Da-iCEにとっての2021年は、アルバム『SiX』のロングヒット、そして“CITRUS”の大ヒットから同曲での「日本レコード大賞」受賞と、まさに大躍進の一年となった。大野雄大(Vo・Performer)、花村想太(Vo・Performer)、工藤大輝(Performer)、岩岡徹(Performer)、和田颯(Performer)の5人で表現される歌世界は、作品をリリースするごとに音楽性の広がりを見せ、ダンスパフォーマンスもそれに共鳴するようにアップデートされていった。そんなDa-iCEが、バンドサウンドへのアプローチなど、音楽性の拡充に積極的に取り組み、それが作品として見事に結実したのが新作EP『REVERSi』である。すでに話題となっている多くのタイアップ曲を含むこのEPは、明確にDa-iCEのネクストステージを予感させる充実作。Da-iCEの楽曲制作の核である花村と工藤に、全9曲、そのすべてをじっくり語ってもらった。
インタビュー=杉浦美恵 撮影=草場雄介
よくハイトーンが売りだと言われるんですけど、音色だったりニュアンスで勝負できるアーティストでありたい(花村)
――2021年、Da-iCEにとってはまさに大躍進の一年でしたが、改めてどんな年でした?花村 僕は2021年の年始から、今年の運勢は最悪だよっていろんな番組で言われていたんですよ(笑)。
工藤 言われてたねえ(笑)。
花村 それが、終わってみれば全然そんなことはなくて。もしこれが最悪な一年だったなら、自分の人生はこの先最高だなと(笑)。まあ、その中でも“CITRUS”の存在はすごく大きかったです。
工藤 “CITRUS”が宣伝隊長みたいになってくれて、いろんなところに出ていけたし、年末には嬉しいこともあったしね。
――昨年夏には“Kartell”もリリースされて、Da-iCEの新機軸を見せつつ、それが新作EP『REVERSi』へとつながっていて。
工藤 “Kartell”のリリースが決まった時にはすでに今回のEPを作る前提で、一年を通してのテーマもざっくり決まっていたので、それに沿って制作していったという感じです。僕らとしてはバンドサウンドというか、バンドアレンジをイメージした曲をたくさん作っていこうと、ちょうど1年前の年始に話していたんですよね。
――なるほど。確かに今作はバンドアレンジをイメージさせる楽曲が多くて、かつ、バラエティに富んだ作品になっています。まず1曲目が“DOSE”。
工藤 これは久々に想太とふたりでスタジオに入って一緒に作ったんですけど。何年ぶりよ?
花村 4年ぶりくらいじゃない?
工藤 結構久々だったんですけど、もう長い付き合いで、やりたいことも明確だったし、短時間でできあがりました。楽しかったです。久々にダンスボーカルらしいというか、今回は、他の曲がダンスボーカルのイメージとかけ離れているものが多いので、その枠もひとつは残しておきたいねというところで。
花村 ハイトーンを使わないというのを意識しましたね。ハイトーンのダンサブルな楽曲は、Da-iCEはもうめちゃくちゃたくさん持っているので。よくハイトーンが売りだと言われるんですけど、音色だったりニュアンスで勝負できるアーティストでありたいという想いがあって、低めのキーで作りたいなと。
――その次の“Clap and Clap”は花村さんが作曲を手がけていますが、これはまさに、ライブでの盛り上がりが想像できるような、バンド感が強い曲ですね。
花村 これは最初からテーマが決まっていて。夏フェスでみんなで盛り上がれる楽曲っていうテーマで作っていったんですけど、そういえば我々には「ハンドクラップ」をテーマにした曲がひとつもないなと。今、客席では声が出せないご時世だから、クラップで盛り上がれる楽曲があるといいよなって思って。
――エンディングの盛り上がりも含めて楽しい曲になりましたね。
工藤 速攻でライブのイメージが湧く曲ですよね。夏フェスでやった時に映えるだろうなあって。バンド映えももちろんするし、バンドじゃなかったとしても、ライブの新たな定番になりそうな曲だと思う。
僕はDa-iCEの「暑苦しい担当」なので(笑)。結構グッといく熱血タイプなんです(花村)
――続いて“SWITCH”は工藤さんが作詞を手がけた、ドラマ『ユーチューバーに娘はやらん!』の主題歌。ドラマの世界観に寄り添いながら、どこかダークな雰囲気が魅力的な曲です。工藤 この手の曲はポップすぎるとかわいくなりすぎてしまうので。当初はもうちょっとセクシーな感じでも合うかなと思ってたんですけど、ドラマの企画書を拝見した時にちょっと印象と違ったので、その間を取るような感じで考えていきました。めちゃめちゃ面白かったです。僕、(企画・原作の)秋元康さん大好きなので。だからすぐ曲の主人公たちのイメージが決まって、ほんと早かったんですよ。一日もかかってないです、このテーマをもらってから。
――それだけイメージが明確に浮かんだということ?
