ドレスコーズ@新木場STUDIO COAST

暗転した舞台に、スポットライトを浴びながらひとり登場したスーツ姿の志磨遼平。手にしたラジカセをドラム・セットの前に置いてプレイボタンを押す仕草をすると、新木場STUDIO COASTに鳴り渡るドラム・パート。続いて1台、また1台とラジカセを持ち込んでプレイボタンを押すたびに、ベース・パート、ギター・パートがそのサウンドに加わって「演奏」するのはなんと、毛皮のマリーズ“ジャーニー”。そのトラックをバックに、激しいアクションとともにたったひとりで《keep on バーニング さようなら友よ》と歌い上げる志磨。そこへ、サポート・メンバー=牛尾健太(G/おとぎ話)・有島コレスケ(B/told)・前越啓輔(Dr/おとぎ話)・長谷川智樹(Key)が登場してパワフルなアンサンブルを繰り広げ、《止まると 俺 死ぬから》の志磨の絶唱とせめぎ合い響き合っていく――。

昨年12月にリリースしたアルバム『1』を携えて、大阪umeda AKASO(1月17日)/名古屋CLUB QUATTRO(1月18日)を巡ってきたドレスコーズの東名阪ツアー『Tour 2015 “Don't Trust Ryohei Shima”』ファイナル:新木場STUDIO COAST公演。「アルバム『1』のリリース・ツアー」というタイミングではあるものの、ツアーの内容については一切告知されず、大阪・名古屋公演でもセットリスト含めライヴ内容のSNS投稿を控えるように呼びかけられた状態でスタートしたこの日のステージ(ちなみに、各会場で開演前に流れていた影アナの主は「西アメリカ」ことex.毛皮のマリーズ→現THE STARBEMS・越川和磨だったらしい)。そんな中で飛び出した冒頭の演出は、「昨年9月のキングレコード移籍第一弾作品『Hippies E.P.』のリリース当日に丸山康太(G)/山中治雄(B)/菅大智(Dr)の脱退を発表、アルバム『1』とともに『ドレスコーズ=志磨遼平のソロ・プロジェクト』として新たな道を歩き始める」という志磨の「これまで」と「今」を渾身のロック・アクトとして凝縮した、珠玉の名場面だった。

開演早々からクライマックスの如き熱気に包まれていくフロアを、続く“この悪魔め”でステージ中央から伸びた花道へハンドマイクで進み出た志磨が鮮やかに熱狂の彼方へと煽ってみせる。“ルソー論”“Lily”など『1』収録曲や『Hippies E.P.』からの“GHOST”といった最新楽曲群を軸としてライヴを構成する中に、“人間不信”“ザ・フール”など毛皮のマリーズ曲をいとも自然に織り込みながら、会場を熱く沸かせてみせる志磨。そこにあったのは、「4人ドレスコーズ」時代とも、もちろん毛皮のマリーズ時代とも異なる「志磨遼平の音楽」だった。単に「演奏するメンバーが異なるから」ではなく、自分ひとりで世界と向き合っていくという明確な闘志が、彼自身の歌と、牛尾/有島/前越/長谷川とともに鳴らすアンサンブルに、決然とした意志と強烈なヴァイタリティを吹き込んでいく。

「こんばんは東京! 初めまして志磨遼平です」……歓喜に沸き返るSTUDIO COASTのオーディエンスに向けて、志磨はそう呼びかけていた。バンドとロックンロールのロマンを追い求め、その想いのあまりの強さゆえにバンドで挫折を味わった自身の足跡と、なおも己の中に渦巻くバンドとロックンロールへの愛を、志磨遼平は自分自身を軸として新たなストーリーへと再編し始めたのだろう。「自分自身がロックンロールになる決意を固めた」と言い換えてもいい。いずれにしても、『Tour 2015 “Don't Trust Ryohei Shima”』はまさに、その決定的瞬間と呼ぶべき重要なツアーだったということだ。

