マライア・キャリー@幕張メッセ国際展示場7・8ホール

マライア・キャリー@幕張メッセ国際展示場7・8ホール  - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi
この日、マライアは約2時間のステージで全22曲を歌った。これはここ数年のマライアのステージとしては破格のヴォリュームと言ってよく、彼女が近年の「アメリカン・アイドル」の審査員等のショウビズ・セレブ・モードから再び本来の歌姫モードにスイッチを入れ替えたことが窺える充実の内容だった。前回の来日は2000年代のマライアのセカンド・ブレイク、第二の全盛期を迎えたアルバム『MIMI』のツアーだったわけだが、今回の来日は今年6月にリリースされた5年ぶりのニュー・アルバム『ミー。アイ・アム・マライア』を引っさげてのワールド・ツアーのキックオフの地となる。そして何よりも、マライア・キャリーの実に8年ぶりの来日公演だったのである。

前述のようにマライアは90年代、そして2000年代とポップ・ミュージックの世界的頂点に立ってきたアーティストなだけあって、8年ぶりの日本公演に詰めかけたオーディエンスの年齢層は驚くほど広い。日本で1枚のアルバムで数百万単位の売り上げを記録した海外女性アーティストなんて後にも先にもマライアしかいないわけで、そういう意味でも本当にあらゆるタイプのファンが集結した印象だ。

開演は意外にも(?)十数分の遅れのみ。ダンサー達のシアトリカルなパフォーマンスでこの日のショウは幕開けた。そして1曲目の“Fantasy”、ダンサー達にエスコートされてマライアが遂に登場する。マライアの装いはスーパー・ミニ&スーパー・タイトな白のドレスで、片側のみウェディングドレスのような長いドレープ状の裾が施されており、その裾をダンサーが恭しく持ち従う様はまさに「姫!」という貫禄だ。貫禄と言えば、はち切れんばかりのダイナマイト・バディも凄い。ステージには常にマライアに向かって緩く風が吹いており、髪をたなびかせながら歌い微笑む様も皆の知っている「あの」マライアの復活だ。

“Don’t Forget About Us”では深紅のベッドに寝そべりながら歌うというこれまたマライアならではの演出だ。横になって歌うなんて腹式呼吸的に相当厳しいのではないか?と素人は思うわけだが、この日の彼女はいとも易々と歌いこなしている。続く“Emotions”では「7オクターブの音域を持つ歌姫」というかつてのキャッチコピーを彷彿とさせる、必殺の超音波的ファルセットもばっちりキメる。それでも全盛期の奇跡のようだった歌唱と比較すると声域、声量共に100%ではないのだが、今のマライアには音域を下げたりフェイクを入れたりと臨機応変に声をコントロールしながら、曲の美観を損なわずに歌いきるスキルがある。ここで最初のメンバー紹介がインサートされ、マライアは衣装替えで一旦ステージを降りる。なお、今回のツ アーのバンド編成はドラムス、ベース&ギター、キーボード2人、ピアノ、コーラス3人の計8人だ。

ステージ後方の巨大スクリーンで“Honey”のミュージック・ビデオが流れ始め、ここからはこの日の言わばセカンド・パート、マライアのR&Bやヒップホップ調のナンバーがフィーチャーされたセクションが始まる。マライアは黒のこれまたスーパー・ミニ・ドレスに衣装替えし、曲構成と共に全体的にセクシー&モダンな印象に転じる。「コンバンワトキオー!」と叫び始まった“Always Be My Baby”ではイントロ一音で凄まじい大歓声が巻き起こった。“Emotions”といい“Always Be My Baby”といい前半から惜しみなく大ヒット曲を重ねてくる。というか、この人は重ねても重ね有り余るほどの大ヒット曲を持っているのだ。

ラガなリズムトラックで渋くキメた“Thirsty”、グラフィカルな映像のインタールードもエッジが立っていた“Shake It Off”とミニマム&ハードなナンバーが続いたところで一転、エレクトロでディスコテックな“Meteorite”で一気にカラフル&アッパーなモードに移り変わる。ネオンカラーのライトセイバーのようなスティックを持ったダンサーの群舞も80S調で、ここで始まったダンサー紹介は『フラッシュダンス』や『フットルース』といった映画を思い出してしまった。

3度目の衣装チェンジで、マライアはシンプルな黒ロング・ドレスに着替えて再登場した。そのドレスにも象徴されるように、ここからのマライアは「ザ・歌姫」としてのマライアだ。「私のファースト・シングルよ」と言って始まった“Vision Of Love”は、まさに原点回帰の歌声勝負で、難易度MAXのこの曲を彼女は丁寧にひとつひとつ難関ポイントを攻略するように歌い上げていく。

ここからの数曲はピアノとヴォーカルをメインとした数曲が続き、さらに歌に特化された内容となっていく。8月に行なわれたレディー・ガガのステージでも思ったことだけれど、ステージの中にこういう原点的風景、ナイトクラブで歌っていた自分の下積み時代の風景を投影したセクションを設けることは、ポップ・ミュージックの頂点に立った彼女達にとって凄く大切なことなのだろう。

“Breakdown”から“The Roof”までは「CAR RIDE MEDLEY」と題されたノンストップ・メドレーで、“I’m That Chick”で再びメンバー紹介、ダンス・バトルの様相を呈したダンサー紹介はそこだけで十分エンターテイメントで客席からは途切れなく歓声が続く。最後の衣装替え、マライアはブルーのマーメイド・ラインのドレスで再登場し、彼女の実子の3歳の双子もヴォーカルで参加した最新作からのナンバー“Supernatural”、マイケル・ジャクソンに捧げる“I’ll Be There”、そして“We Belong Together”とフィナーレに向けてこれでもかと畳み掛け、昂っていく。アンコールはもちろん“Hero”。最早殆ど国民歌のように幕張メッセに響いたこの曲と共に、マライア・キャリーの8年ぶりの来日ステージは大団円で幕を閉じた。(粉川しの)

1.Fantasy
2.Don’t Forget About Us
3.Emotions
4.Honey
5.Always Be My Baby
6.Thirsty
7.Shake It Off
8.Meteorite
9.Vision Of Love
10.Cry.
11.My All
12.Breakdown
13.I Know What You Want
14.Babydoll
15.Heartbreaker
16.The Roof
17.#Beautiful
18.I’m That Chick
19.Supernatural
20.I’ll Be There
21.We Belong Together

En1.Hero
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