ダイナソー・パイル・アップ @ 代官山UNIT

ダイナソー・パイル・アップ @ 代官山UNIT
90年代USグランジ/オルタナ直系の「ハード・エッジな退廃感」を、どこまでもヘヴィかつポップな「今」のロックとして鳴らす、UK発3ピースの精鋭=ダイナソー・パイル・アップ。今年のサマーソニック幕張&大阪公演で初めて日本のステージに立った彼らが、10月22日に日本リリースされたばかりの2ndアルバム『Nature Nurture』を引っ提げて、BLUE ENCOUNTとの日英対バン形式の東京・大阪ツアー『Dinosaur Pile-Up VS JAPANTOUR 2014』で早くも再来日。すでに本国UKのみならずアメリカ・ツアーでも着実にそのダイレクトな音と楽曲の訴求力をアピールしているDPU。日本では7月に日本独自企画盤のデビューEP『Peninsula EP』が発売されたばかりだが、そのツアーの初日となる10月28日・代官山UNITで3人の熱演が巻き起こした高揚感は、そう遠くない将来にもっと大きな風景を見せてくれるであろう大器の可能性と存在感を十二分に感じさせてくれるものだった。以下、演奏曲目についても触れつつレポートしていくので、10月30日・大阪公演に参加される方はご注意を。

ダイナソー・パイル・アップ×BLUE ENCOUNT+ゲスト1組、という3マン・ライヴ形式で行われる今回のジャパン・ツアー、この日の東京公演のゲストにはHello Sleepwalkersが登場。奇しくもDPUと同じく10月22日に3rdアルバム『Liquid Soul and Solid Blood』をリリースしたばかりのハロスリ、「新しい出会いのチャンスだと思って、風穴開けにきたんで!」(シュンタロウ)というアグレッシヴなモードそのままに、最新アルバムにも収録された“百鬼夜行”をはじめ、今年2月リリースの2ndアルバム『Masked Monkey Awakening』からの“Bloody Mary”“猿は木から何処へ落ちる”など全6曲を披露。ツイン・ヴォーカル&トリプル・ギターの5人編成から繰り出すハイパー&ハイブリッドなアンサンブルで、熱い一夜の開幕を痛快に飾ってみせた。

続いては、今回DPUとの対バン相手=BLUE ENCOUNT。「はーじめるぞー!」とDPUのTシャツ姿の田邊駿一(Vo・G)がハイテンションにフロアを煽り倒したところで、1曲目“JUST AWAKE”からクラウドサーフものの熱狂空間を生み出していく。Wギターのアルペジオから流れ込んだ“HALO”の高村佳秀(Dr)のポリリズム的シンコペーションが熱気を鋭利に刻んでみせたり、江口雄也(G)の鮮やかなタッピング&辻村勇太(B)のスラッピングから突入した“ロストジンクス”で満場のクラップを呼び起こしたり……バンドの高性能なプレイアビリティとあふれるエモーションががっちりとギアを合わせながら、ロックの彼方へと爆進しているブルエンの「今」を、この日の歌と音がリアルに物語っていた。

今年夏のサマーソニックの現場で出会ったというDPUのメンバーについて語っていた田邊は、「その日のうちに、あり得ないっていう早さで仲良くなりまして。また絶対一緒にやりてえなと思ってたんですけど、英語わかんないから言えないで、『I have a dream』しか言えなかったんですけど(笑)。まさかこんなに早くその夢が叶うとは思いませんでした。本当に嬉しいです!」と今回の共演の喜びを露にしていた。今年9月にメジャー・デビューを飾ったばかりのブルエン、全7曲のアクトの中に“ロストジンクス” “MEMENTO”“NEVER ENDING STORY”とメジャー・デビューEP『TIMELESS ROOKIE』の楽曲をがっつり盛り込んで「最新型」の爆発力と熱量を観る者すべての頭と心に刻み付けていった。

そして、いよいよダイナソー・パイル・アップがオン・ステージ。マット・ビッグランド(Vo・G)、ジム・クラッチリー(B)、そしてブルエンTシャツを着たマイク・シールズ(Dr)がこの空間の手応えを確かめるようにヘヴィなセッションを繰り広げた後、気合い一閃“Arizona Waiting”のギター・サウンドとマットの絶唱が轟いた瞬間、フロアの熱気が途方もないスケールのロックの地平へと解き放たれていく。グランジ/オルタナ感に満ちた楽曲が、マットが響かせるギブソン・エクスプローラーの超硬質サウンドによって、圧巻の剛性と輝度を獲得していく――3ピースの至ってシンプルな構造のアンサンブルと、憂いやメランコリアを掬い上げてポップの彼方へ放り投げるような至上の旋律が密接に絡み合いながら、ロック・ミュージックとしてのマジカルなまでのヴァイタリティを描き出していく。音楽性的にはフィーダーやアッシュあたりのUKバンドに通じる部分もあるが、骨まで痺れるほどのダイナミズム&ヘヴィネスと、灰色の日常にカジュアルに寄り添う空気感とが、いとも自然に共存しているDPUの空気感は、既存のバンドとは明らかに一線を画したものだ。
ダイナソー・パイル・アップ @ 代官山UNIT
“Heather”での爆走感とマットのシャウトが会場の熱気と歓喜を刻一刻と高め、ミドル・テンポのナンバー“Summer Gurl”のキャッチーなリフにあたり一面のクラップが自然と巻き起こり……といった具合に『Nature Nurture』の楽曲群をセットリストの軸としつつも、1stアルバム『Growing Pains』からのソリッド&ヘヴィな楽曲“My Rock 'n' Roll”“Traynor”を織り重ねて、自らの音楽性の核を真っ直ぐに提示していくDPU。もともとはマルチ・プレイヤーでもあるマットのソロ・プロジェクト的な形でスタート、最新作『Nature Nurture』も全パートともマットがひとりで演奏して制作されたものだが、この日のステージは、ジムの質実剛健なベース・プレイ、終始大振りストロークの爽快なマイクのドラミングも含め、マットの音楽世界が「ライヴ・バンド」としての強烈な肉体性を帯びて、新次元のエネルギーを放射しつつある――というDPUの現在地をはっきりと伝えてくるものだった。現在発売中の『rockin'on』誌で3人にインタヴューした際にも、「3枚目は3人で一緒に作るから楽しみだよ」と語っていたマット。そんな変化の真っ只中にいるバンドの状況を、誰よりもマット自身が楽しんでいるのかもしれない。

“Draw a Line”“White T-shirt and Jeans”を経ての本編ラストには、グランジとポップ・パンクのデッド・ヒートのような“Peninsula”が炸裂! フロア踊りまくり&クラウドサーファー出現の狂騒感を生み出していった。本編では「アリガトウゴザイマス」の軽い挨拶くらい、MCらしいMCといえばアンコールでのマットの「昨日、納豆を食べてみたよ。マイクは『美味い』って言ってたけど……僕はダメだった(笑)。寿司がいいよ」という話くらいだったが、それでもマットの、いい感じに力の抜けたフレンドリーなヴァイブは、この日のステージからも伝わってきた。何より、この日のアクトの、一切無駄のないロック高純度凝縮感はそのまま、DPUの迷いなき邁進ぶりをはっきりと示すものだった。アンコールの“Nature Nurture”を観ながら、彼らの演奏を再びここ日本で、もっと大きなステージで体感する日を思わず夢想してやまない、そんな名演だった。大阪公演は10月30日、ダイナソー・パイル・アップ×BLUE ENCOUNTにゲスト・アクト=WHITE ASHを迎えてOSAKA MUSEにて開催!(高橋智樹)
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