あふれんばかりの衝動をクール&ソリッドに鳴らしてみせた“ルソー論”。キーボードの長谷川がクラシック・ギターで奏でるムーディーかつメランコリックな調べとともに、艶やかな熱唱で会場の空気を震わせた“みずいろ”。目映いコードの響きとともに《バカが ぽつねん、と ひとり バカだから ひとり》と歌い上げながら、フロアを高らかなクラップへと導いた“ザ・フール”。サーフ・ロックが過熱暴走したような熱量とスリルに満ちた“妄想でバンドをやる(Band in my own head)”……退廃まみれの希望も、笑っちゃうくらいの絶望も、すべてを自分自身とその音楽のエネルギーに変えながら、1曲1曲を最大限に輝かせ解き放っていく志磨。極彩色のパンク・ロックの如きヴァイタリティでもって《ビューティフルに ビューティフルに/生きて 死ぬ、ための僕らの人生 人生!》のシンガロングを生み出してみせた“ビューティフル”、会場一面のハンドウェーブを受けて志磨が高々とピースサインを掲げてみせた“愛のテーマ”といった毛皮のマリーズ曲の連射に続けて、『1』から披露した2曲“あん・はっぴいえんど”と“スーパー、スーパーサッド”に高らかなクラップがフロアに弾けて……本編終了。「どうもありがとう! 愛してる!」の言葉を残して舞台を去っていく志磨とサポート・メンバーに、熱い拍手喝采が降り注いでいった。

アンコールでは、リズム・トラックをバックに志磨がアコギ弾き語りで“ゴッホ”を歌い上げた後、サポート陣が再び登場、「東京、どうもありがとう! また会う日までお元気で。どうか、お身体に気をつけてね。あと……愛に、愛に気をつけてね!」という志磨のコールとともに5人で鳴らしたこの日のラスト・ナンバーはもちろん、アルバム『1』の最終楽曲“愛に気をつけてね”。ミラーボールきらめく中、スーツを汗で染めながら声の限りに歌い叫び、会場をゴージャスなディスコ・ロック空間へと塗り替えていく志磨。花道の先端へと進んで《Baby Baby あんたなんか》とオーディエンスひとりひとりを指差しながら歌い、「あんたなんか!」とシャウトしたかと思うと、フロアに勢いよくダイヴ! 加速するビートの中、全精力を使い果たしたように花道に崩れ込む志磨を称えるように、オーディエンスの熱気はさらに高まり、至上の一夜の終わりを熱く彩っていた。

終演後には再び西アメリカ=越川和磨の影アナが。今回のツアー3公演はもちろん、昨年4月1日「京都磔磔における初期のドレスコーズ」公演での移籍発表、8月の日比谷野外音楽堂「ゴッドスピード・サマー・ヒッピーズ」、4人体制でのラスト・ライヴ「OTODAMA’14」、メンバー脱退発表直後に志磨遼平がひとりで出演した「MINAMI WHEEL 2014 EXTRA」、『1』レコーディングやライヴ・リハーサルの風景までの1年間を収めたDVD映像作品『“1”year(仮)』を、移籍からちょうど1年となる4月1日にリリースすることが発表されると、新木場STUDIO COASTが驚きと感激に包まれていく。濃密なロマンとドラマと、志磨の「その先」への熱意が絡み合い、紅蓮のロックンロールとなって爽快に吹き荒れた名演だった。(高橋智樹)

■セットリスト

01.ジャーニー
02.この悪魔め
03.人間不信
04.ルソー論
05.Lily
06.才能なんかいらない
07.みずいろ
08.ザ・フール
09.もうがまんはやだ
10.GHOST
11.妄想でバンドをやる(Band in my own head)
12.ビューティフル
13.愛のテーマ
14.あん・はっぴいえんど
15.スーパー、スーパーサッド

(encore)
16.ゴッホ
17.愛に気をつけてね
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