all pics by yosuke torii昨年行われた「印象A」「印象B」に続く自主企画イベント『パスピエ presents「印象C」』。過去最大規模で行われ全公演がソールドアウトを果たした「印象C」は、名古屋・CLUB QUATTROで髭とDJ:MURANAOを、大阪・BIG CATでクラムボンとDJ:Seihoを迎えた2公演を大盛況のもとに終えた。そして、ファイナル= SHIBUYA-AX公演のゲストは9mm Parabellum BulletとDJ:Fragmentである。この日は「パスピエ vs 9mm Parabellum Bullet」とでも銘打ってもよさそうなほどの夜で、観ている側も思わず拳を握りしめ、腕を上げたくなってしまうような、清々しいほどのガチンコバトルが繰り広げられた。
DJ:Fragmentのプレイにオーディエンスが体を揺らすなか、その音量が徐々に小さくなり暗転。
先攻は9mm Parabellum Bulletだ。登場するなり菅原卓郎(Vo&G)が拍手を煽りつつ“Cold Edge”“The Lightning”と序盤から攻めの態勢。人の波がステージ目がけてどっと押し寄せる。「俺たちに仲間入りしてもらうぜ!」という言葉に続いた“Black Market Blues”、間奏での菅原/滝善充(G)のギター2本によるユニゾン奏法に歓声が集まった“Answer And Answer”など、時には挑発的にフロアを指さしながら叫ぶ菅原をはじめ、例のごとく楽器に振り回されるかのように暴れる滝に、下からグイグイ煽るように低音を効かせる中村和彦(Ba)、そして崩壊と安定の最大公約数を通るようなかみじょうちひろ(Dr)によって、サウンド的にも身体的にもアクロバティックな演奏が続く。
今回の対バンは「俺がパスピエだ」と口走るほどパスピエのことが好きすぎるかみじょうがコンタクトをとったところ、ライヴに誘ってもらえたことをきっかけに決まったのだという裏エピソードを披露したあと、「ファイナルに俺たちを呼んだら大惨事になるということをみなさんにご理解いただきたいです。今夜はどうにもこうにもとまらないぜ!」(菅原)と“どうにもとまらない”へ。山本リンダの原曲が持つ歌謡性に9mm流の漆黒のロックを混ぜ込んだ1曲だ。
ここでバンドの結成10周年を記念して今年7月にリリースされるベストアルバムの告知を挟む。自分たちがTHE YELLOW MONKEYやLUNA SEA、GLAYといった好きなバンドに出会ったきっかけもベストアルバムであり、「俺たちのベストアルバムもそういうものになればいいなと思っています」とパスピエファンにアピールした。ベストアルバムを作成する際に昔の曲も改めて聴く機会がある、という話の流れから、1stフルアルバム『Termination』に収録されている“砂の惑星”のイントロが鳴らされると、レア曲の登場にフロアからは歓喜の声が。中村がアップライトベースに持ち替えた“キャンドルの灯を”で艶っぽくリズムが跳ねるパートと激情のサビを行き来したあとに、再びMC。バンド名より曲名のほうが覚えやすいから気になったらぜひチェックしてほしいという話や、5月7日にリリースのライヴDVDの告知、菅原がリハーサルで初めてパスピエを見たときに戦隊ものに見えたという話を終えたあと、「ブルーマンデーをぶっ飛ばして、雨も晴らしてみんなでスキッと帰ろうぜ! いけるか!?」と煽ったあとは、“ハートに火をつけて”からラストの“Punishment”まで駆け抜ける! “ハートに火をつけて”では「灰にならないかー!」と菅原が絶唱し、フロント3人が同タイミングでバッチリジャンプをキメたところで突入した“The Revolutionary”では向き合ってグルーヴを高める中村/かみじょうを背後に従えて、菅原/滝が再びギターバトルを繰り広げる。サビで大合唱を起こした“新しい光”、滝が転げまわったり中村が身を屈めたりしながら演奏を繰り広げた“Punishment”まで、キッズの心を昂らせ燃やすようなプレイを絶やさなかった。

