【インタビュー】フルスロットルで駆けた日々の記録はポップシーンに踏み出した大きな一歩。SKRYUのメジャー1stフルアルバム『ザ・ライト』が生まれるまで

【インタビュー】フルスロットルで駆けた日々の記録はポップシーンに踏み出した大きな一歩。SKRYUのメジャー1stフルアルバム『ザ・ライト』が生まれるまで

パンツ一丁で幕張メッセの宙を舞い、ちょっぴりレトロなビートの上に下ネタ混じりのリリックをばら撒いていく──SKRYUというラッパーが飄々とシーンを乗りこなす変幻自在のトリックスターであることを疑う余地はないと思う。そのトリックスターが、これまでのキャリアで最も追い詰められ、悪戦苦闘した末に生まれたのがこのメジャー1stフルアルバム。その名も『ザ・ライト』である。以下のテキストで語られる苦戦の要因は、納期に追われたことがまずひとつ。そしてその中でもクオリティも妥協しなかったことがもうひとつなのだが、その逆境を見事にスピード感とエンタメ性に昇華し切っているという点で、非常に満足度の高い一枚となっているのだから恐れ入る。インタビュー中にSKRYUが何度も口にする「メジャーアーティスト」としての自覚と矜持はおそらく、そのまま「ポップスター」にも置き換えられるものだ。トリックスターからポップスターへ、鮮やかなメタモルフォーゼを遂げんとする彼の現在地について、余すところなく語り合う。インタビュー=風間大洋 撮影=オノツトム

メジャーの目まぐるしく進んでいくスピードに、振り落とされないようにしがみついてる俺の奮闘の記録

──もう、ブルーノ・マーズかなっていうジャケットからして最高で。これヤバいっすよね(笑)。これがHIPHOPのジャンルに並びますから、パンチ効きますよね。フォントも写真に合わせて『ザ・ベストテン』チックなやつを選んでもらいました。──今作のテーマは言ってしまえばこういうことだよ、という説得力があります。ジャケに結構モノ言わせてる感じはありますね。もうちょっと残像を残したクールめのものもあったんですけど、額縁に入れて家に飾った時にこれがいちばんだなというか……なんならこれからのアルバム、全部この角度の写真でいいんじゃないか?っていう(笑)。本家に置いてある歴代の当主みたいで、今回がその初代って感じがして。
【インタビュー】フルスロットルで駆けた日々の記録はポップシーンに踏み出した大きな一歩。SKRYUのメジャー1stフルアルバム『ザ・ライト』が生まれるまで - 『ザ・ライト』ジャケット写真『ザ・ライト』ジャケット写真
──そしてタイトルにもやられました。そうなんです。エセスターというか、超スーパースターを自称してるんで安直につけたんですけど。前作収録の“Shangri-La -絶景-”で、シャングリラは目の中にあって、スターの輝きって実はお客さんが光らせてくれてるということを歌った時に、まさにそれが今の自分にとっていいパンチラインだなと思いました。『ザ・ライト』というタイトルの裏には「You are the light」、あなたが光ですよという意味合いがあります。……その一方で僕はこのアルバムの11曲を1ヶ月ちょっとで作ったんですよ。

──ヤバいですね。なのであとづけの理由としては、光の速さで作ったアルバムという。──はははは! でもカタカナにしていることで「light」だけじゃなく「right」、正しさとか正解というふうにも取れて。確かに。いいですね、それも組み込みましょうか(笑)。──これまでやってきたこと、これからやっていきたいことを含めた自身のエンタメ像、ポップス像における現時点での正答はこれだなという作品になってると思います。そういう意味ではメジャー1stフルアルバムではあるものの、奇をてらったことをやってるかといえばそんなことないし、大幅に変わった音色もなくて、今までの自分の良さを継続している。今までのSKRYUの中にあった正解という意味ではそうかもしれないですね。でも今作はほんまに初めから終わりまでのスパンが今まででいっちばん短すぎたので、とりあえず光らせとくか!みたいな(笑)。──逆にいえば考え込んじゃったり、捻りを加える余裕もなかったというか。そうですね。余裕もなかったし、捻ったとて、みたいなことも思ってて。突貫で作るのが正義かもしんないし、そもそもそんなに時間かけてらんねえわという。スケジュールにギリ喰らいついていこうとした俺の奮闘の記録みたいな部分はすごくあります。メジャーの目まぐるしく進んでいくスピードに、振り落とされないようにしがみついてるっていう。実際、前のEPが出てからいろんなメディアでお話しさせてもらう機会が増えたり、プロモーションでいろんな地域に足を踏み入れたり、それがツアーと被ってたのもあってあまりにも忙しくて、ずっとキレそうで(笑)。このスケジュール感でみんな動いてるのかなと思ったら、マジでメジャーアーティストは大変だなと思って、それに慣れようと頑張ってみたものの、残された制作期間がたった1ヶ月と2週間くらい。……制作に対する情熱はむちゃくちゃあるのに、その情熱を滾らせる時間に制限があるというか。いちばんキツかった期間かもしれないですね。
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うまくできて初めて「下手が味」って言えるなって思ったから、やっぱりクオリティとか歌のうまさからは逃げずに向き合ってます

