【インタビュー】『18祭』の“呼び声”、初のオーケストラ曲“軌跡”、そしてドームツアー──すべてを語るVaundyの最新ロングインタビュー

【インタビュー】『18祭』の“呼び声”、初のオーケストラ曲“軌跡”、そしてドームツアー──すべてを語るVaundyの最新ロングインタビュー

(“軌跡”は)自然が言っている言葉が大事なんだろうなって。木がしなる音とか、目をつぶって崖の上にいる感覚とか、ふわーっと吹いた風を音楽にするイメージ

──Vaundyはたくさんタイアップのオファーを受けているけど、曲を書く時は必ず「このオファーはなんなのか」という前提だったり、俯瞰して見た時の意味みたいなことから考え始めるんだね。

ああ、確かに。毎回その企画ごとに未来を見る感覚で曲を作ってるのかもしれない──この曲が聴かれた時にどう喜ばれるかとか、どうなってる状態がいちばんかっこいいのかを妄想しながら。“呼び声”でも、♪どんな時も~って最後に歌ったらどんなやつでも泣くよな、って想像しながら作りましたね。みんな、実際に泣いてましたし。コード進行の設計とか細かい仕掛けはあるけど、大前提としてはここでこうなったら気持ちいい、みたいなことを妄想して、それにパーツをくっつけていくというか。タイアップの時は特にそういうことをしてます。原作者やスタッフ陣が何をやりたいかとか、どういう曲になってたらお客さんや僕の周りにいる人たちがワクワクするんだろうって妄想するところから毎回曲を作っていって、そのために必要なパーツを僕が世界中から集めてくるイメージです。

──なるほどね。次に聞きたいのは、TBS『世界遺産』のテーマ曲“軌跡”。これはどういうスタンスで作った曲ですか?

この曲はめちゃめちゃ遊びましたね。僕、映画好きって言いながら、SFばかり観てて知らない映画がいっぱいあったので、2025年は100本近く映画を観たんですよ。音楽と映画ってすごく近くて──さっき音楽が空気のようなものになっているという話をしたじゃないですか。それはこの10年くらいの話だけど、映画音楽では50年前からやってるんですよ。で、『世界遺産』の曲は俺が歌わなくてよかったから、オーケストラでやろうって思って。オーケストレーションは空気を作る行為だと思ってて、息遣いとか風とか空気を尊重する音楽の中に主旋律を入れる感覚を試したいなと思って、ド直球の曲をやりました。

──そういう、空気を作るような曲の作り方は初めてだよね。

初めてです。だからめっちゃ難しかったですね。アビー・ロード・スタジオの2スタで録らせてもらって──僕、ジョン・ウィリアムズ(アメリカの作曲家。『E.T.』や『スター・ウォーズ』を始めとする多くの映画音楽を作曲している)が大好きなのでジョン・ウィリアムズが録ってた1スタにも行ったんですけど、マジでデカかった。ただ、やれることとしては日本とそんなに変わらなくて。でも、人と場所、味が違うから、空気も違って──それはスピリチュアル的な意味だけじゃなくて、普通に空気としても違う。そういういろんな意味があったし、ずっと残ってるスタジオで録れたので、言葉通りクラシカルな体験をしたなと思います。

──ソングライターとしては、『世界遺産』のテーマにどんな曲を書こうと思ったの?

『E.T.』みたいな曲です(笑)。ジョン・ウィリアムズを俺に憑依させて作ろうと純粋に思って。あとは、久石譲さんとか坂本龍一さんとかですね。ポップスと何が違うかというと、歌詞がないことがいちばんデカいかもしれないなって。僕、ほんとに歌詞を書くのが苦手だから、ただ曲を作れるのがほんとに楽しかったです。“軌跡”を聴いてもらえば、残してきた何かを拾い集める行為なんだなということが、なんとなくわかってもらえると思ったし、それだけ伝われば十分です。歌詞はいらない。

──じゃあ、『世界遺産』のテーマ的なイメージや設定はあって、それを楽曲に落とし込んでるんだね。

はい。僕のイメージだと世界遺産がある場所は、大体広い場所なんですよ。あとは、人が立ち入らない場所。だから自然が言っている言葉みたいなのが大事なんだろうなという気がして。草の揺らぎとか、木がしなる音とか、目をつぶって崖の上にいる感覚とか、ふわーっと吹いた風を音楽にするイメージでした。

──なるほどね。この曲はポップソングじゃないけど、仮に言わせてもらうと──Aメロ的な部分からBメロ的な部分にきて、やがてサビ的な展開があって、後半はそのサビが変化しながら展開していくような動きの曲で。でも、そのAメロ的な部分もBメロ的な部分も全部、最後に出てくる主題の──。

伏線を置いていく行為。

──そう。伏線によって主題がだんだん見えてきて、その主題も変化しながらどんどん盛り上がっていくみたいな作りになってるよね。

そうですね。それを視覚化するとどういう絵になるかというと、地面を見てて、そこには雑草が生えてて、なんだろう?と思って引いて見ると、ここは草原だったのかって気づいて。探索しているうちに暗くなってきて、これは草原じゃなくて森の一部だったんだ、こんなところにいたら大変だってなって、雨が降ってきて、あ、ここは樹海だったんだってわかる──そういう場面設定を流れるように作るのが、僕の中でのクラシックのイメージなんです。そこに展開をつけてくのが面白くて。

