岐阜発のスリーピースバンド・KUZIRA。末武竜之介(Vo・G)のハイトーンボイスとキャッチーなメロディ、ひと癖あるアレンジで練り上げた彼らの楽曲は、ライブでの威力はもちろん、再生した瞬間に心にズバッと刺さる即効性抜群だ。その実力で、結成1年でリリースされたデビューミニアルバム『Deep Down』がタワレコメンに選出、翌2019年にはKen Yokoyama「Still Age Tour Ⅱ」に参加するなど、異例のスピードで大躍進を遂げている。さらなる飛躍が期待された2020年、一時はコロナ禍によって立ち止まらざるを得なかったわけだが、それでもKUZIRAのパンク魂は消えていない。今年2021年は新体制としてのスタートを切り、さらに彼らのルーツであるPIZZA OF DEATHから1stフルアルバム『Superspin』のリリースが決定! 脈々と続くメロディックパンクの血を継承しながら、その最前線を開拓しようとしている彼らの初インタビューをお届けする。
インタビュー=後藤寛子
Hi-STANDARD、BBQ CHICKENS、WANIMAとかのコピーがバンドを始めるきっかけだったので、最初はドッキリかと思いました(末武)
――Ken Yokoyamaのツアーへの参加と、PIZZA OF DEATHのコンピレーションアルバムへの参加があって、ついにPIZZA OF DEATHからアルバムがリリースされるわけですが、PIZZA OF DEATHはみなさんにとってルーツにあたる感じですか?末武竜之介(Vo・G) そうですね。僕たち、もともと大学の軽音部のコピーバンドだったんですけど、まさにHi-STANDARD、BBQ CHICKENS、WANIMAとかのコピーをしていて。それがバンドを始めるきっかけだったので、最初はドッキリかと思いましたね。
熊野和也(B・Vo) 今、事務所でインタビュー受けてるっていう、この状態でも実感がないです(笑)。大学の先輩がHi-STANDARDとかBBQ CHICKENSのコピーバンドをしていたんですが、すごい下手くそで……歌も音程もひとつも合わないみたいな感じだったんですけど、めちゃくちゃかっこよかったんですよ。それでスリーピースに憧れを抱いて始めたんです。軽音部の仲間とフェスに遊びに行ったりもして、HEY-SMITHの猪狩(秀平)さんが「HAZIKETEMAZARE」で言っていた「バンドやろうぜ」って言葉にすごい背中を押されて、それがオリジナル曲を作るきっかけになりました。
末武 「ハジマザ」のDVDも一緒に観たよね。
熊野 そうそう。だから、当時は口に出すのも恥ずかしい夢だったようなことが叶ってるというか、今「ハジマザ」や「京都大作戦」に呼んでもらえるようになってるっていうのは、すごいなと思います。
――そんな中で、去年はライブがなかなかできなかったり、メンバー脱退もあったりしましたが、ちょっと立ち止まってしまった感じはありましたか。
熊野 そうですね。ライブも無理だし、スタジオに一緒に入れないから曲作りができないってことも、脱退の要因になったと思うので。もともと去年の9月にPIZZAからの1枚目を出す予定だったのが先延ばしになってしまって、やっぱり精神的に食らったものはあったと思います。
末武 ライブを年間100本以上していたし、ライブをすることによって、作曲のモチベーションや生き甲斐を感じていたので。2020年は、曲も作れなくなっちゃった期間がありました。「生きてる価値ないのかな」、「なんのために生きてるんだろう」ってくらい落ち込んじゃってましたね。
――そこからシャー:Dさんが加入して、また新たに動き出したと。加入の経緯は?
