爆弾ジョニー@渋谷CLUB QUATTRO

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「ロックっていう音楽の熱量はすごいものです。それは僕ら田舎の少年達の人生を左右するぐらいの熱量がありますから」――残すところあと2曲となった本編ラストのMCで、汗だくで髪も衣装もぐしょぐしょになったフロントマンのりょーめー(Vo・G)はアコギを爪弾きながらそう告げた。そんなロックへの深い情愛を全身で爆発させるかのごとく、熱く、エネルギッシュで、感動的なステージだった。今年4月にメジャー・デビューを果たした北海道発の5ピース・爆弾ジョニー。彼ら初のワンマンツアー「『はじめての唯一人ツアー』~ワンマンだよ~」の2本目にして、自身2度目となる渋谷クラブクアトロでのワンマン公演。まだツアー続行中のため、以下のレポートではセットリストなどの詳細表記は控えるが、あまりにも熱量と情報量が膨大で、2時間とは思えないほどあっという間に過ぎ去った時間であったことだけは先に伝えておこう。

場内に足を踏み入れた瞬間に目に飛び込んできたのは、入り口近くの柱に掲げられた「猿」と書かれた特大暖簾。フロア上やステージにも様々な装飾が。まるで秘密結社のアングラ集会のような物々しい雰囲気だ。そんな中、開演前からフロアを賑わせているのはソールドアウトの超満員となったオーディエンス。メジャー・デビューを経て上昇の一途をたどっている爆弾ジョニーの現在の注目度の高さがうかがえる。そして開演時刻の17時半を少し過ぎた頃、「ポン、ポン!」という鼓の音とともに「いよぉー!」と飛び六法を踏んで爆弾ジョニーの5人が見参!

爆弾ジョニー@渋谷CLUB QUATTRO
爆弾ジョニー@渋谷CLUB QUATTRO
黒ネクタイ&黒ジャケット姿のりょーめー/革ジャン姿のキョウスケ(G)/レトロなスーツでキメたロマンチック☆安田(Key)/紺色のシャツをラフに羽織った小堀君(B)/赤いロン毛をターバンで縛りパンツ一丁のタイチ(Dr)と、その格好からしてまったく統一性のない5人。が、挨拶代わりの音鳴らしに突入すると、一様に頭を激しく振って楽器をプレイする。その光景のなんと壮観なこと。そのまま雪崩れ込んだ1曲目では、早くも盛大なコール&レスポンスとハイジャンプを誘引。額に手をかざし、グラサンの奥から満足気にフロアを見渡すりょーめーの姿がなんとも不敵だ。その後も、キョウスケが「こんなもんじゃねぇだろ!」と煽り立てる中で会場一丸のシンガロングが発生した“なあ~んにも”、りょーめーのブルースハープに加え曲の中盤でRCサクセションの“雨あがりの夜空に”の一節がダイナミックに響きわたった“おかしな2人”など、メジャー・1stアルバム『はじめての爆弾ジョニー』収録曲を中心とした楽曲群をノンストップで乱れ打ち。オーディエンスのケツを蹴り上げるような熱量過多なサウンドを全力で叩きつけ、むせ返るような熱気に包まれた場内の狂騒感をみるみると高めていく。

爆弾ジョニー@渋谷CLUB QUATTRO
爆弾ジョニー@渋谷CLUB QUATTRO
そのメーター振り切れんばかりのテンションは留まることなく、“へんしん”の前ではタイチが椅子に立ち上がりパンツを脱いでふんどし一丁になる「変身」ネタを開陳! メンバー紹介では、メンバー各々が個性溢れるソロ・プレイを披露してオーディエンスの拍手喝采を誘っていく。さらに、超速アップ・チューン“ダイナマイトラヴ”ではフロア中のタオルを旋回させたり……と、そのパフォーマンスのすべてを抜き出したらキリがないほど。とは言えネタてんこ盛りのライヴにありがちなダレた空気は一切なく、メンバー各々が適材適所の役割を果たしながら、流れるような展開の中ですべてが行われているところが、すごい。やりたいことを全部やる。でも如何に効果的に魅せるかをメンバー全員で考え抜き、そのルールに則って実行する。そんな彼らの並々ならぬ気概が、やりたい放題やっているようで実はとても統率の取れた一連のパフォーマンスからは十二分に見て取れた。ロマンチック☆安田が何故か舞の海の物真似をしながらグッズ紹介を行ったMCタイムを経て、「舞の海の真似をしたことに意味あるんですか? 意味なーし!」というりょーめーの突っ込みから“イミナシ!”に突入した一幕は、そんな彼らの理知的なショーマンシップの極致だったと思う。

爆弾ジョニー@渋谷CLUB QUATTRO
爆弾ジョニー@渋谷CLUB QUATTRO
観客をひとしきり笑わせ踊らせた前半を経て、後半の“唯一人”では一心不乱に駆け抜ける直球のロックンロールが炸裂。《「僕だって誰だって気持ちイイことがしたいだけえ!」》というシンプルながら普遍的な心の叫びが、聴く者の心にまっすぐ突き刺さってくる。さらに“賛歌”の《さあ、笑え 自分のカタチで/さあ、泣け 自分のカタチで》という剥き出しの絶唱――こういうロックンロールを鳴らす上で最も大切で原始的な心情を、ライヴも佳境に差し掛かった局面で、牧歌的かつソウルフルな5ピースのバンド・サウンドでブチ込んでくるところが心憎い。心地よい横揺れを誘ったレゲエ・チューンや、EDMサウンド全開のダンス・チューンで沸かせつつ、最後は往年のロックンロールへのオマージュを感じさせる王道の曲で攻める潔さ。そこには、自らの人生を変えるほどの力を持ったロックンロールへの熱い想いが見て取れる。あらゆる音楽を自分なりに咀嚼し、自由でオリジナルなアイデアを詰め込んだサウンドに変えて鳴らす新世代バンドが次々と生まれている昨今。そんな中にあって爆弾ジョニーの真っ直ぐすぎる戦法は、一見すると不器用なものに映るかもしれない。しかし「どうせふざけた世の中ならとことんまでふざけてしまえ!」の精神で聴き手に向かって飛び込んでいく彼らの姿は、新世代らしい無邪気さと健全さに溢れているし、何よりリアルだ。爆弾ジョニーの音楽が熱く胸に響くのは、ひとえにそのひたむきな闘魂の賜であるし、この日のライヴでも終盤になるにつれてみるみる盛大になっていったフロアの大合唱が、「今まさに求められる音楽」として彼らの音楽が響いていることを雄弁に物語っていた。

爆弾ジョニー@渋谷CLUB QUATTRO
アンコールでは12月4日のりょーめーの21歳の誕生日に初のゼップ・ワンマンを行うことを告知! さらに未発表の新曲を次々と披露して、年内にもう一枚フル・アルバムも出すという驚きの宣言も。思い余ったロマンチック☆安田がフロアにダイブしてステージに帰ってこれなくなるというシーンもありつつ、ダブル・アンコールにも応える大サービスの展開で2時間のステージを駆け抜けた。ちなみに先述した「猿」の暖簾には、「この暖簾をくぐったらみんな猿みたいになって踊れ!」というメッセージを込めていることをライヴ中盤のMCで明かしていた、りょーめー。そんな遊び心も尽きないほど、やりたいことや伝えたいメッセージが湯水のごとく溢れ出している爆弾ジョニーの快進撃は、今後もまだまだ続きそうだ。(齋藤美穂)
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