工藤 そうですね。めちゃくちゃテーマが面白かったので。僕、縛りがあると早いんですけど、このドラマの縛りというか、設定が面白すぎて。YouTuberとテレビ局員という登場人物たちのキャラクターもすごく面白いし。なので、YouTuberがよく使いそうな単語とかテレビ局員がよく使いそうな言葉を交互に入れたり、主人公が女性なので、その目線も入れたりしながら作りました。
花村 歌ってみるとめちゃめちゃ爽快なポップチューンなんです。でも、聴いた印象より歌うのは難しいですね。細かな小技を効かせないと立体感が生まれない楽曲なんですよ。だからすごく楽しかったです。最初、デモで大輝くんが歌ったやつと歌詞が送られてきて、車を運転しながら聴いたんですけど、「天才かよ」って、思わずつぶやきましたね(笑)。
工藤 ありがたいねえ(笑)。
花村 こういう職業作家みたいに完璧な歌詞を書ける人がグループ内にいるっていうのは、めちゃくちゃ強みだなって思いましたね。
――言葉のテンポもすごくいいですよね。で、次が“Break out”。これはアニメ『オリエント』のオープニングテーマとして、Natural Lag(花村のバンドプロジェクト)の福田智樹さんと共作したロックチューンで。
花村 「爽快感のあるロックチューンを」というお題だったので、智くん(福田)とギターがメインの曲を作ろうというところから始まって。当初はごりごりのロックチューンで。でも、和を取り入れたロックチューンにしたくて、TAKAROTさんにアレンジしてもらいました。
――歌詞はやはりアニメ作品のテーマに寄せて?
花村 原作を読ませていただいて、すごく共感できたんですよね。ほんとは自分たちのほうが正義なのに、多数決で世界中の人から悪だと言われてしまうようなことが、今の時代はすごく多いなと感じていて。自分自身も15歳の頃に、「歌手を目指す」って言ったら、周りから「無理だ」って笑われて孤独感に陥ったことがありました。でも孤独にならなきゃ夢は叶わないっていう想いもあったので、そこに『オリエント』の世界観を詰め込んで歌詞を書いていったんです。
――やはり。タイアップ曲としてのテーマがしっかり描かれているのはもちろんのこと、花村さんの熱い想いがすごく滲み出ている気がして。
花村 僕はDa-iCEの「暑苦しい担当」なので(笑)。結構グッといく熱血タイプなんです。
――そして次が“Sweet Day”。『SiX』に内澤崇仁(androp)さんが手がけた“Love Song”という楽曲がありますが、その時一緒に渡されたのが、この“Sweet Day”だったということで。
工藤 内澤さんと最初に打ち合わせをした時に、僕はいろんなことをお伝えしたんですけど、それを踏まえて「こっち(“Sweet Day”)のほうが、よりDa-iCEらしいというか、リファレンスに近いと思うんだよね」って内澤さんはおっしゃっていて。だから『SiX』の時の流れでは“Love Song”だったんですけど、個人的には“Sweet Day”のほうがよりDa-iCEらしい、踊ることが想定できるような曲になってるかなと思います。でもその二軸で2曲も作ってくださるという、内澤さんの懐の深さには感謝しかないです。
――花村さんと大野さん、ふたりのボーカルの更新をすごく感じる曲でもあって。
花村 いやほんとに。このEPを頭から聴いていく中で、ここにきて、「あれ? これ同じ人かな」って思うくらい、声色とか空気感が違うんですよね。ほんとすごく面白い。ツインボーカルの声、優しさが際立つ楽曲だと思います。