スプーン @ 代官山UNIT

USインディ・ロックの御手本とも言うべきライブだった。94年結成、既に優に10年を誇る活動期間がありながら、今回が初来日公演となったスプーン。Voのダニエルがプロデュースを手掛けたヴィア・オーディオが前座を務めた後、メンバー自らが機材をセッティング。スタッフに話を聞いたところによれば、今回のツアーにはマネージャーも同行していないという。長く世界各国のライヴ・ハウスを廻ってきたキャリアゆえの、地に足の着いたバンドである。そして、そうやって積み上げてきた成果は、最新作『ガ・ガ・ガ・ガ・ガ』で全米6位という大きな結果になって表れることになった。この日のライヴもまさにそんなキャリアそのままのライブだったと言えるかもしれない。

『ガ・ガ・ガ・ガ・ガ』に収録の“My Little Japanese Cigarette Case”から始まったライブ。最初から肩の力が完全に抜けている。さすがに百戦錬磨とも言うほど、ライブをこなしてきたバンドである。そのまま演奏は“Don’t You Evah”へ。ポスト・パンク的なスクウェアなリズムを土台に、60年代のようなオーセンティックなロックをやるバンドだが、実はエコー/ディレイ/リヴァーヴといった空間系のエフェクトを多用しているバンドでもある。彼らの削ぎ落とされたロックが緻密なプロダクションによって成り立っていることが、ライヴではそのまま露見する。そして、そうしたエコーの残響は、これまでのロックの歴史が置き去りにしてきた亡霊のように響く。50歳を超えたロックという表現が抱えている命題に対して非常に自覚的なバンドなのだけれど、それを超えて、かつてのロックが持っていた本能的な衝動性に彼らは触れようとする。

実際、そうした瞬間がこの日のショウでも何度かあった。前作『ギミ・フィクション』の“The Beast and Dragon, Adored”。“Underdog”〜“Don't Make Me a Target”の流れ。本編最後の“Black Like Me”。インディ・ロックを追求してきた彼らだからこそ辿り着いた、真っ平らな地平がそこにはあった。(古川琢也)
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