2001年生まれ。注目の新しい才能、荒巻勇仁。オルタナティブなセンスで紡ぐ令和ポップ以降の音世界――新曲“未成人”とその存在をひもとく

2001年生まれ。注目の新しい才能、荒巻勇仁。オルタナティブなセンスで紡ぐ令和ポップ以降の音世界――新曲“未成人”とその存在をひもとく

新しい才能との出会いほどワクワクすることはない。2001年3月19日生まれ、福井県出身のシンガーソングライター、荒巻勇仁(あらまきゆうじん)。流麗なる言葉運び、優しく儚く響き渡るメロディの美しさ。時代が醸し出すせつなさを纏った唯一無二の表現者だ。

そのヒストリーは、少々変わっている。実は、生まれ育った福井県で10代の頃からシンガーとして有名だった経歴を持つ。オリジナル楽曲も制作し、アマチュアながら地元の1000人を超えるホールでライブを行えるほどの人気。実際、「歌うま高校生」として名を馳せ、YouTubeでは文化祭での歌唱シーンが大きくバズった。そのことで有頂天になったこともあったという。

シンプルに等身大だった、それまでの表現活動。しかしながら、気のおけない友人からのアドバイスにハッとさせられたという。「お前の(ストレートで等身大の)音楽、ダサくない?」と。その瞬間ふと我に返り、自らの創作魂に火がついた。

「自分とは何者か?」――そう問いかけながら、魂がすり減るほどに葛藤した創作活動。その羅針盤は、誰も手に入れていないもの。そこで未知なる表現を目指した。早くから成功の種を経験していた荒巻勇仁は、何者かになることを強いられる人生の虚無感を知っていた。令和を生きる若者につきまとう呪いの言葉=「努力は報われる」 「頑張ればよくなる」。それでも、高みを目指して新たな一歩を踏み出した。このことは、彼の思想の表れとして表現活動の大きな深みとなっている。

2022年4月1日にリリースした自主制作アルバム『Re:paint』によって、荒巻勇仁は生まれ変わった。オルタナティブなセンスで紡ぐ令和ポップ以降の音世界。自己と向き合う葛藤から生まれた真摯な言葉たち。生きる道を確信し、その地図を塗り変えたのである。こうして、自らを見つめ直したことで誕生した赤裸々なる自己表現のポップアンセム“天才になれなかったので”(2022年11月5日リリース)は、TikTokを通じて新しいリスナーへと届いた。現在、総再生回数は1億回を超えている。

荒巻勇仁の目標とする夢は大きい。東京ドーム級のライブを超えるレベルだという。2023年の春、心機一転、東京にその活動の場を移した。だがしかし、答えなんて、そう簡単に目の前に転がってはいないことも彼は知っている。大切なのは実行を伴う行動力なのである。その考えは、幼少期から培われた人間力の表れでもあるだろう。繰り返すが、目標は大きい。日本中に、そして世界へと自らが生み出した作品を轟かせることが、彼の目指す未来だ。もしあなたがまだ荒巻勇仁を体験していないならば、まずは2023年8月30日にリリースされた最新作“未成人”を耳にしてほしい。


やわらかにはねるビートに《子どもというには大人で/大人というには子どもな僕ら/死んでいないだけの命さ/決して明るくはない未来に/希望を持って生きろと言う/大人っぽい人達》と歌い、年を重ねても変わらない心の内側に対する不安や矛盾への葛藤を描く。しかし、《諦めてしまおう/良い子でいると/損するから》と自虐しながらも、どこかしら慰めを与えてくれる表現の深み。行間の想いや心情の裏側が垣間見えたことに心を鷲掴みにされたのである。時代との呼応、その鏡となる荒巻勇仁ならではのポップミュージック観だ。

あなたにも、時代が変わる音が聴こえないだろうか?

2010年代、メインストリームを塗り替えたネットカルチャーの躍進。ストリーミング文化の浸透。そして、昭和、平成的カルチャーを背負っていた音楽業界に大きな変化が生まれたパンデミック以降の2020 年代への変貌。世の中のルール、仕組み、構造がまったく変わったのである。そんな時代を切り開く、新たな表現者の在り方。ジャンルや時代、音楽性を超えていくストリーミング世代の“令和ポップ革命”。そのネクストを指し示すのは、荒巻勇仁だ 。(ふくりゅう)

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