FACT×Lower Than Atlantis×HEY-SMITH@Zepp Tokyo

FACT×Lower Than Atlantis×HEY-SMITH@Zepp Tokyo
3月にリリースされた最新アルバム『WITNESS』を携えて6月2日からスタートしたばかりの、FACTの全国ツアー『FACT "WITNESS" JAPAN TOUR 2014』。Memphis May Fire(US)のサポート・アクトとしてイギリス各地を計8公演にわたって回った4月のUKツアーを経て、6月2日からはMemphis May Fire、Lower Than Atlantis(UK)を迎えての東名阪3マン三連戦で最高のジャパン・ツアー開幕を飾る……という予定だったところに、突如アナウンスされたMemphis May Fireの来日キャンセル。しかし、6月2日:大阪・Zepp NambaにはCrystal Lake、6月3日:名古屋・ダイアモンドホールにはwaterweed、そしてこの日の東京・Zepp TokyoにはHEY-SMITHが急遽出演決定。当初のビジョンとは形こそ違えど、FACTの15年史を通して築いてきた絆が、この上なくヘヴィでダイレクトな音像&フロアの熱量とともにZepp Tokyo狭しと渦巻く、最高のロック・アクトだった。

●HEY-SMITH
FACT×Lower Than Atlantis×HEY-SMITH@Zepp Tokyo
「ピンチヒッター登場!」という猪狩秀平(G・Vo)のコールとともにトップバッターとして登場したのはHEY-SMITH。いきなり灼熱スカ・パンク“Endless Sorrow”で満(Sax)&Iori(Trumpet)の旋律が開演の号砲よろしく高らかに響いた後、“True Yourself”のメタリックなリフと情熱的なメロディが炸裂、会場に轟く♪ウォーオーオーオーの大合唱! スカとパンクとメタルが渾然一体となって噴き上がるようなHEY-SMITHの音世界が、“Drug Free Japan”では柵で仕切られた中でもフロアのあちこちに熱い渦を描き出し、1曲また1曲と演奏が進むごとに熱いシンガロングを呼び起こしていく。

FACT×Lower Than Atlantis×HEY-SMITH@Zepp Tokyo
「FACTとは切っても切れない縁というか、付き合いも長くなってきたんですけども。我々のツアーにも出てもらったことあるし。こうやってFACTが困った時とかにお返しできたらと思ってたんで!」という猪狩の言葉に拍手喝采が広がる。猪狩いわく、かつてライヴのため渡米中だったHEY-SMITHのところに、たまたまアメリカでレコーディングをしていたFACTから電話かかってきて、メンバー全員で会ったのが2組の出会いのきっかけとのこと。「あの広大なアメリカの中で、ほんと車で1時間ぐらいのところにおって(笑)。そういう出会い方をしたから、こういう親密な感じになってると思うんですよね。普通のバンドとは絆が違うというか」。正味40分ほどのステージを爆風の如き勢いで駆け抜けていったヘイスミ。なお、彼らは同ツアーの7月9日・札幌PENNY LANE 24公演にも出演!

●Lower Than Atlantis
FACT×Lower Than Atlantis×HEY-SMITH@Zepp Tokyo
2組目は英ウォトフォード発のポスト・ハードコア4人組=Lower Than Atlantis。冒頭から6月2日にリリースしたばかりのシングル曲“Here We Go”の音像でフロアを圧倒。質実剛健というか、凛とした光を放つまでに鍛え上げられた鋼の如き強靭さというか、とにかく怒濤の音圧と輝度を誇るバンド・サウンドが、鼓膜や体どころか五感を一気に支配するように鳴り渡り、聴く者すべての心を高揚させていく。「Jump up! Jump up!! Jump up!!! Do you understand me?」とマイク(Vo・G)がフロアを軽やかに煽りまくって、“(Motor) Way of Life”の躍動感満載のビートでオーディエンスを高々とジャンプさせてみせたり、3拍子系ナンバー“Beech Like The Tree”サビの雄大なメロディでフロア丸ごと心酔させたり……といった具合に、短い時間ながらその音でZeppの広大な空間を完全支配してみせる。