──アルバム自体にテーマがあったとすれば、それはやっぱり『ザ・ライト』というタイトルに沿うようなものでした?そうですね。やっぱり漠然とスターにおけるlight、必要としてる光はなんなのか?っていう。だから、意識的なものも無意識的なものも両方あるんですけど、《光》という歌詞がたくさん入ってるんですよ。どのように光るんだ?とか、僕を光らせるものは何か?とか、光に対してすごくフォーカスしたなとは思います。──今作から新たに試みたこともありますか。意識的に変えたのは、レコーディングの時の歌唱ですね。メジャーで戦っていくうえで意識したのはアーティストとしてのスキル。ラッパーは別に声枯らしててもかっこよかったりとかするじゃないですか。でも、メジャーの第一線で活躍されてるアーティストの方ってもっとレベル高くて。歌い込みの時点からすごくきれいに、声に表情を持たせたりとか──ピッチが当たってるのは当たり前で、そのうえで表情の良し悪しとかでジャッジしていくんだろうなって思ったら、スキルの部分は絶対に不備があってはいけない。「下手が味」ってずっと思っていたけど、一回そこから抜け出してみようかって。やっぱりクオリティとか歌のうまさからは逃げずに向き合ってます。レコーディングの時には、初めてディレクションにも入ってもらったんですよ。──それによって変わった実感はありました?ありましたね。たとえば“キラキラ・ドッパミン・ジュッジュワー”では、サビの盛り上がりは突き抜けるように歌うけど、その前のブリッジの《夜空を見上げて/星を探してたら》はすごく優しく、声量を上げないように息を入れてメロウな感じで歌うようにディレクションしてもらったり。そうしたらやっぱり違って聴こえるし、立体的な表情を持つようになった。あとはそうだな……僕は特に語尾のライムに表情を持たせることが多くて。たとえば“ハヤスギテミエナイ(feat.サーヤ)”の《もう残像だぜ》の言い方も、イメージにあるやつを4〜5パターンくらい全部聴いてもらって、どれがいいかをちゃんと詰めました。「これでいいっしょ」があんまりなかったというか、ここまで指摘してくれるんだ、こんなところまで見てくれるんだっていう感じで。そういうアドバイスを全部一旦反映させてみたら、やっぱりいい感じになるし、応えようとしてスキルも上がったと思います。

──即興っぽさがある部分こそ、しっかり詰めてるのが面白いです。即興で何かいいものが出るってことは、もうちょっと掘ればもっといいものが出るんじゃね?みたいな。僕は、語尾が話し言葉で終わるのを大切にしていて。このアルバムを機に気づいたんですけど、刺さるリリックとかライムって話し言葉とか問いかけが入ってて、みんな自分に言われてると思ってグッと聴くんだと思うんですよね。──“マッパ・ノ・オウサマ”の《キングのコスチュームが見えるだろ?》とか。そう! あそこは4回くらい録ったんですけど、「見えるだろぉう?」っていう「見えるに決まってんだろ?」って感じで。もう演劇の世界みたいな感じなんですけど(笑)。まさにこのテイクが録れた時はブチ上がりましたね。あとは《イチモツがブラリ》とかもそうです。これはひどいっすけどね(笑)。
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