ステージ転換中もFragmentのDJによって音楽が絶えないなか、ドリーミーなSEに乗って登場したのはもちろんパスピエだ。1曲目の“はいからさん”から先攻の9mmにぶつかっていくかのようにアクセル全開だ。ネオンピンクのワンピースが鮮やかな大胡田なつき(Vo)はステージを歩き回り、三澤勝洸(G)と露崎義邦(Ba)も前方へやってきてフロアの隅々まで見渡して笑顔を浮かべる。“フィーバー”“とおりゃんせ”など、ちょっぴり怪しくてキュートなパスピエワールドがやおたくや(Dr)のビートに乗って展開されるなか、成田ハネダ(Key)も時には楽器の前を離れてクラップを煽っていたりと、5人がこの場と音楽を楽しんでいることが伝わってくる。キラーチューンが3曲連続で繰り出されたあとで「楽しんでますかー!?」と大胡田に訊かれたフロアはもちろん大音量でそれに応える。「大先輩で憧れの9mm Parabellum Bulletと、ここに来てくれているみなさんとライヴができて嬉しいです」と喜びを言葉にしたところで、最新シングルから“MATATABISTEP”。MVと同じ振り付けをしながら唄う大胡田の歌声とサイケデリックなサウンドが、ビビットカラーの照明とともにライヴハウスをダンスフロアに変えていく。間髪入れずにそのカップリング曲である“万華鏡”、絵本からそのまま飛び出してきたようなメルヘンチックな世界を持つ“気象予報士の憂鬱”へと続き、「少し昔の曲をやろうと思います」と紹介された1stミニアルバム『わたし開花したわ』に収録されている“夕焼けは命の海”を響かせる。「古い曲もやったから新しい曲もやろうかな」と披露されたのは“MATATABISTEP”と共に最新シングルのA面を飾る“あの青と青と青”で、どこまでも伸びていく大胡田の声と息をピッタリ合わせてしっかり底辺となる露崎/やおのリズム隊の音、さらに成田/三澤が繰り出す奇天烈なフレーズがAXの大気を染め上げた。電気グルーヴの名曲をカバーした“Shangri-La”では露崎の低音が効いたバンドの持つ肉体性の部分がしっかりと見えつつも、成田の奏でるフレーズや大胡田のあの声によって浮遊感も出ていて、パスピエならではの二律背反な世界が平然と成立しているアレンジだ。「どんどん続けていくよー!」という大胡田のアジテーションに続けて、やお→成田→三澤→露崎の順のソロまわしが光った“S.S”まで、フロアをガッツリ揺らして去っていった。


アンコールではパスピエの5人が再登場。9mmかみじょうとは仲良しだというやおが「お互いのドラムに座りっこしちゃったもんね~」とその仲良し度を自慢し、成田がCDやテレビの向こう側の人だと思っていた9mmと対バンできていることの喜びを語ったあと、「印象C」で恒例となっている対バン相手のカバー曲ということで、演奏されたのはなんと“Cold Edge”! やおが頭を振り乱して叩いていたり(あとで「スティック回してやりましたよ! 1回が限界だったけど!」とも言っていた)、大胡田はスタンドマイクを前に仁王立ちして時には拳を握りながら唄っていたり。本家さながらのゴリゴリなサウンドを意識してもどこか凛とした雰囲気を持つパスピエの“Cold Edge”はどこか新鮮だった。
ここで成田直筆のアルバムタイトルを大胡田とやおが掲げながら6月18日に2ndフルアルバム『幕の内ISM』をリリースすることを発表(詳細はこちら→
http://ro69.jp/news/detail/100692)。「寂しいけどまたみなさんにお会いできる日を楽しみにしています」と“最終電車”で幕を閉じた。(蜂須賀ちなみ)
セットリスト
■9mm Parabellum Bullet
01. Cold Edge
02. The Lightning
03. Black Market Blues
04. Answer And Answer
05. どうにもとまらない
06. Wanderland
07. 黒い森の旅人
08. 砂の惑星
09. キャンドルの灯を
10. ハートに火をつけて
11. Discommunication
12. The Revolutionary
13. 新しい光
14. Punishment
■パスピエ
01. はいからさん
02. フィーバー
03. とおりゃんせ
04. MATATABISTEP
05. 万華鏡
06. 気象予報士の憂鬱
07. 夕焼けは命の海
08. あの青と青と青
09. Shangri-La
10. ワールドエンド
11. チャイナタウン
12. S.S
アンコール
13. Cold Edge(9mm Parabellum Bullet Cover)
14. 最終電車