提供曲である『Fate/Grand Order』第2部後期オープニング主題歌の“躍動”により、広く注目を集めるユアネスのボーカル&ギターの黒川侑司とコンポーザーであるギターの古閑翔平にインタビューした。
インタビュー=小松香里
自分の歌うべきものを目指すというより、作品としての濃度を濃くしたい(黒川)
――1年前にリリースされた2nd EP『ES』から引き続き、『BE ALL LIE』は「嘘」がキーワードになっています。この2作品は対になっているそうですが、どういう構想があったんですか?古閑翔平(G) 僕は死生観を感じることが多いタイプの人間なので、自分の心の表現のひとつとして、まず自我と深く向き合った『ES』を作ったんです。『BE ALL LIE』は、連作という構想は前からありましたけど、実際曲ができたのは最近なんですね。時期によって、自分がどういうアレンジの曲にハマるかは結構違うので。いろんな好きな曲に影響されたり、勉強する中で、ユアネスにこういうことを取り入れてみようって思って作るのが、基本的な僕の制作スタイルで。歌詞については、『ES』っていう作品を時間をおいて改めて自分の中で消化して、『BE ALL LIE』の中身がどんどんできていった感じです。
――『BE ALL LIE』はこれまでの作品と同様、ポエトリーリーディングからスタートします。そこにはユアネスとしてどういう意思があるんですか?
古閑 ひとつの作品としてCDを聴いてもらいたいっていうのがあって。サブスクが普及していく中で、自分でもCDを買わなくなってきてると実感しますし。その中で、どういうCDがいいかって考えると、曲の流れやアートワークだったり、CD1枚に対しての作りこみをちゃんとしたいって思って。ポエトリーをやってる人もあまり数が多くないので、ユアネスの表現を押し出す意味で毎回1曲目に入れています。
――そのポエトリーは2曲目の“二人静”の冒頭にも入っていて。しかも1曲目の“心の在り処”のナレーションも入っているという構成になっています。
古閑 元々ナレーションは録っていて、“二人静”をレコーディングした時に、「混ぜてみてもおもしろいんじゃないかな」って思ってやってみたんですね。この“二人静”を聴いたあと、また1曲目の“心の在り処”を聴くと、二度美味しいというか。ひとつの作品に対してのイメージをふたつつけることができるかなと思ったので、入れてみました。
――黒川さんはボーカルとして、別の声でナレーションが入るということについてどう考えていますか?
黒川侑司(Vo・G) ナレーションが入ることで自分の歌が薄れちゃうかもっていう不安とかは、全くないんですよね。このバンドで自分の歌うべきものを目指したいという感覚よりも、作品としての濃度を濃くしたいっていう気持ちのほうが強いんです。楽曲を作っていないボーカルだからこその感覚なのかもしれないですけど。なので、作品を作り上げるうえで歌声を貸してるっていう感覚が近いかもしれないですね。
どんな人でもとらえやすいような歌詞にしたかった(古閑)
――3曲目のタイトル曲“BE ALL LIE”は、一転してデジタルなアレンジが多用されていて、サビ前で転調したり、展開がおもしろい曲ですが、どんなイメージだったんですか?古閑 この曲を作った時はまさに僕が転調にすごくハマってて(笑)。各パート以外の楽器もどんどん入れていきたいって思って、同期の音だったりエレクトリックのドラムの音、ストリングスの音、ピアノ、もうそういうのを隔てなくがっつり入れていこうと思ってやってみたんです。
――「嘘」について歌いながらも、かなりダークで断定的な言葉が並んでいますよね。すごく強い言葉だけど、抽象的で聴き手それぞれに委ねられるようなものになっているのは、意図したことですか?
古閑 今回の曲に限っては、どんな人でもとらえやすいような歌詞にしたかったんです。物語を描くっていうよりは、心に浮かんでくる言葉を選んだんです。それで、ちょっと強めの、重くのしかかるような歌詞になったなと思って。
黒川 僕としては、悪い意味じゃなくて、今までの曲の中でいちばんダークで攻撃的な詞だと思っています。嘘にもいろんな種類の嘘がありますよね。どうしても仕方がない嘘だったり、追い込まれて嘘をつかざるを得ない状況もある。人それぞれの嘘がきっとあるなって思っていて。そういう葛藤も含まれた、インパクトのある歌詞になったんじゃないのかなと個人的に解釈しています。そういう部分は歌でも表現したいと思ったので、そこを意識して歌ったつもりです。
古閑 もちろん自分自身につく嘘もあるんですけど、大事な人に対しての嘘も含まれてますね。むしろ、それに対しての想いがいちばん強いかもしれません。実際は忘れてほしくないんだけど、「忘れてもいいよ」っていう嘘をついたところから話が広がる発想があったり。そういうところから曲を発展させていきました。