シャー:D(Dr) もともと僕も別でバンドをやっていて、KUZIRAとツアーを回ったり、交流があったんです。KUZIRAのドラムが抜けるタイミングで、僕も自分がやってたバンドの活動が止まる流れになって、お互いの状況を知ってた先輩が仲介役になって連絡を取ってくれて。それで、1回スタジオに入ったんですけど、その時に加入が決まりました。僕はもう、入るつもりで行ったんですけど。
末武 僕も入ってほしいと思ってました(笑)。シャー:Dくんが入って、なんかメンバーの仲もよくなりましたね。
熊野 前は、大学時代からの付き合いだったので、もうメンバー同士で喋ることもなくなってきてたんです。
末武 距離が近すぎて、お互いLINEも知らないみたいな関係性になっちゃってたんで。だから今、雰囲気はめっちゃいいです。
楽曲はメロディが命です。いや、命より大事なものです(笑)(末武)
――メロディックパンクがベースにありつつ、楽曲はコンパクトにまとまっているんですけど、よく聴くといろんな要素や展開がありますよね。末武 僕が飽き性なので、同じような曲だとつまんないというか。たとえばスカが入ってきたり、そういう曲のほうが飽きなくて好きですね。自分の好きなジャンルがいろいろ入っていて、メロディックパンクだけじゃないっていうのが僕ららしいと思うので。作る時は削って削ってという感じで、付け足すことはあんまりしてないです。シンプルに、余分なものを取っていったら短くなっちゃったみたいな。ライブでも短い曲のほうがいっぱいできるし、ポンポン曲をやっていくっていうのが僕らのスタイルです。なんかちょっと足りないくらいのほうが、次も聴きたくなるというか、「ああ、もうちょっとほしかった」ってなるじゃないですか。で、「ほしかったやろ」っていう。
――まんまとそういう気持ちになってました。英語詞もこだわりですか?
末武 そこはこだわってます。日本語はやりたくないです。おじいちゃんには、「英語はわからないから日本語でやれ」とか、「ダンス踊ったほうが売れる」とか言われるんですけど……。
熊野 ははははは!
末武 そうやって考えてくれるんですけど、「僕は英語でやりたいし、テレビに出たくてやってるわけじゃないから、わかってね」って、何回も言ってます。おじいちゃん、忘れちゃうから。
――世間的にはそういう印象ですもんね。だからこそ、やっぱりパンクバンドをするんだって思いがより強まりますよね。
末武 そうですね。リスナーとしても、ずっと英語でやってたバンドが日本語になると「ずっと英語だったらよかったのになあ」って想いがあったし。僕はこだわろうと。
熊野 グリーン・デイと対バンしたいから、日本語はダメなんだよな。
末武 そうですね!
シャー:D 目的がそこにある(笑)。
――なるほど! いい野望ですね。
末武 「日本語でやったほうが…」みたいなレーベルもあると思うんですけど、PIZZA OF DEATHの場合は「まさか日本語ではやらないよね?」くらいの感じなので(笑)、波長が合うなと思いました。だから、言語っていうのはそういう精神的な面の話ですね。
――KUZIRAの場合はすごくメロディが強いので、英語でもとてもポップに聴こえますよね。
末武 ポップさとキャッチーさっていうのは、いちばん大事にしてます。もともと海外のポップパンクだったり、マキシマム ザ ホルモンとかも大好きなんですけど、ホルモンのラウドの部分より、サビのキャッチーさ、ポップでちょっと哀愁のあるメロディに惹かれるんです。結構そこの影響は受けてますね。作曲するのも鼻歌から始まりますし、メロディが命です。いや、命より大事なものです(笑)。
――おふたり的にも、メロディが軸にあるというのは意識していますか。
シャー:D もちろんそうですね。それに合わせてドラムも作っていくので、メロディがいちばん大事だと思ってます。
熊野 (末武は)普段何を考えてるかわからないタイプの人間なんですけど、いいメロディをこれだけ生み出してるんで、たぶん私生活のそういう部分を、メロディセンスに振り切った人間なんだと思います(笑)。天才だと思ってます。
末武 えっ。初めて言われた。
――(笑)。
熊野 できたメロディをデータで送ってくれるんですけど、全部いいから僕は「いいね!」って言うんですよ。そしたら「いいね、しか言わないね」って言われました(笑)。
末武 心配になるんですよ。
シャー:D メロディに関しては何も言ってないもんね。