TRIPLE AXE '14@Zepp Tokyo

TRIPLE AXE '14@Zepp Tokyo
SiM、coldrain、HEY-SMITHによる、ライヴ・モンスター三つ巴の合同企画『TRIPLE AXE』は、2012年に初開催されて今年が3年目。初年度はツアー形式、昨年は東京・新木場スタジオコーストで一夜の大熱戦を繰り広げてきたわけだが、今年は過去最大級となる全国5公演のZeppツアーだ。6/19のZepp Sapporoで開幕した『TRIPLE AXE '14』は、見事にチケット即完の2公演目=Zepp Tokyoへ。本稿ではその模様をレポートしたい。今後、Zepp Nagoya (6/24)、Zepp Fukuoka (6/26)、そしてファイナルの舞台となるZepp Namba (6/30)とツアーは続くので、各公演を楽しみにしている方は、以下少々の演奏曲表記を含む本文の閲覧にご注意を。

TRIPLE AXE '14@Zepp Tokyo
『TRIPLE AXE』の公式YouTubeアカウントにアップされたムービーによれば、初日・札幌の出演順はあみだくじで決めていたけれども、この日はまずHEY-SMITHが登場。満 (Sax)とlori (Trumpet)、上半身裸のホーン・セクション2人を先頭に勢い良くステージに飛び込み、「はじめるぞおーっ!」と掛け声一閃、Mukky (Vo・B)から歌い出す猛爆パンク・チューン“Drug Free Japan”で瞬く間にフロアを揉みくちゃにしてくれる。そして“Endless Sorrow” に“Download Me If You Can”と、熱いヴォーカル・リレーがオーディエンスの間の手を誘い、無国籍トラッド・パンクの数々を畳み掛けるのだった。歌を楽しみ尽くす思いとシリアスなメッセージが同時に放たれ、また踊り狂うことこそが抵抗・反抗の行為そのものでもあるという、そんなHEY-SMITHの、一切の迷いを排したステージだ。

TRIPLE AXE '14@Zepp Tokyo
猪狩秀平 (G・Vo)は、「去年はスタジオコースト一本だけで、俺はどうしてもこの3バンドでツアーがやりたくて。メシ食えないような頃から一緒にやって、お互いの実家にも行ったりしてきたような仲だから、どうしてもやりたいって言いました! そしたらcoldrainは、海外行くから無理だって(笑)。それでも予定をずらして、動いてくれました!」と語って喝采を浴びる。ファンが差し入れしてくれたというシャンパンを開けてオーディエンスにも振る舞い、「『TRIPLE AXE』ツアー、カンパーイ!」と超ファストな全力疾走に傾れ込むという一幕も痛快だ。自分たちの仕事はこれ、とばかりに目一杯の享楽性を振り撒きながら、「5人、10人の前でライヴやってた頃から一緒にツアーしてました! 誰一人欠けることなく、このステージに立てることを本当に嬉しく思います!」と熱い友愛も迸らせるステージである。彼らは今夏も、9/14に主催フェス『OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL '14』(前夜祭もあり)を、地元大阪・泉大津フェニックスで開催予定だ。

TRIPLE AXE '14@Zepp Tokyo
続いての2組目は、この6月頭から中旬まで、UKの『Download Festival』出演を含む欧州ツアーに臨んでいたcoldrainである。さっそく繰り出される音塊の中から、「Tokyo, get the fuck up !!」とオーディエンスを煽り立てるMasato (Vo)。Sugi (G)とRxYxO (B)が目紛しく立ち位置をスイッチし、Katsuma (Dr)が触れる者を圧倒するようなビートを刻み続けながら、とことんヘヴィなのにダンサブルなcoldrainサウンドでオーディエンスをバウンスさせ、或いは激しくヘッド・バンギングさせていた。Y.K.C (G)の鮮烈にしてテクニカルなプレイは、高揚感だけでなく奥行きのある情感も運んでくれる。Masatoは今にもスケルトンマイクに齧り付きそうな勢いで「そんなもんか東京! 今日は歴史を作る日だぞ! 手ぇ貸せ!!」とオーディエンスを煽り続け、“Die tomorrow”や“Voiceless”の特大シンガロングを導くのだった。

TRIPLE AXE '14@Zepp Tokyo
「HEY (-SMITH)、SiM、存在してくれてありがとう」と、こちらも切磋琢磨しつつ共闘する2バンドを「家族」と呼んで思いを投げ掛けながら、「いま隣にいる奴、全然知らない奴かも知れないけど、出会いというものを軽視しないでください」と『TRIPLE AXE』ならではのメッセージに繋げてゆくMasatoである。たとえ出会いが偶然に過ぎなかったとしても、歩んで来た道程と現にこうして分かち合うステージがあるから、その言葉は重い。この6/18にリリースされたミニ・アルバム『Until The End』から披露された“Aware And Awake”は、Masatoが拡声器を持ち込む刺激的なパフォーマンスで、まるで大作映画のスコアのように展開する壮大なアレンジが、熱い衝動を抱えたままスケール・アップしてゆくcoldrainの姿を映し出していた。

TRIPLE AXE '14@Zepp Tokyo
というわけで、この日のトリを担うのはSiMである。「2009年以来、2回目のZepp Tokyoです。このメンバーになってすぐ、俺もまだ細かったときです(笑)。あのときは、すごい広いなあって感じたんだけど、今日は、仲間たちの力も借りて、なんだろう、Zepp Tokyoがすごく小さく感じるよ! 『TRIPLE AXE』の手の中に、Zepp Tokyoがあるみたいだよ!」とMAH (Vo)が告げて、HEY-SMITHとcoldrain、そしてオーディエンスに捧げられた“Same Sky”は感動的な光景だった。SIN (B)、SHOW-HATE (G)、そして『TRIPLE AXE』仕様のバスドラをキックするGODRi (Dr)という鉄壁の4ピースから叩き出される、強烈なハードコアからソリッドなスカ、そしてズブズブのダブ・グルーヴ。変幻自在の楽曲を縦横無尽に駆け抜けるSiMは今回も健在だったし、先に触れたようにいつもどおりの名MCも飛び出した。

なのだが、「猪狩がねえ、SiMとcoldrainはカッコつけてばっかりだって言ってましたが、coldrainは確かにカッコつけてる(笑)。俺らだって、言うときは言いますよ。ウンコとか」といった調子で、普段なら責任感をひしひしと観る者にも伝えるステージ上のMAHが、いやに肩の力の抜けた、『TRIPLE AXE』ならではの雰囲気を纏っているのが珍しい。「また明日、の明日が来ない人もいるんで、いつ終わるとも知れない人との関係性を、大切にしてください」と披露された“wishing”のエモーショナルな大熱演があれば、猥雑なヴァイブを全開にしてフロア一面をジャンプ・アップさせる“SUCCUBUS”もあり、といったふうに、3バンドの互いの刺激があってこそ引き出される無邪気なパーティー性が、今回のSiMのステージを彩っていた。

この後には、『TRIPLE AXE』恒例のスペシャルな一幕も繰り広げられたのだが、詳細は観てのお楽しみ、ということにしておきたい。最後に、オーディエンスとの集合写真撮影も敢行して大団円を迎えた『TRIPLE AXE '14』の東京公演は、出身地も表現スタイルもまるで異なる3組のバンドが、しかし心の深いところで理解とリスペクトの思いを寄せ合い、今も共にシーンの最前線を走る喜びに満ちていた。ワンマン公演とも大型フェスとも違った特別な時間が育まれる、素晴らしい一夜であった。(小池宏和)
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