斉藤和義@Zepp Tokyo

斉藤和義@Zepp Tokyo - pic by Koh Sasakipic by Koh Sasaki
まるでZeppの壁と天井を突き破るかのごとく、艶とロマンとエネルギーが轟々と渦巻くステージだった。11/25の仙台で幕を開け、昨日12/27の福岡で幕を閉じた、斉藤和義の約4年ぶりのライヴハウスツアー「RUMBLE HORSES」。その折り返し点、12月12日のZepp Tokyo公演のレポートである。デビュー20周年となった昨年に『斉藤』『和義』という2枚のアルバムをリリース、それを引っ提げた自身最長の全国ツアーを今年4月に終えた彼が、何故このタイミングでライヴハウスツアーに挑んだのか。その意図と決意が、熱のこもったパフォーマンスから鮮やかに透けて見えたライヴの模様をここにお届けしたい。

ツアー前からチャーリー・ドレイトン(Dr)、隅倉弘至(B/初恋の嵐)、鹿野洋平(Key・G/My Hawaii)を迎えて開催されることがアナウンスされていた本ツアー。その全貌はオープニングから度肝を抜くものだった。ほぼ定刻通りに暗転、SEなしで登場したのは斉藤とチャーリーの2人のみ。アコギの鋭いカッティングで“I Love Me”をスタートさせると、たった2人で鳴らしているとは思えない、すこぶる熱量と殺傷力の高いサウンドで会場を制圧していく。隅倉と鹿野を加えての“透明の翼”“CAT STYLE”の連打では、一転して軽快かつ伸びやかなアンサンブルで飛翔。続く“ハックルベリー・フィン”では濃厚なグルーヴを引き回し、オーディエンスの腰を執拗にくねらせていく……と、ここまでの流れで熱心なファンであれば気づくだろう。冒頭4曲中3曲が2003年にリリースした9thアルバム『NOWHERE LAND』の楽曲であることを。実はこのアルバムは今回ツアー帯同しているチャーリーがレコーディングに参加していた作品。リリース当時に唯一ツアーを行わなかったアルバムであり、その収録曲を中心とした、従来のライヴとは一味違うライヴをやるのが本ツアーの趣旨であることが、その後のMCで語られる。「だからいつものライヴを期待している人は、下がってください(笑)」と冗談めかす斉藤。「裏サイト的な感じのツアーなので……いや、こっちが表か」とも呟いて、この後のライヴの展開への期待感を容赦なしに煽っていく。

その言葉通り、中盤には“野良猫のうた”“喜びの唄”“この古着は誰が着ていたんだろう”“ニューヨーク”と『NOWHERE LAND』の楽曲を連発。“喜びの唄”の前には当時タレント活動を始めたばかりのマツコ・デラックスにPV出演を依頼したエピソードを披露して、オーディエンスを和ませていく。まるでリリース当時を懐かしむかのように、力みのない自然体なフォームで届けられる演奏の数々。しかし1音1音から甚大なエネルギーが溢れ出しているような、骨太なサウンドは圧巻。特に斉藤が掻き鳴らすアコギとチャーリーが叩き出すビートの生々しさは凄まじく、まるで自分のすぐそばで鳴っているような空気感でもって胸に迫ってくる。“ニューヨーク”では隅倉のコントラバスと鹿野のクラシックギターの旋律で陰鬱なニューヨークの風景を描写。続く“新宿ララバイ”では優しく繊細なアンサンブルで東京の空を描き出し、詩情溢れる歌と鉄壁のアンサンブルでもって、国境を越えた音楽旅行へと会場を誘っていくバンドであった。

“名前を呼んで”でロマンチックな歌心を届けた後は、終盤に向けてギアアップ。チャーリーの英語の挨拶に「なんのこっちゃ?」と茶々を入れる斉藤の相変わらずの自然体っぷりが炸裂したMCタイムを経て、《取り戻したいものがあるんだ それが何かはわからないけど/取り戻したいのさ 君と行けば見つかるはずだよ》という絶唱が響きわたった“わすれもの”。ステージ背後に掲げられた馬蹄型の照明がビカビカと光る中、ハードエッジなサウンドがフロアを襲来した“Are you ready?”。そして印象的なイントロが繰り出されるなり大歓声が沸き起こった“やさしくなりたい”!  さらにねっとりファンキーな“Would you join me?”、小気味よいリズムの“ベリーベリーストロング~アイネクライネ~”と畳み掛けて未曾有のダンス天国を築いたところで、あっという間のクライマックスへ。それまで下ろしていた髪を束ねて気合いを入れ直した斉藤と鹿野による華麗なギター・バトルから“Hello! Everybody!”に突入すると、盛大なハンドクラップが響きわたる中で「ハロー、エヴリバディ!」の大合唱を呼び起こし、本編は華々しく幕を閉じた。

アンコールでは、まずは鹿野を除く3人で“幸福な朝食 退屈な夕食”をプレイ。そして鹿野を呼び込みメンバー紹介を行った後、4人で披露した新曲“ワンダーランド”がとても良かった。斉藤の出身地である栃木発地域ドラマ『ライド ライド ライド』の主題歌として書き下ろされた、この曲。夢を追いかけるすべての人々を優しく後押しするような爽快でドリーミーなサウンドは、デビュー20周年を経て新たな季節に突入せんとする現在の斉藤のフレッシュな心情をそのまま映し出しているようで、胸が躍った。そして「季節的にはメリークリスマスですかね。そしてよいお年をですかね。また会いましょう」という挨拶から“ずっと好きだった”を最後に届けて大団円――オールタイムベスト的なセットリストではなく、あまりライヴに馴染みのない過去曲を中心としたセットリストで挑んだ、異色のライヴハウスツアー。そこには、全力で駆け抜けたアニヴァーサリー・イヤーの充実感を一旦リセットして、また新たな気持ちで音楽活動に向かおうとする斉藤の奔放な挑戦心が確かに宿っていたと思う。それに加えて『NOWHERE LAND』の魅力や、凄腕サポート・メンバー揃いのロックンロールのパワーを再発見できたのも、今回のツアーの大きな収穫。これを経て斉藤和義の音楽はいかなる進化を遂げていくのか、まだまだ期待は高まるばかりだ。(齋藤美穂)

■セットリスト

01.I Love Me
02.透明の翼
03.CAT STYLE
04.ハックルベリー・フィン
05.野良猫のうた
06.喜びの唄
07.アメリカ
08.この古着は誰が着ていたんだろう
09.ニューヨーク
10.新宿ララバイ
11.名前を呼んで
12.わすれもの
13.Are you ready?
14.やさしくなりたい
15.Would you join me?
16.ベリーベリーストロング~アイネクライネ~
17.Hello! Everybody!

(encore)
18.幸福な朝食 退屈な夕食
19.ワンダーランド
20.ずっと好きだった
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