──俺、この曲はかなり重要だと思っていて。というのも、Vaundyがオーケストラで歌なしの曲をやるって聞いた時に、絶対に坂本龍一的なアプローチになるって思い込んでて。

ああ、なるほど。

──彼の場合はオーケストラ曲でもピアノ曲でも、ある種ポップス的というかロック的で。要するに、光景や流れを描くんじゃなくて、ロジックがあってこの音が出ている、というロジカルな曲の作り方をしていたと思うんだよ。Vaundyがオーケストラの曲をやるんだったらきっとそっちなんだろうなと思ったら真逆のアプローチで、しかもそれがすげえ楽しいって言ってる。

たぶん僕の中でいろんなものが乖離してるんですよね。

──シンプルに、初めてやったから楽しかったんじゃない?

わからない。でもまあ面白いっすよ。歌ものって終わりを作らなきゃいけないんですよ。オーケストラの曲はずっと続けられるからやっぱ面白くて。音楽家はみんな、ほんとはそういうのがやりたいだろうし。でも、まだ1曲目だから、2曲目からどういうふうになっていくかはみんな楽しみにしてもらえればなと思います。それを積み重ねていくとロジカルになっていく、ということだと思いますね。今は自分のやりたいことに身を任せてる状態です。まあいつもそうなんですけどね。

もっと職人になっていかなきゃ。僕はVaundyを作る職人だからだから、もっと源流の部分に向き合わなきゃいけない

──そして、2026年2月からは男性ソロアーティスト史上最年少の4大都市ドームツアーが控えています。ドームツアーにはどういう心持ちで行くんですか?

毎回言ってるけど、ほんとにいつも通りをいつも以上にやるだけです。演出もめっちゃド派手にワーッて感じにするよりは、ドームで俺が音楽をやるとこうなるよね、という感じをまずはやりたいなって。俺のベーシックがどこまで通じるか、あるいは通じるだろうけどそれをどう面白く聴かせられるかをちゃんと突き詰めたいです。

──2025年もライブを何本か観させてもらったけど、Vaundyが不思議なのは、ガーデンシアターで観た時のうわ!と、O-EASTで観た時のうわ!が、いい意味で同じというか。だから、ドームもそういう感触を感じるのかもしれないって思った。観客からこう見えて、こう聞こえるんだ、というのがすごくプロデュースされている感じがして。

音楽は空気を体験するものだし、ライブはさらにそれを感じる場所だから、より生のものを観てほしいという感覚をずっと大事にしてきたので、そうなってるのかもしれないです。どこでやっても一緒なんですよね、ほんとに。俺が本気でその空間に向き合うだけ、歌うだけだから。とにかく自分ができる最大のエネルギー砲を撃つにはそれしかなくて、それはドームでも同じなので。

──あと、それを確実にやるためには、あらゆる面でのクオリティ管理が必要になるよね。

それはもうプロがやってくれるから、演出も含め任せたほうがいいなって。僕はもっと源流のもの──曲がいい曲かどうかと向き合わなきゃいけないから、外見(そとみ)としてみんなに見えるものを作るのは僕じゃなくてもいいんです。だから、その外見を作る人たちに、俺がやってるワクワクを伝えられなければいけなくて。

それって俺の作った醤油を薄めていく行為だから、どんなに薄めても醤油だけどなって思わせられる、濃い醤油を作るのが俺のやるべきことなんです。みんなが俺の醤油を飲んで「これ味濃いわ」ってなった時に「こうしよう」「こうやって分けよう」って考えたりする人たちは別にいて、それは俺の仕事じゃない。もっと職人になっていかなきゃ。僕はVaundyを作る職人だから、発表する行為は僕の仕事じゃない。僕は、歌が上手いとか、リズムとかバンド内のグルーヴのかっこよさとか、もっと源流の部分に向き合わなきゃいけないので。

──そういう発想なんだね。音楽のダイナミクスに完全に集中しているというか。

そう。デジタルカメラとフィルムカメラで何が違うかというと、どんなに寄っても中に密度があるのがフィルムなんですよ。でも、デジタルはピクセルだから、寄って見ると一色の色になるという明確な差があるんです。で、俺がやらなきゃいけないのはフィルムなんですよね。

──それだ! Vaundyの表現に感じる濃密さの秘密は。

引いてもいい感じだし、どんなに寄ってもピクセルじゃなくて世界がある状態。そのフィルムをどこで発表するかとか、どういうふうに現像するかとか、そんなのはどうでもよくて。そこに写ってるものに、どこまでいっても解像度があることのほうが重要だから。

──Vaundyのライブでどこの会場に行っても変わらない強さを感じるのは、そのたとえにすごく近い。ドーム公演でも、フィルム写真の密度を感じさせてくれたら、それはものすごいことだよ。

それはもう、頑張ります!

このインタビューの完全版は、発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』2月号に掲載!

【JAPAN最新号】Vaundyは未来の声を聴く──『18祭』の“呼び声”、初のオーケストラ曲“軌跡”、そしてドームツアー。2026年に向けてたっぷり語る
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