FACT×Lower Than Atlantis×HEY-SMITH@Zepp Tokyo
中盤、マイクに通訳代わりに呼び込まれたのはFACTのギタリスト・Adam。「ロワザンは今週、新しいシングル出した。それでね、みんながそのシングルの名前を言ってるところを撮りたいって!」という呼びかけで、フロア一丸の「Here We Go!!!!」コールを撮影(これは後日YouTubeなどで公開されるそうだ)。“Another Sad Song”のメランコリックに澄んだアンサンブル。“Something Better Came Along”の研ぎ澄まされたメロディと気高きエモーションの高純度結晶のようなサウンドスケープが、満場のクラップを巻き起こした無上の風景――今年9月にはセルフ・タイトルの新作アルバム『Lower Than Atlantis』のリリースを予定しているLower Than Atlantis、その存在感を日本のリスナーに深々と刻み付けた、至高のひとときだった。

●FACT
「台場! 最高の景色を見してくれ!」というHiro(Vo)の渾身のコールに応えて、弾けんばかりの熱狂とともにフロア一面に轟々と沸き上がる大歓声! まだツアーは始まったばかりなのでセットリストは割愛させていただくが、“devil's work”“new element”“ape”などアルバム『WITNESS』収録曲(日本盤ボーナス・トラック“termination”も含め)を、アンコール含め約1時間半のアクトの軸に据えた、圧巻のアクト。アグレッシヴな爆走前のめり感がBPM以上のスリルを描き出した“drag”。熾烈なまでに吹き荒れる轟音が揺るぎないポジティヴィティとともに観客の身体と心を震わせ、シンガロングとハンドウェーブで視界を埋め尽くしてみせた“witness”。Kazuki/Takahiro/Adamのトリプル・ギター、Tomohiro(B)&Eiji(Dr)の縦横無尽な爆裂リズム、Hiro&Adamの絶唱が織り成すサウンドの硬質感&驚異の重量感……それこそ時速300kmで疾走する重戦車の如きアンサンブルが、オーディエンスの魂を鼓舞し、煽り、どこまでも燃えたぎらせていく。「『"WITNESS" JAPAN TOUR』へようこそ! 最高の1日を、ここのみんなで作りましょうね!」とHiroが呼びかける頃には、フロアはむせ返るような熱気と汗と狂喜に満ちている。

FACT×Lower Than Atlantis×HEY-SMITH@Zepp Tokyo
Zepp一丸のハイジャンプを巻き起こした“termination”。疾走感の果てに目映くも壮大なロックの風景が広がる“miles away”。驚愕のヘヴィネスが絶望や暗黒の表現としてではなく「その先」への強烈なエネルギーとして響き渡る“disclosure”……かつてのカオティックでトリッキーな曲展開よりも、メロディの訴求力とハイブリッドなサウンドの突破力に磨きをかけたことで、前作『burundanga』、そして最新作『WITNESS』で爆発的な進化を遂げたFACT。そんな6人の「今」が全開放されたような、珠玉のアクトだった。Hiro自身、「もう俺らもバンドやって15年になるんだけど。常日頃思うことは……やっぱり、お前らがいないとダメです!」とZepp Tokyoの隅々までその想いを語っていたが、そのオーディエンスとの絆を作り上げたのは他でもない、世界を股にかけて闘いながら実現してきたFACT自身の絶え間ない鍛錬と進歩そのものである――ということを、この日のステージは何よりもリアルに物語っていた。

会場のあちこちに映像収録用のカメラが配置されていたこの日のアクトについての「DVDになるかもしれませんので! たくさん映っちゃったやつには……Adamがチューします!」(Hiro)「うおおおおっ!」(男ファンの雄叫び)「……男、嬉しいのそれ?(笑)」(Adam)という微笑ましいやりとりも、この日の熱気の最高のスパイスとして機能していた。多幸感一色のフロアを見回して「すんげー気持ちいい! なにこれ!」と喜びを露にしていたEijiは「急遽出てもらったCrystal Lakeと、waterweed、そして今日出てくれたHEY-SMITH、マジでありがとう! それと、UKブラザー・Lower Than Atlantis、今日来てくれたみんなに、最高の曲を贈ります!」とありったけの感謝の気持ちを伝えていた。アンコールの最後は、取材に来ていたらしい英ロック専門誌『KERRANG!』用のフォト・シューティングで大団円! クライマックス級の祝祭感を、早くもツアー3本目にして生み出してしまったFACT。現状発表されている『"WITNESS" JAPAN TOUR』のスケジュールは7月13日:宮城・仙台darwin公演までだが、オフィシャルサイトには「and more...」の文字が。ツアーはどこまで続くのか? そして、FACTはどのレベルまで高まっていくのか? 恐ろしいほどの期待感に、ライヴ終演と同時に胸が躍って仕方ない。そんな一夜だった。(高橋智樹)
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