THE WHO @ 日本武道館

THE WHO @ 日本武道館 - The WhoThe Who
THE WHO @ 日本武道館 - The WhoThe Who
2004年の夏フェス『ロック・オデッセイ』での初来日から4年、ついにザ・フー単独ジャパン・ツアー実現!となれば、ファン歴ウン十年のオールド・ロック・ファンならずとも力が入るのは当然のことであるし、開演前からアリーナ席の気合い入ったオーディエンスが熱い歓声とともに総立ちになるのも無理はない。そして19:08、客電が落ちた瞬間の地響きのような声、声、声! 

オリジナル・メンバーは今やロジャー・ダルトリーとピート・タウンゼントの2人だけになってしまったが、逆にステージに現れた2人には、ただそこにいるだけで背筋がぞくっとするだけの存在感がある。白シャツ&グレーのベスト姿のロジャーも、黒いハットでうやうやしく舞台に現れたピートも、どう見ても小粋な老紳士といった佇まいではある。が、ロジャーがマイクを勢いよくぶん回し、ピートがお得意の大車輪ピッキングを見せた瞬間、ロック・レジェンドは一気に「歴史」から「現実」になる。もう最高だ。

若干の曲目/曲順の入れ替えはあるものの、基本的な内容は11月14日の横浜アリーナ公演(イベンター=UDOのホームページにUPされてます)とほぼ同じ。“アイ・キャント・エクスプレイン”やったし“ババ・オライリー”やったし、“フー・アー・ユー”も“無法の世界”もやった。06年の最新アルバム『エンドレス・ワイヤー』からの楽曲は挨拶程度にとどめた、ザ・フー最強のセットリストと言っていいと思う。ステージ後方に設けられた巨大ビジョンには、往年のフォト・ギャラリーからCGを駆使したコンセプチュアルな映像までが次々に映し出され、過去の曲にも新しい意味と息吹を与えている。

ロジャーの声も、64歳という年齢を差し引いて考えれば十分「ド迫力!」と言って差し支えないアグレッシヴなものだった。が、何よりピートのギターがすごい! ほぼアンプ直ぐらいの、極力エフェクトを排したシンプルなオーバードライブ・サウンドで、静かなアルペジオからダイナミックな泣きソロまで自在に表現していく。もちろん、もっとテクニカルに巧いギタリストもいるし、ヘヴィーだったりラウドだったりするサウンドを出せる人はいくらだっているが、文字通りギター1本の表現力でおよそロックのすべてを(しかもこれだけのスケールで)描き切ってしまうことのできるギタリストは、そうはいない。

そして、ザ・フーは何と言ってもビート・ミュージックだ。キース・ムーン亡き今、その「原型」を堪能することはできないものの、名手ザック・スターキーを擁した今回のバンド編成は、そのシンコペーションとキメを多用したザ・フーの音楽が持つエッジ感とダイナミクスを鮮やかに蘇らせていた。そして、60過ぎたロジャーはなおも「MY GENERATION!」とか「TEENAGE WASTELAND!」とか叫び上げながら、イノセントな衝動を次々に歌い上げていくのだ。もう、業とか性とかいう言葉では到底片付けようのない、ロックンロールの核心をごろっと見せつけられたようで、戦慄が走った。

“シー・ミー・フィール・ミー”を最後に勢いよくストラトを叩き割った『ロック・オデッセイ』の時とは違い、この日のピートはギターを叩き壊すこともなく、2階席の後方までびっしり会場を埋め尽くした熱いファンに向けて「サンキュー!」を繰り返していた。ロジャーも「リスペクト!」とにこやかに言って、2人で肩を組んでステージを去った。来日ツアーも残るは追加公演=19日の武道館公演のみ。当日券販売もあるようなので、ぜひ。(高橋智樹)


1.I Can\'t Explain
2.The Seeker
3.Anyway Anyhow
4.Fragments
5.Who Are You
6.Behind Blue Eyes
7.Relay
8.Sister Disco
9.Baba O\'Riley
10.Eminence Front
11.5:15
12.Love Reign O\'Er Me
13.My Generation
14.Won\'t Get Fooled Again

アンコール
15.Pinball Wizard
16.Amazing Journey / SPARKS
17.See Me, Feel Me
18.Listening To You
19.Tea And Theater
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on